文献5_ギアト・ヴァンデン・ボッシュのCOVID-19パンデミックの進化についての予測[2022年5月改訂版]
高度にCOVID-19ワクチン接種された集団のウイルス中和能力の貧弱さが、まもなく、ワクチン接種者に対し高い感染性と高い毒性を持ち、既存の、および、将来のすべてのスパイクタンパク質ベースのCOVID-19ワクチンに対して完全に耐性のSARS-CoV-2超変異体の劇的な拡大を引き起こす可能性がある。
最も重要なメッセージ
私は、一連の、新規高病原性かつ高感染性SARS-CoV-2変異株が、世界中の高度にワクチン接種を行った国々で、現在、急速かつ独立に発生しており、それらが間もなく高速に拡大すると真剣に予測している。私は、現在のワクチン接種者における感染の繰り返しと比較的軽症での発症が、間もなく、重症のCOVID-19疾患と死亡に置き換わると予測している。
残念ながら、接種者は、関連する (1) 自然免疫系のエフェクター細胞(すなわち、NK細胞と自然免疫系B細胞から分泌されるIgM)による対コロナウイルス防御に頼ることはできない (2) 。その理由は、S特異的ワクチン由来中和抗体や多反応性非中和抗体が、それぞれ、ウイルスの中和性やウイルス感染性を強めることによって、そのような自然免疫エフェクター細胞を回避してしまうためである。オミクロンの到来以来、接種者では多反応性非中和抗体がワクチン・ブレークスルー感染を引き起こし、そのため、自然免疫系のエフェクター細胞の訓練が阻害され、ウイルスの免疫逃避が促進されている。
オミクロン前の変異株に自然に曝露した後の潜在的中和抗体の力価は、〔ワクチンにプライミングされた者に比較して(訳者による補足)〕、より低くなる傾向があるため、未接種者がオミクロンに感染した後には、SARS-CoV-2に対する自然免疫系の防御の訓練がなされ、同時に、ウイルスの免疫逃避が防がれる。
高度にCOVID-19ワクチン接種がされた国では、直ちに大規模な予防的化学防御キャンペーンを実施しない限り、免疫逃避パンデミックの結末が莫大な人命の犠牲を伴うものになることは疑いようがない。
イントロダクション
「より感染性の強い」変異株はワクチンによって誘導された潜在的中和抗体による防御を突破することが報告されてきた。オミクロンの出現により、接種者は、今も、ワクチン由来の抗体によって、ほぼ重症COVID-19疾患から守られてはいるものの、より感染しやすくなってしまった。現在、複数の高度にワクチン接種を行った国(英国、イスラエル、韓国など)から、初回接種を完了した接種者の入院例の報告が増加している。このことは、COVID-19ワクチン自体が重症COVID-19疾患に対し防御力があるわけではなく、ワクチンによる重症疾患に対する防御に抵抗性の新しい変異株が現れてオミクロンに取って代わるのは時間の問題であることを示しているだけなのかもしれない。パンデミックの進化動態は、集団ワクチン接種が、より感染性の高い免疫逃避変異株の数々の拡大を促進し、それによって、自然なパンデミックを免疫逃避パンデミックに変えたことを強く示唆している。この大規模な接種プログラムによって生じた集団レベルの免疫圧力が、現在、臨床的あるいは疫学的に観察されていることを説明できるか、どのように説明できるか、を明らかにすることは重要であろう。なせなら、これによって(パンデミック中に行われた)集団ワクチン接種の来るべき結末が個人の健康と公衆衛生の両方に及ぼす影響を予測することができるからである。
したがって、この論考の目的は、現在実施されているCOVID-19ワクチンの集団接種プログラムの起り得る生物学的影響を、できる限り高い確実性で予測することである。本稿は、おそらく、現在進行中のCOVID-19パンデミックの謎めいた進化の背後にあると推定される病態整理学的メカニズムを、私自身の学際的洞察を関連する文献と突き合わせ、科学的に分析し、説明した最初の試みとなるであろう。ここで用いた科学的方法は演繹的推論に基づく。それ故、本稿の結論を検証するのに最もふさわしいのは、シャーロック・ホームズからの引用だろう。
「不可能を排除したとき、どんなにありえないことでも、残ったものが真実に違いないと、何度言ったことか」
その結果、現在の臨床観察、疫学観察に合致するだけでなく、多科学的に検証された多くの原理に裏打ちされた理論が確立された。この理論は、現在実施されているCOVID-19集団ワクチン接種が個人の健康と公衆衛生の両方に及ぼしうる影響について、いまや、極めて懸念される予測を導き出している。その結論は科学的に完全に合理的なものである。したがって、この予測は極めて真剣に受け止められなければならない。
要約
ワクチンによって引き起こされた(スパイクタンパク質)特異的な中和エピトープに対する集団レベルの免疫圧力によって、オミクロンを含む、より感染性の高い変異株へのブレークスルー感染が起こったことは否定できない。
スパイクタンパク質のN末端ドメイン(S-NTD)内の保存された「感染増強性」エピトープに対する非中和抗体は、オミクロンの接種者に対する感染性の増強に寄与するだけでなく、オミクロンの疾患の経過がかなり軽いことから、症状の緩和にも寄与している可能性があることが分かっている。そのため、高度にワクチン接種された集団が、非常にSARS-CoV-2(オミクロン)に感染しやすくなり、スパイクタンパク質のN末端ドメイン(S-NTD)内の感染増強性エピトープに対する免疫圧力をますます高め、オミクロンが重症の全身性COVID-19疾患を起こすことを妨げている。この免疫圧力によって、今や、複数のO-糖鎖付加部位を備え、その糖鎖によって、非中和性の感染増強性エピトープを含む保存されたN末端ドメインを隠すことができるSARS-CoV-2変異株(「Newco変異株」と呼ぶ)が自然選択される瀬戸際にあると私は考えている。そのような変異株は、接種者が持つ、疾患緩和効果を持つ、感染増強性の抗NTD抗体(即ち、他反応性非中和抗体)から逃避する。
つまり、より高度にスパイクタンパク質をO型糖鎖化する変異が自然選択されることは、接種者にとって、より病原性が強い新規変異株が生み出されることになると同時に、スパイクタンパク質の受容体結合ドメインをワクチンに由来する潜在的中和抗体から隠してしまうことになるのだ。スパイクタンパク質が部位特異的にO-糖鎖化されると、接種者が持つ抗体による、重症COVID-19疾患からの防御効果がなくなり、抗体依存性感染増強が重症COVID-19疾患増強に直結し、スパイクタンパク質に対するあらゆる潜在的中和抗体に完全に耐性になるだろう。結果として、高度にワクチン接種された集団では、COVID-19による入院と死亡の津波が押し寄せることになるのに対し、未接種者は「増強された」(即ち、訓練された)自然免疫のおかげでNewco変異株から一層守られるだろう。
感染の初期過程に関わるウイルスタンパク質の糖鎖修飾が、ウイルスのライフサイクルに対する免疫圧力の結果として進化することはよく知られている。そのため、SARS-CoV-2の分子疫学的サーベイランスに、ウイルスのペプチド配列の変化の監視だけでなく、スパイクタンパク質の糖鎖プロファイルの調査と糖鎖プロテオミクスを加えなければならない。
現在進行中のパンデミックを、症状を緩和するだけで殺菌免疫(ウイルスを排除する免疫)を与えないワクチンによって制御することはできない。この段階においては、大惨事を回避する唯一の方法は、集団ワクチン接種を直ちに中止し、ワクチン接種率の高い国で大規模な抗ウイルス薬による化学防御キャンペーンに置き換えることである。
なぜこの呼び掛けをするのか。
私のこのパンデミックの将来の進化に対する真剣な懸念を共有するには時期が悪いことは承知している。世界には懸念すべきニュースが多すぎるというのに、それに加えて、このパンデミックの先行きについての恐るべき予測など歓迎されるはずもない。それでも私が懸念を表明し続ける唯一の理由は、国内外の公衆衛生機関に対し、特にワクチン接種率の高い国々において、大規模な抗ウイルス化学予防キャンペーンを実施することを強く求めざるを得ないからである。オミクロンの特徴である高い感染性を考えれば、現在観察されている「軽い」臨床経過がこのパンデミックの終わりの前触れとは考えられない。
