混乱した生態系を建て直す自然の巧みな策は、しばしば、近視眼的な科学者達の単純な結論を凌駕する。
最近次の論文を知った。
「Repeated Omicron exposures redirect SARS-CoV-2–specific memory B cell evolution toward the latest variants (オミクロン株への繰り返し曝露で、SARS-CoV-2特異的記憶B細胞は、最新の変異株へと進化の方向を転換する)」(論文紹介Xポスト)(論文リンク)。
これは私が立体的免疫再集中と呼んでいるものである! 科学者達はようやく、この魅惑的な現象について、より多くの証拠を示し始めたようだ。彼らの興味深い発見の中で、私にとって新たな発見であったのは、方向転換した抗体は新規に合成されたのではなく、既に起源株にプライミングされていた記憶B細胞が、新たに出現した変異株に向けて方向を向け直したことで産生された、ということである。この結果は非常にうなずけるものであった。なぜなら、私は、免疫再集中は既にプライミングされたヘルパーT細胞によって引き起こされると想定していたからである(著書参照[邦訳書])。したがって、そのようなヘルパーT細胞が、記憶B細胞——既に、祖先系統のスパイクタンパク質のmRNAワクチンでプライミングされた——の体細胞変異を促して、その特異性を祖先系統から新たに出現する変異株に変化させることは驚くべきことではない。
オミクロン子孫株に繰り返しブレークスルー感染することで、SARS-CoV-2特異的記憶B細胞の進化が最新の変異株へと向かうのだが、この論文の著者らは、彼らが「ウイルスの適応に対する回復力(レジリエンス)」と表現しているものは、実は、より保存されたスパイクタンパク質のエピトープに対する新たな抗体の産生であり、しかし、その中和力や感染抑制能力は不十分(最適ではない)!ということに気がついていないようである。その結果、これらの抗体はウイルスの免疫逃避を促進し、より感染性の高い(亜)変異株の(同時)出現に貢献する。
科学者達が、複雑な免疫学的メカニズムを明らかにするために多大な労力を費やしているにも関わらず、それらのメカニズムが(高度にCOVID-19ワクチンを接種された)集団全体に対して作用した時に、ウィルス進化のダイナミクスに及ぼす影響については全く見当もついていないことは信じられない。したがって、彼らの発見は更新されたCOVID-19ワクチンの接種継続を支持する、という彼らの結論は短絡的なものであり、集団的免疫圧力がウイルスの進化に及ぼす影響に対する彼らの無知を強調するだけである。
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