
デンマーク・フォルケホイスコーレでの学び
幸福度が高い国の秘密に迫る
2023年3月末で24年間勤めた神戸YMCAを早期退職し、特に北欧の教育や福祉についての学びを得たいと考え、書籍やWEBサイトなどから様々な情報を収集。
デンマークが常に国民の幸福度でも上位に位置しつつ、経済的にも安定しているということに関心を強め、Folk Højskoleという学校への留学を検討することとしたのでした。
百聞は一見にしかず。
「実際に暮らしながら学ぶことで、より深くデンマークという国のことを知ることができるはず。」ということで具体的に進めていきました。
申し込みから入校まで
デンマークのホイスコーレと日本の学生を橋渡しするIFASやアイリスという留学情報サイトでの情報をもとに、Brenderup Højskoleが開催している10週間のInternational Courseにエントリーすることにしました。
Højskoleとメールでのやり取りを行い、授業料(ほとんどが宿泊食費と現地での訪問プログラムにかかる費用)を海外送金し、正式に入校が決定。
Højskoleでは様々な国から学生が集うため、英語が共通言語となるということで、7月末のTOEICに申し込み、目標を立ててリスニング能力や単語力を向上させることにしました。目標がないとダラダラと過ごしてしまう性格なので、英会話アプリなども活用。結果的には685点ということで、日常会話であればなんとかなるかもしれない、という淡い期待を抱きつつ、8月30日に出国。

Brenderup Højskoleでの生活
デンマーク第3の都市であるOdenseで数日滞在し、いよいよBrenderupへ!9月初めで気温は高いものの湿度が低いのでとても心地よい晴れの日、Højskoleへ到着。
今回参加したInternational Courseはフランスなどからのエントリーもあったけれどキャンセルになったそうで、7名の参加者全員が日本人ということで顔合わせをしてスタート。とはいえ、すでにスタートしている24週間のLong Courseの学生たちは世界各地から集まって来ているので、多国籍・多文化な日々が幕を開けたのでした。
イメージとしては全寮制の学校なので、学舎と宿泊をする棟も同じ敷地内にあり、学びと生活が一体となっているのがHøjskoleです。このことが学びを深めてくれたというのは間違いないことでした。



ともに学び合うということ
International Courseは、Long Courseの学生とは別のスケジュールが組まれていて、学校や高齢者ホーム、病院への視察やコミューンの役所を訪問して職員の方から話を伺うなど、見学を通して学ぶ機会がたくさんありました。
Højskoleの中では、陶芸や手芸、音楽やパーマカルチャーなど、まさにリベラルアーツと言える多様なクラスがあり、知識だけでなく、体験しながら学ぶことの大切さを感じる日々でした。
何より、どのクラスでも教員が一方的に教えるのではなく「あなたはどう思う?」と聴きながら、学生も一緒になって学びを構築していく雰囲気は個々の主体性を大切に教育をするデンマークのあり方を感じるものでした。「教員と学生は対等である」ということはHøjskoleだけでなく、子どもたちが通う学校の教員と話をしている中でも頻繁に聞きました。その対等性の中で交わす「対話=Dialogue」が重要であるということも学んだのです。


Life without music is not a life
多様な文化を分かち合う
Højskoleでは、毎週水曜日の夕方にCultural Eveningがあり、各国の学生が自国の料理を作って皆で食べたり、それぞれの国の紹介や独自のゲームなどを通して交流する機会になっていました。日中の様子とは違う仲間の一面を見ることができるのも面白い経験でした。もちろん文化が違えば宗教も違い、考え方や感じ方も多様なので、意見がぶつかる時もあります。その中でも対話を通して互いを理解していく体験から学ぶことが多々ありました。
週末には学生が主体となって様々なパーティーを企画するのですが、「遊びも真剣!」というのがモットーで、企画内容や当日の進行やドレスコードなどもユニークでした。
パーティーの中でもInternational Courseが最終盤となったタイミングで行われたWedding Celebrationは、準備の段階からものすごい熱量で進められ、当日は5時間にもおよぶパーティーとなりました。参加全学生に詳細な役割が設定されていて、その役割を真剣に楽しんでいる姿が印象的でした。それにしてもデンマークで新郎役を演じることになるとは思ってもみませんでしたが(笑)
施設見学やクラスでの学びだけでなく、このようなパーティーなども含め、学校が何かを決めるのではなく、学生も一緒に学びを創っていくということは、まさにCommunityを共に創っていく過程そのものであり、これこそがデンマークのDemocracyをより深く、大きなものにしているのだと実感したのでした。



人生のための学校
1832年に「School for Life』を提唱し、Højskoleの父とも呼ばれるGrundtvigは、無意味な暗記や試験で競争を強いる学校を「死の学校」と呼び、生きた言葉での対話の中で学ぶ「生の学校」の重要性を説きました。
そのことは最初のHøjskoleが誕生して170年以上が経つ今なお大切にされていて、デンマークという国の基盤となっています。
もちろん時代の変化に合わせて、学びの内容などは変化してきていますが、学びの意味や使命は変わることがありません。
Brenderup Højskoleにも10代後半から60代まで多様な年代の学生が集っていました。進学や就職先を考えるタイミングで、また転職など人生の転機で、一旦日常から離れて多様性の中で新たな学びを得ることができる。このような感覚は人生を本当の意味で豊かなものにしてくれるのではないでしょうか。
先行きが見えにくく、変化の激しい時代に生きる私たちにとって、とても大切な学びがHøjskoleにはあるということを確信した10週間の学びは、私自身にとっても大きな宝物となりました。
出会ったすべての仲間たちに心から感謝しています!