集団ワクチン接種プログラムが直ちに中止されたとしても、高度にワクチン接種された集団が、さらにオミクロンのスパイクタンパク質に対する免疫圧力を及ぼすことを防ぐためには、感染率を即刻、かつ高度に減少させる必要があるだろう。分子疫学者の分析に基づけば、宿主免疫がウイルスのライフサイクルを脅かす一方で、複製と伝搬を止めることができない限り、SARS-CoV-2(亜)変異株が免疫破壊変異に向かって収束進化し続けることは疑いがない。ウイルスの感染性に対して強力な免疫選択圧力がかかっているため、ウイルスは新たな免疫の攻撃から逃れ、生存を確保するためのメカニズムとして、既に、より感染性の高い変異株を蔓延させた。以下で説明するように、オミクロンがワクチンによる潜在的中和抗体に対する抵抗性を高めることを直接の原因として、より病原性の強い変異株へのSARS-CoV-2の進化が生じる。
このことが、現在の、高度にCOVID-19に対するワクチン接種を行った集団における、ワクチン・ブレークスルー感染の高い発生率につながっている。したがって、集団ワクチン接種を中止し、直ちにウイルスの感染率を下げることが最重要なのである。
オミクロンがパンデミックの待ち望まれた終着駅ではない理由
分子疫学者たちはすでに2021年の初めに、スパイクタンパク質に対する集団レベルの免疫圧が免疫逃避変異の主要な促進因子であり、いったんこれらの変異が蓄積し始めると、集団から及ぼされる免疫圧になんとか抵抗することができる限り、これらの変異が予測不可能な性質に再配置され、ウイルスが生き残り繁栄することは、基本的には時間の問題であることを報告していた。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7941658/pdf/nihpp-2021.02.23.21252268v3.pdf)。
これらの科学者の誰も、集団レベルの免疫圧がスパイクタンパク質にかかった明らかな原因として、大規模なワクチン接種にあえて言及していないが、COVID-19パンデミックの最中に、大部分が免疫学的にSARS-CoV-2未経験の集団に大規模なワクチン接種を行ったことで、これらの集団がウイルスの感染性に対して強力な免疫圧をかけることになってしまったことは否定できない。なぜなら、COVID-19ワクチンはウイルス感染性の原因となるスパイクタンパク質を標的としたものだからである(https://trialsitenews.com/why-is-the-ongoing-mass-vaccination- experiment-driving-a-rapid-evolutionary-response-of-sars-cov-2/)。集団レベルの大規模な免疫圧が、ワクチン耐性ウイルス変異株(オミクロン「ファミリー」に属するものなど)の出現を引き起こしたことも否定できない (3)。パンデミックの終息は、ウイルスの伝播を劇的に減少させることによってのみ可能であることを考えると、ウイルス感染に対して非常に感受性が高くなった(その原因は、COVID-19ワクチン接種率が高いためである)集団でウイルスが大量に循環することは、このパンデミックを終息させるのに有利な状況ではないことは確かである。
公式の「専門家」の主張が語るもの
ダーウィンの理論を含むあらゆる生物学的証拠にもかかわらず、世界保健機関や公衆衛生当局、そしてそれらに助言する専門家たちは、このパンデミックの進化のダイナミクスが、彼らがずっと提唱してきた集団ワクチン接種プログラムによって変化する可能性が高いという、私や他の人々の深刻な警告を無視し続けてきた。
オミクロンがワクチンによる中和抗体にほとんど耐性となったことから、COVID-19ワクチン接種がこのパンデミックの深刻さを和らげることに貢献し、感染性は強いが圧倒的に弱毒なウイルスによる、より優れた『自然な』集団免疫モードへと移行しつつあると考える者が、独立した科学者の中にさえあるようだ。オミクロンはほぼ完璧な『弱毒生ワクチン』として機能し、ワクチンによる免疫を高めることになる!ということらしい。そのため、この無謀なワクチン接種プログラムの利害関係者は、COVID-19ワクチンの集団接種の成功のおかげで、この『祝福』が得られたと主張している。しかも、多くの科学者も、オミクロンが集団免疫を確立し、パンデミックを終了させる機会をもたらしたと信じているようだ!
このパンデミックの疫学が教えてくれるもの
現在、ワクチン接種率の高い集団で、接種者の自然免疫系が抑制されていることを強く示唆する観察結果が複数ある。最も重要な観察結果は、接種者の感染感受性が亢進していることである。集団免疫が成長しているのであれば、接種率の高い集団で、感染率は上がるのではなく、下がるはずである。
集団ワクチン接種プログラムを非常に幼い、抗原経験の乏しい子どもにまで拡大することは、感染感受性を持つ予備群を拡大し、ワクチン・ブレークスルー感染の発生率をさらに増大させるだけである。
接種者のオミクロンに対する感受性が上がっているため、高度にワクチン接種された集団では、どの時点においてもSARS-CoV-2感染の頻度が劇的に上昇している。現在発表されている感染者数〔the number of cases:患者数であるが日本では感染者数として発表されるので、感染者数とした。〕は、ほぼCOVID-19発症者数に限定されていることから「感染者」数は、もはや感染率の信頼できる指標ではないことに留意しておくことは重要である。入院率と死亡率が減少していることから、政府や公衆衛生機関は、感染予防対策をほぼ解除し、(接種者も未接種者も)比較的軽症であることから、多くの感染者は報告されていない。したがって、国内外で公式に発表される感染者数は、間違いなく、大幅に過小評価されている (4)。それにも関わらず、多くの国において、感染率は依然として高いと報告されている。それに加え、感染者数のピークからの減少が緩やかであること、波の発生が継続し、かつ、波の間隔が短いこと、さらに、波と波の間の感染者数がベースラインに戻らないこと、これらはすべて、集団の感染感受性が増していることを示している(図1参照)。
もし自然なパンデミックの最中において、ワクチンが私たちが持つ自然な免疫防御と同様に有効であるならば、ほとんどの人が無症状の感染となり(発症しない!)、感染の波の数は限定されたものとなり、それぞれの波の後では感染率は急激に低下してベースラインレベルに戻ると考えられる(感染率が十分に低下しないままプラトーとなったり、小さな波が不規則に続いたりはしない) 。しかし、もはや高い感染率の後に患者数が劇的に低下することはない。したがって、感染者数の変動は集団の異なる部分での感染感受性の変化を反映しているだけであり、殺菌免疫〔ウイルスを排除する免疫〕の能力が構築されているという証拠はない。「集団免疫」ではなく「集団感染感受性」が構築されている、ということなのだ。
集団ワクチン接種キャンペーンがより若い年齢層に拡大されれば、感染感受性の高い予備群が増え、より感染性の高い変異株による、これまでの感染の波によって底上げされたベースラインに、より多くの波が加わる可能性が高くなる。これまでに、感染者は、実際に、より感染しやすくなるが、感染感受性の増強が重症COVID-19疾患(数)にはつながっていないことが報告されている (https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2022.01.28.22270044v1).したがって、ワクチンは接種者の感染感受性を上げている一方で、感染が重いCOVID-19疾患に発展することを妨げていると考えられる。これは、未接種集団における自然なパンデミックの経過とは対照的である。その場合、感染の波は、通常、集団のもっと脆弱な部分において、罹患率と死亡率の急増を伴い、その波の後には、通常、感染率は劇的に低下し、通常、数回の波の後にはパンデミックがエンデミックとなる。この過程で集団免疫が獲得され、集団の残りの脆弱な部分も守られるようになるのである。
