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何故これほど時間がかかるのか。

Dr. Geert Vanden Bosscheの2024年7月21日の投稿(Substack)
Why does it take that long?
の翻訳です。原文は有料記事ですが、著者の御厚意で投稿から2週間経てば翻訳をここに掲載して良いとの許可をいただいています。substackを講読して原文も参照していただければ幸いです。
2024/9/17追加:著者HPで公開された記事へのリンク

画像出典(2024/8/4)


ギアト・ヴァンデン・ボッシェは自分が何を言っているのか本当に分かっているのだろうか?想像力が豊かすぎるのではないか?今年の初めに、彼は,今年の6月末までに、より病原性の強いコロナウイルスが高度にCOVID-19ワクチンを接種した国々で発生すると主張した。——しかし、またもその時期を見誤った。あの男の言うことをまだ真剣に聞いていいのか?それとも、単に、せいぜい数週間、計算を間違えただけで、彼の予測はこの夏本当に実現するのか?

もしも、彼の予測が今も真実であるならば、何故、ウイルスの病原性を増大させる変異が自然選択されるのにこんなに時間がかかっているのか。

私たちはウイルスの伝播に関して、重大なポイントを見逃していたのかもしれない。それはつまり、上気道での感染後のウイルスの複製と拡大である! COVID-19ワクチン接種者では、上気道でのウイルスの複製と拡大は、上気道を巡回している樹状細胞表面に、より感染性の高い子孫ウィルス粒子が吸着することによって抑制される(図1)。樹状細胞にウイルスが吸着すると、上気道内で、さらに次の上皮細胞に感染できるウィルス粒子(感染性ウィルス粒子)の数が減少する。限定された空間(例えば上気道)に存在する標的細胞に対する感染性ウィルス粒子数の割合を「感染多重度」(multiplicity of infection: MOI) という。後述するように、MOIを理解すれば、感染性因子の複製動態の解釈に役立つだろう。

感染多重度(MOI)が低ければ、より感染性の高い変異株の自然選択が促進されると考えられる。しかし、より感染性の高いSARS-CoV-2変異株が作り出すサイトカイン環境のために、子孫ウイルスは、上気道を巡回する樹状細胞表面に、より吸着しやすくなる。そのため、COVID-19ワクチン接種者が、ウイルス固有の感染性がより高い、新たに出現した変異株に曝露したとしても、必ずしも、上気道の標的上皮細胞に増殖性感染できるウィルス粒子の産生がそのため、相応に増加するとは限らない。これによって、上気道におけるウイルスの排出が減少するため、無症状や軽症で感染したCOVID-19ワクチン接種者との直接接触によって伝播されるウイルス量は比較的少なくなる。その結果、直接接触した個体の感染多重度(MOI)も低下することになる。

結果的に、新たに出現するSARS-CoV-2変異株の感染性は高くなっているにも関わらず、これらの変異株に再曝露しても、COVID-19ワクチン接種者の上気道の標的上皮細胞のMOIは低く保たれる。これによって、ウイルスの宿主間伝播の効率というよりも、宿主間伝播の増殖性 [1] が繰り返し損なわれることとなる。言い換えれば、感染多重度(MOI)の低さは、上気道における、より感染性の高い変異株の増殖性感染率の低さと関連し、同時に、(無症状ないし軽症)感染者は、ウイルスをより長期間伝播させることができ、それによって宿主間伝播効率が確保される。

