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汚い水は捨てようじゃないか。だが大切なものまで一緒に捨ててはいけない。

Dr. Geert Vanden Bosscheの202411月13日投稿(Substack)
Let’s throw out the dirty bathwater, but let’s not throw out the baby with it!
の翻訳です。原文は有料記事ですが、投稿から約2週間後に公開するということです。(2024/11/30現在まだ無料公開になっていないようですが、著者より投稿から2週間経てば翻訳を掲載して良いとの許可をいただいているので、公開します)
著者substackを講読していただければ幸いです。

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RFK Jrがワクチンの状況全体をやり直そうとしていることは理解しているが、私は、新しい保険医療当局担当者たちが陥りがちな基本的な間違いについて警告を続けたいと思う。

現在のワクチン技術と、集積された膨大な周辺知識にも関わらず、ワクチン学は依然として極めて経験的な科学である。新規ワクチンの試験と開発が、詰まる所、大部分試行錯誤であることは、どんなワクチン学者も認めざるをえないだろう。したがって、承認され、市場にある、一連のワクチンのデータを、今日の知識と方法論で、再試験し再解析することは、確かに賢明なことだろう。

しかし、問題は、ワクチンの販売承認が、歴史的に、医薬品と異なる方法で評価されてきた理由である。実際、ワクチンと医薬品/薬を単純に比較できない複数の理由があるのだ:

薬は体や病原体に直接働きかける。例えば、抗菌剤は細菌を殺し、増殖を止める。抗ウイルス剤はウイルスの複製を妨げる。薬は体内の様々な細胞や臓器、または系に作用し、疾患を制御したり治したりする。医薬品の効果は、体内濃度、特に作用部位における濃度に依存する。

しかし、ワクチンは、免疫系に病原体を認識することを教えるためのものだ。それによって、体は、将来、実際に病気に曝された場合に、素早く防御免疫反応を立ち上げることができるようになる。ワクチンとは、病原体自体と直接戦うものではなく、免疫系が病原体を認識して戦うことができるよう教育するものであるから、ワクチンが機能するかどうかは、本質的に、免疫系の反応に全面的に依存する。ワクチンがしばしば「生物学的」製剤といわれるのは、ワクチンが生物学的素材や資源に由来し、体の自然な防御反応を利用するものだからである。したがって、ワクチンの効果は、活性成分の濃度よりも、ワクチンによって引き起こされる免疫反応の種類に、より多く依存する。どのような免疫反応が起こるかは、ワクチンに含まれる抗原の種類に大きく依存するのだ。そのため、「ワクチンの出来は抗原次第」なのであり、最終的な抗原の選択や、剤形や、接種方法は、大部分、経験的データに基づいている。

ワクチンが中和抗体を誘導し、予防的に用いられるのであれば、産生される抗体の濃度/抗体価と防御効果が相関する可能性がある(例えば、急性自己限定性感染/疾患の場合)。しかし、そのような関連が存在しない場合、ワクチンが生体で防御免疫をもたらすかどうかを、免疫病理や重篤な炎症反応を起こすことなく知るためには、臨床前研究や臨床研究のような経験的アプローチに頼るしかない。ワクチンの研究開発に長い時間がかかる理由の一部はこの点にある。

薬は免疫系に間接的に影響をおよぼすこともできるが、免疫系自体に頼らず、病原体や症状に直接作用することが多い。多くの場合、薬の有効性と安全性は、特定の個人や患者の血液や、標的臓器中の薬物濃度から容易に評価することができる。

しかし、急性自己限定性感染の場合、ワクチンが集団免疫の維持に役立つなら、ワクチンは個人を守るだけでなく、集団全体の防御に貢献することもできる。

ワクチンのリスク・ベネフィット分析は、ランダム化二重盲検プラセボ比較試験での、接種者と非接種者の罹患率の比較だけに基づくべきである、という主張がある。しかし、小児ワクチンに関して言えば、その主張において、ある種の急性自己限定性感染の集団免疫に対する、とくに弱毒生ワクチンの貢献が無視されていることは大きな欠陥である

ランダム化二重盲検プラセボ比較試験は、流行が起こっていない地域の健康な人々でのワクチンの累積健康効果を測定する。ウイルスの伝播が十分に少なく、そのため、増殖性感染の機会が大幅に減少した地域や季節においては、(標的疾患に対する)ワクチンの防御効果は、特に、弱毒生ワクチンの場合、ワクチンの副作用で相殺される可能性が高い。しかし、ウイルスが常在する地域では、免疫学的に未経験な人々に対して大規模にワクチン接種プログラムを実施すれば、ウイルス伝播を大きく減少させることができ、それによって、未感染者もワクチン未接種者も、以前感染したが中和抗体が減少しつつある人も、増殖性感染を避けることができる。したがって、急性自己限定性感染(麻疹、おたふく風邪、風疹など)に対する小児ワクチンの費用対効果分析には、社会要因や季節要因で繰返し流行が起こるウイルス常在地域での、長期間に渡る大規模なプラセボ対照比較試験が含まれれば理想的である。なぜなら、ウイルスが常在しない地域に比べ、常在地域ではワクチンの副作用がワクチンの防御効果を薄める度合いが、はるかに少ないからである。

しかし、ウイルス常在地域で、流行やウイルス曝露があることを理由に二重盲検プラセボ比較対照試験を行うことは非倫理的である。急性自己限定性感染に対するワクチンの場合には特にそうである。なぜなら、急性自己限定性感染に対する防御は、それまでの感染やワクチンによる中和抗体に相関するからである。ワクチンが誘導する抗体が防御に相関することが知られている場合、曝露リスクの高い集団でプラセボ比較対照試験を実施することは非倫理的であるため、小児ワクチンを、その第一の利益、つまり、集団免疫を維持し、それによって、流行発生を防止し、集団全体から死者が出ることを防止すること——を証明できる条件下で試験することは不可能である。

弱毒生ワクチンの有害作用だけを強調し、それが集団免疫の維持に貢献してきたことを無視することは、税金を払えば生活が苦しくなるということばかりを強調して、公共財や公共サービスの維持管理におけるその役割を無視するようなものだ

ともあれ、弱毒生ワクチンに替わる、集団免疫を維持する新たな免疫介入をデザインし、開発する余地がまだ十分にある点については以前の寄稿で詳しく述べている。

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