現在のパンデミックの進化的動態と、上記の傾向がワクチン接種率の高い集団で最も顕著であるという事実に基づけば、(その大部分がワクチン接種者である)集団全体がウイルスに免疫圧をかけ、COVID-19疾患の重症度を下げると同時に、高いレベルの感染感受性を可能にしていると推測される。この二つの特徴の組合わせが純粋に偶然に生じた可能性は極めて低い。大規模な集団的免疫介入に由来する共通の基盤がある可能性が高いのだ。高度にワクチン接種された集団におけるウイルスの表現型の変化にウイルスの感染性の増強が含まれることから、その変化にはスパイクタンパク質に対する免疫反応が関与していると考えられる。潜在的中和抗体に対するオミクロンの抵抗性の増加と、ウイルスの感染性の増強とCOVID-19疾患の重症度の緩和が同時に観察されていることを考えれば、現在のパンデミックの進化動態の起源がウイルス(オミクロン)とワクチンによって誘導された非中和抗体の相互作用にあることは明らかであると考えられる(さらに以下を参照)。
接種者が感染しても死亡はおろか、ほとんど重症化もしないのに、なぜ、集団免疫の欠如を懸念しなければならないのか。
この素朴な質問に対しては、一言、説明しておく必要がある。オミクロンに曝露した場合、未接種者は細胞性自然免疫の訓練ができるが、接種者では、ワクチンによって誘導されたスパイク特異的中和抗体や多反応性非中和抗体の力価が高いため、自然免疫系のIgMが凌駕され、細胞性免疫系が阻害される、ということである。
いつものことながら、悪魔は細部に宿るものであり、細部とは、ウイルスと宿主免疫の相互作用の進化動態の本質にまで分け入る、ということである。この相互作用は無謀な人為的介入によって著しく乱されてしまった。したがって、入院率と死亡率が比較的低いことが集団免疫の結果であるとする主張は全く理解し難い。既に述べた通り、ワクチン接種率の高い国における感染率は今も高い(そのうえ、接種者と未接種者のほとんどの年齢層において、オミクロンは圧倒的に軽症であるため、大きく過小評価されている可能性が高い)。つまり、今のところ、集団免疫が得られているという徴候は見られていないのだ。
- 現在の疫学的状況では、すぐに集団免疫に達する望みは無い
オミクロンは現行のCOVID-19ワクチンによって誘導された潜在的中和抗体にほぼ耐性であることが知られている。ワクチンによる抗体の中和能力が低下すると、スパイクタンパク質のN末端ドメインに対する非中和抗体〔即ち多反応性非中和抗体〕の親和性が上がることが示されている (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8351274/pdf/main.pdf)。私は以前の論考 (https://www.trialsitenews.com/a/will-omicron-induce-herd-immunity-or-will-it-enable-sars-cov-2-to-transition-into-variants-capable-of-potentiating-ade-in-vaccinees)で, これらの多反応性非中和抗体が、関連する多特異的自然抗体(IgM)と、SARS-CoV-2との結合を争うことを示唆している。どちらの場合も結合に多価性の相互作用が関連していると考えられるためである(https://www.youtube.com/watch?v=wBm1BKL4zlg; https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0092867421006620)。
多反応性非中和抗体を介したワクチン・ブレークスルー感染は自然免疫系の細胞であるNK細胞が刺激されることを妨げると考えられる。NK細胞は、ウイルス感染の初期段階で、感染した細胞の表面に発現される変化した自己モチーフを認識する。それによって、NK細胞は、ウイルス感染細胞を、細胞内で子孫ウイルス粒子が産生される前に殺すと考えられている。B1a細胞が産生する自然IgM抗体は、(コロナウイルスを含む)糖鎖を持つエンベロープウイルスの表面の自己類似N型糖鎖パターンを認識し、増殖性感染の初期段階でMHC 非拘束性細胞傷害性T細胞がウイルス感染細胞を殺傷できるようにすると考えられており、それによって殺菌免疫〔ウイルスを排除する免疫〕に寄与する。無症状感染において、コロナウイルス反応性自然IgM抗体の増加とNK細胞の多さが、感染の阻止と発症防止に相関することが示されている(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7772470/pdf/fimmu-11-610300.pdf)。
結果として、COVID-19ワクチン接種率の高い集団では、(ワクチン耐性の変異株の蔓延によって)高力価の多反応性非中和抗体が高率に存在するため、感染伝搬を減らすことができず、集団免疫の獲得が妨げられている。
関連する自然免疫系のエフェクター細胞の抑制は、下記の条件下で特に顕著となる可能性がある。
ワクチン接種の場合:ワクチンで誘導される中和抗体はウイルスの感染性の原因である標的タンパク質(SARS-CoV-2ないしコロナウイルスの場合にはスパイクタンパク質)に対し高親和性である一方で、低親和性の自然IgM抗体とウイルス結合を競い、凌駕する。
他方、(オミクロンに対して)著しく中和力が低下したワクチン由来抗体が高力価で存在する中で誘導されたS特異的多反応性非中和抗体は、ウイルスの感染性を高め(NK細胞による自然免疫を回避し)、その一方で、同様に、低親和性の自然IgM抗体とウイルス結合を競い、凌駕する。
ワクチンに由来する中和抗体や多反応性非中和抗体は、自然のパンデミックや免疫逃避パンデミックで誘導された場合に特に問題となる。自然免疫系のエフェクター細胞が、それぞれ、殺菌免疫〔ウイルス排除免疫〕の形成と、集団免疫の構築に不可欠なためである。急性自己限定性感染のパンデミックを制御できるのは集団免疫だけである。
接種者がブースター接種したり、新しいオミクロン由来変異株に再曝露すれば、自然免疫の訓練は抑制され、無効化され続けることになり、新たに発生する変異株に対する接種者の感染感受性は増し、ウイルスの免疫逃避を促進し、さらに加速さえすることは言うまでもない。幼い子どもにCOVID-19ワクチンを接種した場合:幼い子どもたちには自然抗体が大量に備わっているものの、大部分は免疫学的にナイーブであり(抗原を経験していない)、それゆえ、子どもの自然免疫は、どのようにして自己と非自己を見分けるかを教育されることができるのである。しかし、寿命の長いスパイクタンパク質特異的な中和抗体や多反応性非中和抗体に圧倒された状態では、この教育は破棄されるかもしれない。病原体の表面に発現した自己類似パターン、または、自己糖鎖を認識する自然抗体の機能活性が持続的に抑制されると、炎症性免疫疾患や自己免疫疾患が引き起こされるのではないかと推測される(https://www.voiceforscienceandsolidarity.org/scientific-blog/epidemiologic-ramifications-and-global- health-consequences-of-the-c-19-mass-vaccination-experiment; https://www.voiceforscienceandsolidarity.org/scientific-blog/mis-c-in-children-does-not-justify-at-all- their-vaccination-against-sars-cov-2〔和訳〕)。もちろん、この分野はさらに探求される必要がある。
したがって、最悪のシナリオは、幼い子どもたちに、ワクチン接種と、呼吸器感染症ウイルスへの曝露を大幅に妨げる危険性のある公衆衛生対策(マスク着用や、身体的距離を取ることや、SARS-CoV-2陽性となった健康な子どもを隔離すること、など)の両方が採用されることである。
集団ワクチン接種キャンペーンの継続、とくに子どもに対象を拡大し、ブースター接種に焦点を当てた集団ワクチン接種キャンペーンの継続は、集団が集団免疫を形成する能力を著しく弱め、ウイルスの免疫逃避をブーストする。
- 他の呼吸器疾患、他のウイルス性疾患、さらにはがんの罹患率が上昇するという報告が着実に増えていることに示されるように、ワクチン接種者が、全般的な免疫抑制を受けていることを示す根拠が増え続けている。
