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何を以て里山と言いますか?

当たり前のように使うお題目「里山」

先日、ちょっとしたお付き合いで日頃の活動について質問を受けることがあった。質問者は結構大手の企業さんの若手社員さんらしく、主には「里山」についてのことだった。

里山についての質問は、こういった活動を始めてからは結構頂くようになっていたので、6人ほどの若手社員さんからの質問には滞りなく受け答えが出来、そろそろ終わりかなといった雰囲気が出始めていたときに、

「里山とは何ですか」

という直球の質問を頂いた。里山というキーワードは、私たちが様々な活動を行うにあたっての根源のような単語なので、そのものについて質問を投げかけられて少し言葉に詰まってしまった。とはいえ、そのまま黙っている訳にいかないので少し考えて、

「人間に都合のよいもの」

と答えてみた。里山を人間様の都合のよいものと表現するとは、私もまだまだ毒っ気が抜けないなと思いもしたが、まあ口をついて出た言葉だったので自分的にそんな風には思っているんだろうと思って否定はせずにおいた。

その後、企業のCSR活動とかSDGsとかの話をしつつ、1時間ほどの受け答えは終わったのだけども、「里山とは何ですか」という言葉どうにも引っ掛かっている。

里山の定義

どうにもスッキリしないので「里山とは何か」でググってみると、環境省サイトに以下のように書いてあった。

里地里山とは
 里地里山とは、原生的な自然と都市との中間に位置し、集落とそれを取り巻く二次林、それらと混在する農地、ため池、草原などで構成される地域です。農林業などに伴うさまざま人間の働きかけを通じて環境が形成・維持されてきました。
 里地里山は、特有の生物の生息・生育環境として、また、食料や木材など自然資源の供給、良好な景観、文化の伝承の観点からも重要な地域です。

そうそうこれが里山だ。何の問題もない。
なのに、どうしてあの子はあんな質問を投げかけ、私はあんな受け答えをしたのだろうと改めて考えてみた。そして気が付いた。
私にとっては、あの子は「農林業などに伴うさまざま人間」ではなかったのだ。

里山はそこに住む人々の生活のために開拓されてきた場所だというのが、里山を説明するには一番シンプルなような気がしている。そう考えると「人間に都合のよいもの」というのは当たらずとも遠からずなのではないかなと思う。

里山とSDGs

里山に関わっていると良く耳にする「SDGs」
最後Sだけがなんで小さいんだってことを疑問に思う程度で、ほぼ興味の無いフレーズなんだけど、せっかくなのでこれも調べてみた。
今度は外務省のサイトにこう書いてあった。

持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)別ウィンドウで開くの後継として,2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された,2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。

なんと持続可能な「開発」だった(笑)自分のことながら興味が無いにもほどがある。持続可能な開発であれば里山はまさにSDGsということでよいのではないんだろうか。
昔から里に住む人たちは里山に植林をし、谷津や山を開拓して田畑を作ってきた。そしてそれは自らの首を絞めるような開発でなく、毎年毎年、里山の恵みを享受するための開拓であって、そこに住む人々はそうなるように山に手を入れてきたはずなので、SDGsなんてお題目を掲げずともちゃんと里山を活かせばよいのだろう。

里の過疎化と里山の荒廃

とは言っても、そこに住む人々が循環型の生活を営んでいれば活き活きとした里山はそこら中にあるはずだけど、実際は荒れた山林や耕作放棄地だらけになっている。

「なぜか?」

これはそんなに難しくない。昭和30年頃から高度経済成長期となった日本では、薪や炭が化石燃料に、木製や竹製の生活必需品がプラスチック製品に取って代わられ、食糧輸入の波に押された1次産業の衰退に合わせて働き盛りの人がどんどんと首都圏へと流出してしまっからだ。結果として山は荒れ、田畑は放棄され里山が無くなったということなんだろう。

そこに住まない人が行う里山保全活動とは?

全国的に放棄された山林や田畑がそこら中にある現在は「里山を守ろう!」という里山保全活動が全国で行われている。
でもよく考えてみると、そこに住む人々が持続可能な形で開拓したものが里山であるはずだから、他所の人が開拓する里山はもはや里山とは言えないのではないかと思う。

そもそも「保全」という言葉自体が正しくないのかもしれない。獣害対策を行っている身からすれば、里山を保全する意味はあるけど、それは里山保全ではなくて単なる整備活動と言った方が適切な気がしている。

おまけでCSRについても考えてみた

CSRとは「社会貢献活動」である・・と言ってもあながち間違いではないのだけど、調べてみるとこう書いてある。

企業の社会的責任。Corporate Social Responsibilityの略語である。企業は,利益追求,法令遵守だけでなく,あらゆるステークホルダー(利害関係者のことで,消費者をはじめ社会全体)の多様な要求に対し適切な対応をとる義務があることを示す。人権を尊重した適正な雇用・労働条件,消費者への適切な対応,環境への配慮,地域社会貢献等々,市民としての企業が果たすべき責任をいう。

この社会的責任のひとつが「社会貢献活動」であったりするのだけれど、CSRの本質は、利害関係者の要求に対する適切な対応と義務を果たすこと。そう考えるとボランティア活動ではなく、収益を伴う活動でもCSRであると言える。大切なことは、利害関係者に不具合が生じないことであって、無償でやれっつうことではないというところ。

里山にどう関わるか

あの一言には、今回ずいぶんと考えさせられた。私自身の活動もそこに住んでいない以上、本来の意味での里山保全活動ではないのだろうな。ただ、こうして多くの人たちが荒廃した山林や田畑に興味を持ち、何とかしたいと考えていることはとても大切だと思う。

そこにはまだまだ地元住民がいて、そして荒れた里山を見て嘆いている。

この状況を打破するための行動こそが、そこに住まない人たちが行う里山保全活動の本質なのかもしれない。自分としてはそこを念頭に入れて今後も活動していこうと思う。














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