より感染性の高い変異株へのワクチン・ブレークスルー感染が、低MOIで起こると、上気道を巡回する樹状細胞へのウイルスの吸着率も低下し、樹状細胞にトラップされたウィルス粒子への(多反応性)非中和抗体の結合も減少する。これにより、高度にCOVID-19ワクチン接種を行った地域(図4)では、より感染性の高い変異株が次々と出現し、推定感染率や下水サーベイランスの検出率が大幅に増加しているにも関わらず(図2、および、図3の検査陽性率)、ワクチン・ブレークスルー感染が進んでも、ウイルスのトランス感染に対する集団的免疫圧力の増加が、かなりゆっくりとしたものとなっている 理由が説明できる [2]。結果として、自然が、ウイルスの病原性を増大させるのに必要な変異や適応を蓄積した系統を選択するのに、より時間が必要となっている。そのため、高度にVCOVID-19ワクチンを接種された集団の大部分では、呼吸器症状や上気道でのウイルス排出は,今も比較的軽度である。その一方で、樹状細胞表面にトラップされたウィルス粒子への多反応性非中和抗体の結合は徐々に減少しつつあるため、多反応性非中和抗体によるウイルス病原性抑制効果に対する集団レベルの免疫圧力はゆっくりと増加している。この、病原性抑制抗体の結合の低下が,現在のCOVID-19による入院率と死亡率の上昇を説明するかもしれない(図3)。

私たちは今、ウイルスの高伝播率と重症COVID-19患者の増加に向き合っているという点では、自然なパンデミックとまさに同じである。しかし、自然なSARS-CoV-2パンデミックであれば、重症患者数は、通常、集団免疫によって伝播が制御されるようになれば減少する免疫逃避パンデミックでは、集団免疫は発達しないため、重症患者数は増加する一方であり、したがって、ウイルス伝播は制御されないまま、蔓延し続ける! というのが現在の予測である。

だからこそ、私は、高度にCOVID-19ワクチンを接種した地域は備えよ、と言い続けているのだ!

最後に、重要な情報を伝える。興味深いことに、新たに出現している変異株は、スパイクタンパク質のN末端ドメインにおける糖鎖付加に影響する変異を増やしている。

以前から予想していたことであるが、これは、自然が今、COVID-19ワクチン接種者のトランス感染を抑制している多反応性非中和抗体による不十分な免疫圧力に対抗する戦略として、糖鎖付加を変える(追加する)変異を支持していることを示唆している。(多反応性非中和抗体は、スパイクタンパク質のN末端ドメインの保存された抗原部位を標的とする)。これらの変異によって立体構造が変わり、スパイクタンパク質のN末端ドメインの保存された抗原部位への多反応性非中和抗体の結合が妨げられると考えられる。蔓延する変異株たちに、糖鎖付加型の変異がより多く取り入れられるようになれば、ウイルスが、主にこれらの変異によって、ウイルスの病原性に対する集団レベルの免疫圧力から逃れるようになる可能性が非常に高い。したがって、私たちは、まだ危機を脱してはいない、と判断することは妥当なのだ。

[1] 自転車レースいおいて、新たな、より適応した「乗り手」が集団(PELOTON)の先頭を交代し、逃げ集団を追いかけるスピードを抑えるように、新たに出現している、より感染性の高い変異株たちは、ウイルスが上気道の感受性宿主細胞に感染した時の増殖性のスピードを抑えている(参考 https://voiceforscienceandsolidarity.substack.com/p/just-as-the-fittest-teammates-of)【和訳

[2] ウイルスのトランス感染とは、移動性樹状細胞に付着した感染性ウィルス粒子が,遠隔臓器(下気道を含むが,それに限定されない)の感受性標的細胞に運ばれることを指す。ウイルスのトランス感染が促進されると、全身性の宿主内伝播が促進される。すなわち,病原性の増大である。

図1

図2

JWeiland(@JPWeiland)のXポスト(米国の状況)

7月19日更新:
今週また25%増加した。
下水のシグナルは昨夏のピークを上回り、一ヶ月以上も早い。

  • 1日に78万人新規感染(推定)

  • 43人に一人が現在感染している。

  • 12ヶ月平均値よりも45%高い

図3

上段:早期指標、 左:検査陽性率、右:救急受診率
下段:重症度の指標、左:入院率、右:死亡率

 図4

COVID Data Tracker (CDC)


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