COVID-19ワクチン接種者が他のウイルス感染の無症状のリザーバーとなりうる、ということは十分に考えられるが、異論がないわけではない(https://www.voiceforscienceandsolidarity.org/scientific-blog/c-19-mass- vaccination-triggers-a-chain-reaction-of-new-pandemics-and-epidemics〔和訳〕; https://www.voiceforscienceandsolidarity.org/scientific-blog/a-fairy-tale-of-pandemics〔和訳〕)。しかし、そうであれば、COVID-19ワクチン未接種の子どもたちや細胞性免疫の弱い人々(高齢者や基礎疾患のある人々)に、他のウイルス疾患の急増を引き起こす原因となる可能性がある。これは特に、ワクチンでは防げないウイルス性疾患(RSVなど)や、低リスクであるがゆえに、そのような疾患に対して定期的にワクチン接種を受けていない集団(たとえば、子どもに対するインフルエンザワクチン)に当てはまる。
- オミクロンによって、高度にワクチン接種を受けた集団が、ウイルスの病原性に対して免疫的な圧力をかけるようになったことにという十分な根拠が得られている
N末端ドメイン(NTD)に対する抗体が感染増強を引き起こすことは既に示されている (https://www.journalofinfection.com/article/S0163-4453(21)00392-3/fulltext; https://www.youtube.com/watch?v=wBm1BKL4zlg; https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0092867421006620)。
高度にワクチン接種を受けた集団が、スパイクタンパク質を標的とする抗体にほぼ抵抗性のSARS-CoV-2変異株に曝露し続けると、高力価の抗NTD抗体を持つ割合が着実に増加し、その結果、ますます感染しやすくなる。そのため、より多くのワクチン接種者が感染または再感染するようになる。抗NTD抗体は、重症のCOVID-19疾患に対する防御効果を持つ可能性があることから考えると(https://www.nature.com/articles/s41586-021-03925-1.pdf), C0VID-19ワクチン接種者で感染が重症COVID-19疾患へと進展することを抑制しているのは、スパイクタンパク質のN末端ドメインの保存された感染増強部位に対し、不十分な免疫圧力が及ぼされている結果ではないかと思われる。
オミクロンの出現以来、発表される感染者率は——大幅に過小評価されているというのに——大きく増加した。高度にワクチン接種を行っている国では、波が落ち着いた時でさえ、平均感染者率はこれまでの変異株で観察された値を上回っている。このことは、ウイルスの病原性に対するかなりのレベルの免疫圧力が、より高いベースライン値で長期間維持されていることを示唆する。
多反応性非中和抗体が防御効果を持つことがIn vitroの動物実験で示されてはいるが、今のところ、この抗体の生物学的活性をin vitroで測定する確立された方法はない。
そのため、高ワクチン接種国で、感染増強性/病原性抑制性の抗NTD抗体の力価が上昇している人の割合が、現在、実際に増加しているかどうかを示すことはできない。しかし、もしその割合が増えているのなら、感染性の増強を病原性の低下に結びつけ、どのようにして増加した多反応性非中和抗体がウイルスの病原性に免疫圧を及ぼしうるのかを明らかにする、妥当性の高い分子メカニズムが存在するはずである。このメカニズムを明らかにすることは極めて重要である。なぜなら、このパンデミックの進化動態が、現在、さらに問題のある免疫逃避変異株の選択と拡大への道を開きつつあるのかどうかを予測できるかもしれないからである。
高ワクチン接種国では、「オミクロン」による感染者数の波のベースラインが上昇してきていることから、潜在的な新しい変異株が超えなければならない適応の谷はより浅くなり、必要な適応コストは低下する可能性が高いと考えられる。つまり、次に蔓延する免疫逃避変異株ファミリーの出現までの猶予時間はかなり短くなると予測される。
ウイルスの免疫病態をより深く理解することで、より病原性の強い新たな免疫逃避変異株が出現する危険性を評価し、そのような変異株が強毒性と、オミクロンを急速に駆逐するのに十分な感染力を併せ持つかどうかを探ることができるかもしれない。
(次の、ウイルスの感染力に対する宿主の免疫反応は、現在進行中のパンデミックにおけるSARS-CoV-2の進化動態について何を教えてくれているだろうか、の項参照)
高ワクチン接種国でSARS-CoV-2がより感染性を高め、ワクチン由来中和抗体(主に変異しやすい受容体結合ドメインを標的としている)に対してほぼ抵抗性となった結果、新規変異株が「社会的影響が極めて重大な変異株(Variant of High Consequence)」に分類されるために乗り越えなければならないハードルは、感染増強性/病原性抑制性抗体だけであろう。そのような変異株は接種者に対して高感染性かつ強毒性であり、スパイクタンパク質ベースのワクチン由来抗体に完全に抵抗性であるため、高度にワクチン接種された集団に拡大すれば、最悪の結果をもたらすことになるだろう。したがって、以下に提起する分析は真剣に受け止められなくてはならない。
ウイルスの感染力に対する宿主の免疫反応は、現在進行中のパンデミックにおけるSARS-CoV-2の進化動態について何を教えてくれているだろうか
SARS-CoV-2の進化動態、異なるタイプの抗スパイク抗体の相互作用のメカニズム、集団から及ぼされる免疫圧力に応じて今後ウイルスがどのような変異を取り入れるか、取り込むであろう将来の変異に対する私の理解は、F.A. Lempp ら(https://www.nature.com/articles/s41586-021-03925-1) 、H. Arase ら (https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0092867421006620)の発見と、N. Izquierdo-Userosのチーム (https://www.nature.com/articles/s41423-021-00794-6.pdf)、W.S. Barclay ら(https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.12.31.474653v1)、 J. Fantiniら (https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34384810/)、H. Wangら(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7863934/#B233-ijms-22-00992) 、K. Guptaらの観察結果に極めて一致し、大部分をそれらに基づいている。
彼らの研究結果および、その論文中に引用された複数の研究結果は、抗スパイク抗体が、in vitroで測定された総中和抗体価や、スパイクタンパク質の発現形式(遊離ウイルス粒子上に発現するか、樹状細胞に吸着したウイルスや感染宿主細胞に発現するか)によって決定される受容体結合ドメインの立体構造に応じて、ウイルスの感染性や疾患を、抑制したり、増強したりすることを強調している。
集団レベルの免疫圧力とSARS-CoV-2の進化的免疫逃避戦略との相互作用の根底にあるメカニズムを、以下に、いくつかの重要な質問に対する回答という形で取り上げる。
ワクチン接種者のSARS-CoV-2に対する感染感受性の増強と、COVID-19疾患感受性の減少の間には因果関係があるのだろうか
急性自己限定性ウイルス疾患の自然のパンデミックでは、通常、感染感受性の増強と重症疾患の感受性の減少が同時に起ることはない。
以下のことから、高度にワクチンを接種した集団での感染感受性の増強と、重症COVID-19疾患に対する感受性の減少の原因は、いずれも、ワクチンによって誘導された中和抗体にあると合理的に結論づけられる。
- 中和力の低さが抗体依存性感染増強を促進する(図.2)
抗体依存性感染増強の定義: ウイルスの感染性の増強は「感染増強性」非中和抗NTD抗体(即ち、多反応性非中和抗体)がN末端ドメイン(NTD)内の保存された抗原部位(SARS-CoV-2に共通だが、コロナウイルス全般に共通ではない)に結合することで引き起こされる。その結合は、受容体結合ドメイン(RBD)をオープン型にし、それによって、受容体結合モチーフ(RBM)とACE2の結合を強めることで、ウイルスの標的細胞への侵入を促進する。
上気道では、中和されていない(感染性)SARS-CoV-2ウイルス粒子は、ACE2を高発現している上皮細胞に感染するか、組織常在樹状細胞上のC型レクチンに捕捉され、下気道や他の遠隔臓器に運ばれる(https://www.nature.com/articles/s41586-021-03925-1.pdf)。受容体結合ドメイン(RBD)の可変性エピトープに対する特異抗体のウイルス中和能力の低下は、多反応性非中和抗体の感染増強性エピトープ(N末端ドメイン内の保存された、糖鎖化されていない特異的部位に存在する)に対する親和性を上げる (https://www.journalofinfection.com/article/S0163-4453(21)00392-3/fulltext; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7128678/pdf/main.pdf)。
まだ完全に証明されたわけではないが、多反応性非中和抗体が、N末端ドメイン(NTD)内の保存された、感染増強性部位に不均衡に多く結合するのは、この抗原部位が構造変化を起こすことによる可能性が高い。この抗原部位は、緊密に配置された受容体結合ドメイン(RBD)の隣り合うプロトマー〔複数のサブユニットで構成されるタンパク質の、少なくとも2つの異なるタンパク質鎖で構成される最小のユニット〕の可動部位にあることが知られていることや、受容体結合ドメイン(RBD)に、RBDに対する潜在的中和抗体が結合すると、劇的な立体構造変化が起こることが報告されていることがその理由である (https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/acs.jpclett.0c01431; https://www.science.org/doi/pdf/10.1126/science.abb2507; https://www.nature.com/articles/s41586- 021-03925-1.pdf)。
受容体結合ドメイン(RBD)がRBD特異的中和抗体と結合して「オープン」構造で安定している場合、NTD特異的潜在的広域中和抗体が、N末端ドメイン(NTD)内の、単一の、特異的に保存された「スーパーサイト」内に存在する対応するエピトープに主に結合すると考えられる。一方、受容体結合ドメイン(RBD )が「クローズ」構造にあり、抗RBD中和抗体の結合が弱い場合には、NTD特異的潜在的広域感染増強性抗体が同じスーパーサイト内の対応するエピトープに主に結合すると考えられる。このことは、複数の研究者によって報告された、N末端ドメイン(NTD)内の単一の、保存された、糖鎖のない中和性スーパーサイトが(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7962585/pdf/main.pdf; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8820657/pdf/nihpp-2022.02.01.478695v1.pdf)、別の研究者たちによって報告された、N末端ドメイン(NTD)内の単一の、保存された、糖鎖のない感染増強性スーパーサイト(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8142859/pdf/main.pdf)と重なるものであり、このN末端ドメイン(NTD)内のエピトープの認識の違いは、潜在的中和抗体が受容体結合ドメインに結合することによって引き起こされる立体構造変化に大きく依存していることを示唆している。
非中和抗体と、N末端ドメイン(NTD)内の保存された特異的感染増強性エピトープとの結合は、受容体結合ドメイン(RBD)とACE2の結合を促進し、ACE2依存性の宿主標的細胞へのウイルス侵入を促進することが知られている (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8142859/pdf/main.pdf)。この現象は「抗体依存性感染増強(ADEI)」と呼ばれている。中和抗体が高力価であれば、感染増強性抗体は感染増強につながらないことは、これまでに十分示されている (https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0092867421006620; https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34384810/)。したがって、多反応性非中和抗体が感染を増強する危険性が高いのは、力価が著しく低下したウイルス中和抗体の存在下でウイルスに曝露することである。そのような条件に最も当てはまるのはブレークスルー感染であろう。ブレークスルー感染は、通常、初回接種を完了したが、ワクチンによる抗体が流行中の変異株の対応するスパイクタンパク質のエピトープをうまく認識できないため、もはや、ウイルスを効果的に中和できなくなって起こる(即ち、流行中のウイルスがワクチンによって誘導された潜在的中和抗体に対する抵抗性を増している場合)。
- 中和力の低さが重症化抑制をもたらすのは、トランス感染が減少する結果、トランス細胞融合が減るためである(図3、図4参照)
トランス感染の定義: トランス感染とは樹状細胞表面に載って運ばれるSARS-CoV-2ウイルス粒子による標的細胞の増殖性感染であり、樹状細胞表面のC型レクチン受容体がスパイクタンパク質表面のN型糖鎖に結合することで引き起こされる。その結合によって、N末端ドメイン(NTD)内のポリペプチド領域が表に現れ、標的細胞の細胞膜の脂質ラフト内のシアロガングリオシドと結合できるようになる。この相互作用によって、スパイクタンパク質の細胞融合促進性の再構成が起こり、受容体結合モチーフ(RBM)とACE2の結合が促進されると考えられる。
トランス細胞融合の定義: トランス細胞融合とはACE2非依存性の細胞-細胞間融合であり、SARS-CoV-2感染細胞と隣接する非感染細胞との間で起こる。これによって、合胞体(シンシチア)が形成され、標的臓器内で細胞から細胞へと感染が広がる。
ウイルス侵入口である粘膜で、スパイクタンパク質特異的抗体や、自然免疫系の多反応性抗体に結合していない感染性ウイルス粒子は、組織常在樹状細胞に捕捉される。活性化した樹状細胞は遊走し、感染性ウイルス粒子を下気道や、他の遠隔臓器に運び (https://www.nature.com/articles/s41586-021- 03925-1.pdf)、そこで、下気道の上皮細胞や他の遠隔臓器の細胞にトランス感染し、感染細胞と非感染細胞の融合を起こし、全身性疾患を引き起こす(下記参照)。
スパイクタンパク質のN型糖鎖と樹状細胞表面のC型レクチンとの強い結合は、受容体結合ドメイン(RBD)のクローズ型での安定化を促進すると考えられる(図5左にクローズ型のRBDの模式図を示した)。一方で、この〔ウイルス粒子の樹状細胞表面への〕繋留によって、N末端ドメイン(NTD)の先端の、ほぼ糖鎖を含まない大きな領域(5)の表面への出現が促進される。この領域は、ACE2の発現が少ない標的細胞(これは、肺上皮細胞や他の遠隔臓器細胞の特徴である)の脂質ラフト内のガングリオシドとウイルスとの結合を可能にすることでACE2との結合を促進し、増殖性感染を起こすことが示されている (https://www.journalofinfection.com/article/S0163-4453(21)00392-3/fulltext; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7128678/pdf/main.pdf) 。これらの標的細胞と密接することで、N末端ドメイン(NTD)のガングリオシド結合領域はスパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(S-RBD)の細胞融合促進性の再構成をひきおこすかもしれない。そうなれば、RBDをオープン型で安定化させ、増殖性トランス感染をおこすことができるようになる。このようにして、SARS-CoV-2ウイルス粒子を載せた遊走性樹状細胞は、(下気道に主に存在する)ACE2低発現の宿主標的細胞に対するトランス感染を促進するのである (https://www.nature.com/articles/s41586-021-03925-1.pdf)。
しかし、スパイクタンパク質のN型糖鎖部位と樹状細胞表面のC型レクチンの結合が強いため、保存された感染増強部位に結合して受容体結合ドメイン(RBD)をオープン型にする抗NTD抗体の感染増強効果は、著しく弱められている可能性が高い。ウイルスがACE2を認識し、ACE2の発現が低い宿主細胞に侵入するためには、受容体結合ドメイン(RBD)はオープンでなくてはならない(図5右にオープン型のRBDの模式図を示した)。オープン型の受容体結合ドメイン選択的なモノクローナルな中和抗体では樹状細胞表面に繋留された感染性SARS-CoV-2ウイルス粒子をもはや中和できないのは、このような理由による (https://www.nature.com/articles/s41586-021-03925-1.pdf)。
スパイクタンパク質が樹状細胞表面のC型レクチンに結合している場合、感染増強性の抗NTD抗体は、N末端ドメイン(NTD)の特異的スーパーサイト内のエピトープに結合しても、スパイクタンパク質の受容体結合ドメインをオープン型にすることはできないが、N末端ドメイン(NTD)の認識可能な部分だけでなく、認識できない部分にも相当な構造的再構成を誘導することは確実だろう (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7953435/pdf/main.pdf)。このような条件下では N末端ドメイン(NTD)のガングリオシド結合領域は、もはや、ACE2の発現が低い宿主細胞(肺や他臓器の上皮細胞の特徴である)に近接できない。したがって、受容体結合ドメイン(RBD)をオープン型で安定化して増殖性トランス感性を可能にする、スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(S-RBD)の細胞融合促進性の再構成を起こすことができない。
したがって、in vitroで観察された、感染増強性抗体による、C型レクチンで促進されるACE2依存性SARS-CoV-2のトランス感染の抑制(https://www.nature.com/articles/s41586-021- 03925-1.pdf) は、スパイクタンパク質の末端領域(NTD)が構造的再構成を起こした結果であると考えられる。
- トランス感染能力の低下はトランス細胞融合の減少につながるため、全身性/重症疾患の可能性が減る。(図3参照)
下気道の隣接する上皮細胞表面に発現するC型レクチン(特にSiglec-1; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7863934/; https://www.nature.com/articles/s41586-021-03925-1.pdf)とスパイクタンパク質表面のオリゴマンノース型N結合型糖鎖の結合は、肺上皮細胞間のトランス感染を促進するだけでなく、スパイクタンパク質を発現する感染細胞が隣接する非感染細胞に接着することも促進する。それに引き続き、RBDエピトープに結合する中和抗体が、感染細胞と非感染細胞間のトランス感染を促進し、スパイクタンパク質の細胞融合性再構成を可能にし、細胞融合を促進する(https://www.nature.com/articles/s41586-021-03925-1.pdf)。細胞融合性の抗体が、感染の後期において疾患の全身への拡大とウイルスの播種に寄与することは、すでに報告されている(https://www.nature.com/articles/s41586-021-03925-1.pdf)。対照的に、スパイクタンパク質の細胞融合性再構成は、N末端ドメイン(NTD)の抗原性を変化させやすいエピトープに対する非中和抗体によって阻害される可能性がある。実際に、保存されたスーパーサイトに対する抗NTD抗体(即ち、多反応性非中和抗体)が細胞間融合を阻害することが報告されている (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7962585/pdf/main.pdf)。
感染細胞と(ACE2発現の低い)非感染の標的細胞の間の、抗体依存性の細胞融合の増強のメカニズムは詳しく報告されていないが、細胞融合性の抗体の結合によってN末端ドメインの端のガングリオシド結合ドメインが表に現れるような立体構造の変化が生じ、スパイクタンパク質の細胞融合性の再構成が促進されると考えるのが妥当であると思われる。感染細胞と非感染細胞の細胞融合は、COVID-19疾患の重症度と関連すると報告されている合胞体形成を引き起こす
(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7164771/pdf/main.pdf; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7677597/pdf/main.pdf; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7128866/pdf/main.pdf)。
つまり、抗体依存性の細胞間融合が生じるかどうかは、抗体の中和能力ではなく、抗体が、スパイクタンパク質を発現した細胞と隣接した非感染細胞の細胞融合を促進するような、細胞融合性のスパイクタンパク質の再構成を引き起こしうるかどうかに依存している。例えばオミクロンのスパイクタンパク質には、スパイクタンパク質の切断を促進する変異が備わっているが、細胞融合性抗体が存在しない場合は、オミクロンが合胞体を形成する能力は弱い (https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.12.17.473248v2; https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.12.31.474653v1.full.pdf)。
抗NTD抗体の上記の効果は、(上気道の上皮細胞に代表される)ACE2の発現レベルが高い細胞に対する効果とは大きく異なったものである。上気道において抗NTD抗体が不均衡に〔多く〕スパイクタンパク質に結合すると、ACE2とウイルスの結合と侵入が強められ、接種者の抗体依存性感染増強の原因となると考えられる (https://www.journalofinfection.com/article/S0163-4453(21)00392-3/fulltext)。
以上のことから、現行のCOVID-19 ワクチンに由来する抗スパイク抗体に大きく抵抗するウイルス変異株(オミクロンなど)は、トランス感染を起こす力が低下し、以前の変異株と比較して、接種者にとって病原性が低くなっていると考えられる。言い換えるならば、ワクチンに由来する抗RBD抗体の中和力が低下したことによって、(間接的に)接種者に対するオミクロンの病原性は弱まったということだ。中和力の低下は、オミクロンがワクチンに抵抗性になったことに直接的に起因する。
既に述べた通り、受容体結合ドメイン(RBD)に対する抗体の中和力の低下は、スパイクタンパク質に不均衡に多くの感染増強性抗NTD抗体が結合することによると考えられる。遠隔臓器の標的細胞などのACE2低発現細胞における、C型レクチンによるトランス感染が、この結合によって抑制されることが示されている (https://www.nature.com/articles/s41586-021-03925- 1.pdf)。その結果、高度にワクチン接種をした集団は、現在、感染増強性/病原性抑制性抗体によって、オミクロンのスパイクタンパク質のN末端ドメイン(NTD)にかなりの免疫圧力をかけており、それによって、下気道を含む遠隔臓器へのSARS-CoV-2の拡大が防がれている。
まとめると、オミクロンは爆発的に広がったのと同時に、集団の大多数にとって比較的軽症であるが(このようなことは、通常、自己限定性ウイルス疾患の自然のパンデミックでは見られない!)、その理由は、多反応性非中和抗体がスパイクタンパク質のN末端ドメイン内の感染増強性部位に大規模に結合したことによると説明できる。この結論は、SARS-CoV-2が最終的にはウイルスのトランス感染を抑制する免疫圧力に打ち勝つ変異を自然選択するということを示唆する、極めて重要なものである。
本稿に書いている間にも、より多くの接種者が、より重症となった症例が、次々と報告されている。後述するように、私は、SARS-CoV-2は0型糖鎖付加部位を変異させることで、抗体を介したトランス感染の抑制に打ち勝つのではないかと考えている。受容体結合ドメイン(RBD)が、既に、より多くの糖鎖を持つようになっている可能性は否定できない。このような観点から、オミクロンのスパイクタンパク質の糖鎖プロファイル(既に発達しつつある?)を調査し、監視することは有益と考える。
オミクロン変異株に対する大規模なワクチン・ブレークスルー感染の発生は、なぜ、ウイルスの病原性に対する集団レベルの免疫圧力と、新規変異株に対する一過性の免疫防御に関連するのか
多反応性非中和抗体が高力価に存在すると、オミクロンに対するワクチン・ブレークスルー感染が引き起こされ、高度にワクチン接種した集団は、ウイルス感染性(即ち、スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン)ではなく、ウイルスの病原性(即ち、スパイクタンパク質のN末端ドメイン)に大きな免疫圧力を及ぼすようになる。多反応性非中和抗体を抗力価でもつ割合が増えるほど、ウイルス病原性に対する集団レベルの免疫圧力は大きくなる。一方で、ワクチン・ブレークスルー感染による防御効果は短期間で、新しい変異株に対する防御力はない。そのため、ワクチン・ブレークスルー感染が繰り返され、接種者はロングCOVID〔長期にわたるCOVID-19の罹患後症状/後遺症〕を起こしやすくなる可能性がある。
このことは以下を示唆する:1)高度にワクチン接種された集団は変異株を生み出しやすく、最終的には変異株はウイルス病原性に及ぼされている免疫圧力に打ち勝つだろう。2)ブレークスルー感染した接種者が、次の感染から守られる期間は短く、新たな変異株からは守られないため、ワクチン・ブレークスルー感染が繰り返される。これによって、接種者のロングCOVIDのリスクが劇的に高まるだろう。
以上に述べたことは非接種者には当てはまらない。非接種者が有症状のSARS-CoV-2疾患から回復した時には、自然免疫が向上しているだけでなく、——エピジェネティックなメカにズムによる自然免疫適応(訓練!)のおかげで——次にウイルスに曝露した時に、より効果的にウイルスを排除できるようになる。
SARS-CoV-2は、下気道(または遠隔臓器)では保存された感染増強性N末端ドメイン(NTD)に対する免疫圧力から逃れ、同時に、上気道ではこの感染増強部位に非中和抗体を結合させておく、ということができるのだろうか。
これは、次のように言い換えることもできる。接種者に対してはウイルスの病原性と感染性を同時に増強する一方で、ウイルスに対して免疫圧力を及ぼさない者、つまり、非接種者 (6)、が持つ免疫防御には影響しない変異というものはありうるのだろうか。つまりこれは、接種者の抗体依存性感染増強を促進する(例えば、ワクチンに由来する潜在的中和抗体に対する抵抗性をもたらす)と同時に、その同じ感染増強性抗体による重症疾患抑制効果を阻害する変異を示唆している。接種者のオミクロン感染では、高い感染性と疾患症状の緩和が本質的に共存していることを考えると、この条件は一見非常に難しいと思われる。なぜなら、そのような変異は、上気道ではウイルスを非中和抗体に結合させ、まさに同じ抗体が、下気道ではウイルスとの結合を弱めるものでなければならないからである。しかし、広範かつ長期にわたり、不十分な免疫圧力が及ぼされているため、ウイルスの進化能力は、スパイクタンパク質の受容体結合ドメインやN末端ドメインにアミノ酸変異を取り入れるだけにとどまらない可能性がある。
そのような一見「相いれない」効果を可能にできるものとして、唯一考えられるメカニズムは、アミノ酸配列の変化ではなく、糖鎖パターンの変化である。スパイクタンパク質はもともと糖タンパク質であるため、糖鎖が追加されうる領域は、今のところ、大部分糖鎖付加されていない領域であり、ウイルスが自由に動き回っているか、組織常在樹状細胞に繋留されているかによって抗NTD抗体の結合に異なる影響を与えると予想される。
受容体結合ドメイン(RBD)は、あまり糖鎖化されておらず、スパイクタンパク質の発現形式(遊離ウイルス粒子上に発現しているのか、樹状細胞に付着したウイルスやウイルス感染細胞に発現しているのか (7))や、抗S抗体の機能活性(中和抗体か非中和抗体か)によって異なる立体構造(オープン/アップ型かクローズ/ダウン型か)をとるため、糖鎖付加部位の候補の一つと考えられる (8) (https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34139176/; https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/acscentsci.0c01056; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7833242/pdf/main.pdf)。
しかし、現在のところ、オミクロンを含む主流の変異株で糖鎖付加部位に影響する変異は報告されていない (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7253482/)。これは、通常、糖鎖付加部位は選択圧力から免れており、現状のSARS-CoV-2の糖鎖プロファイルはSARS-CoV-2の感染性に必要かつ十分であることを示していると思われる。逆に言えば、例えば、さらにウイルスに免疫圧力がかかれば、オリゴマンノース型糖鎖の追加は免疫逃避戦略の一つとなりうるということだ。例えば、感染増強性抗NTD抗体はそのトランス感染能力をますます弱めれば、ウイルスはその生存が脅かされる。この状況は高度にワクチン接種を行った集団に当てはまるだろう。なぜなら、感染増強性抗NTD抗体を高力価でもつ割合が高いため、集団の大多数(即ち、接種者)の感染の経過が軽度となるだけでなく、ウイルス排出量自体が減少するからである(https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2022.01.28.22270044v1)。
本稿の最後に、エンベロープウイルス、特にSARS-CoV-2、の糖鎖に関する重要な参考文献を示した。以下に述べるSARS-CoV-2のスパイクタンパク質に発現する糖鎖の生物学的重要性と、糖鎖結合部位とC型レクチンの免疫病原性メカニズムにおける役割を理解する助けになるだろう。
受容体結合領域(RBD)のO型糖鎖化は実現可能だろうか。また、それはウイルス感染性の高さを損なうことなく、保存された感染増強性N末端領域(NTD)を覆い隠すための合理的な方法だろうか。
i. ウイルスタンパク質のN型およびO型糖鎖化は自然免疫を欺くだけでなく、ウイルスの感染力と病原性に劇的に影響するという数多くの証拠がある。(例えば細胞上の受容体とウイルスの接着や、受容体を介したウイルス侵入に関連する相互作用を修飾して感染力に影響する、など)。直接的な相互作用というより、立体構造の安定化に影響する場合もあるようだ (https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26867212/)。したがって、糖鎖は多くのウイルスにとって、選択的免疫圧力に打ち勝つための興味深い手段の一つであると考えられる。例えば、それまでは露出していた受容体結合ドメイン(RBD)が糖鎖化されると、その糖鎖の下にポリペプチドエピトープが立体的に隠されてしまい、抗RBD中和抗体が重要な結合部位を認識できず、そのために、SARS-CoV-2を中和できなくなるかもしれない (https://academic.oup.com/glycob/article/28/7/443/4951691; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7199903/)。
ウイルスは自分自身の糖鎖化のために、宿主細胞を利用するため、その糖鎖は通常、「自己」糖鎖である。それによって、エンベロープウイルスの重要なタンパク質が宿主の免疫反応から逃れることが可能となる(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20643940/; https://academic.oup.com/glycob/article/28/7/443/4951691; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7326345/)。より多くの糖鎖をもつことで、スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)の広範性中和エピトープが隠され、オミクロンよりも感染性の高い新しい変異株が、もたらされる可能性がある。
ii. 「クローズ(または、ダウン)」型の三量体スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)は、隣のポリペプチド鎖のN末端ドメイン(NTD) と密接して詰め込まれている(https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/acs.jpclett.0c01431; https://www.science.org/doi/pdf/10.1126/science.abb2507)。 したがって、糖鎖付加は受容体結合ドメイン(RBD)上に生じると考えられよう (9)。
iii. 受容体結合ドメイン(RBD)はもともと構造上の柔軟性が高いため (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7833242/, https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acscentsci.0c01056) 予想されるO型糖鎖付加部位に数多くの糖鎖変異を取り入れると同時に、受容体結合モチーフ(RBM)と宿主細胞のACE2受容体との結合を促進するためにオープン型を取る性質を維持することが可能であると考えられる。
なぜN型糖鎖化よりもO型糖鎖化の可能性の方が高いのだろうか。
SARS-CoV-2は既に融合部位に隣接する部位へのO型糖鎖の挿入を探っている。おそらくこれは、複数の中間宿主での免疫圧力に対抗するための戦略であろう (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7645279/)。 ウイルスタンパク質を高度にO型糖鎖化することで、特定の免疫優勢エピトープを「まとめて」覆い隠す、ということが既に報告されている (https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22114560/)。
N型糖鎖と異なり、O型糖鎖は、受容体結合ドメイン(RBD)の複数のアミノ酸(セリン、スレオにン、チロシン)に結合できるため、より多様となりうる (10) (https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.07.05.187344v1.full.pdf)。さらに、受容体結合ドメイン(RBD)のN末端に、2箇所のO型糖鎖結合予測部位が既に同定されている(詳しくは下記参照; https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32366695/)。
他のエンベロープウイルス(アルファヘルペスウイルス)では、類縁のウイルス(単純ヘルペス1型と2型)のO型糖鎖化の重要な決定要因は、配列相同性であり、相同な糖鎖結合部位は主に、ペプチド配列の相同性が非常に高い領域に存在することが報告されている(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27129252/)。したがって、変異ウイルスのパンデミックにおける選択的免疫圧力を一貫して克服し続けるには、受容体結合ドメイン(RBD)の中のよく保存された領域にO型糖鎖化が起こればよいだろう。そうなれば、糖鎖によってペプチドモチーフが安定的に覆い隠されることになるだろう。
以上により、一つまたは、複数のO型糖鎖部位を追加するようなわずかな変異だけで、抗RBD抗体と抗NTD抗体の両方からエピトープを隠すための、効果的な戦略が可能になると結論することができる。
どのようにして、上気道におけるウイルス感染性の増強と下気道での病原性の減弱が、O型糖鎖付加部位変異によって分離されるのか。
この見出しは、ワクチン接種された宿主の、ウイルスの高い感染性を許しつつも、重症化を防ぐという残された免疫防御戦略を、ウイルスがO型糖鎖付加によって攻略しうることをすでに示唆している。
中和抗体にほぼ耐性の高感染性のSARS-CoV-2変異株に繰り返し曝されている高度にワクチン接種された集団は、重症全身性疾患の条件であるウイルスのトランス感染性に対して(感染増強性の抗NTD抗体を介して)不十分な免疫圧力をかけることになる。この免疫圧力は今のところ、ウイルスがより病毒化することを防いでいる。接種者の感染増強性抗NTD抗体は、ウイルスを載せた遊走性樹状細胞と下気道や遠隔臓器の非感染宿主細胞との間のトランス感染を阻害し、したがって、より高いレベルの病毒性/病原性をウイルスが獲得することを防いでいるが、いずれウイルスはその免疫圧力を克服する表現型を選択する可能性が高い。ウイルスの高感染性を妨げることなく、N末端ドメイン(NTD)のスパイクタンパク質の細胞融合性の再構成を誘導する能力を回復できるような変異株であれば何でもよいだろう。この推論は、鶏の鳥インフルエンザ流行で観察された事実と一致する。高密度で飼育されている鶏集団で起こった高感染性ウイルスの急速な伝搬によって、より細胞融合性の高いヘマグルチニン(HA)タンパク質(コロナウイルスのスパイクタンパク質と同様の機能を持つ)が選択された。ヘマグルチニン(HA)タンパク質に多塩基性切断部位(SARS-CoV-2スパイクタンパク質にはすでに存在する!) を組み込んだ変異株は、HAの融合性再構成を促進し、その結果、ウイルスの、遠隔標的細胞をトランスに感染する能力を強化する。より細胞融合性のHA変異を選択することで、鳥インフルエンザウイルスは低病原性から高病原性変異株へと進化することができる (https://www.nature.com/articles/s41591-020-0820-9.pdf)。
抗NTD抗体が重症化を抑制しうるという複数の予備的な観察結果から考えると(https://www.nature.com/articles/s41586-021-03925-1.pdf)、受容体結合ドメイン(RBD)のO型糖鎖化によって、ウイルスは感染増強性抗NTD抗体の作用に対抗することができ、それによって、下気道にとどまらず、遠隔臓器でのトランス感染の抑制を解除できるのではないかと思われる。以下に説明するが、この推論は生物物理学的見地からも確実であろうと考えられる。
したがって、次に主流となって蔓延する変異株は、受容体結合ドメイン(RBD)がより高密度にO型糖鎖化されており、接種者の潜在的中和抗S抗体と潜在的トランス感染抑制性抗S抗体の両方に抵抗性であろう。この新しい「超変異株」の「ファミリー」を本稿では、以下、「Newco」変異株と呼ぶ。「Newco」は増強された感染性(抗体依存性感染増強)を病毒性/病原性の増強につなげる能力があり(重症疾患増強)、急速にオミクロンを駆逐して爆発的に世界中に広がる可能性を持つだろう。
どのようにして、O型糖鎖化によって、Newco変異株は、オミクロンによるブレークスルー感染や、更新された(オミクロン型)スパイクタンパク質ベースのCOVID-19ワクチンの再接種によって誘導された潜在的中和抗体に対して完全に耐性となるのか。
O型糖鎖化によって、スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)の様々なエピトープに対する中和抗体への抵抗性も促進されることは重要である。受容体結合ドメイン(RBD)のN末端に挿入されたO型糖鎖部位は、まずは、オミクロンがこれらの抗体に抵抗するために取り入れた変異に代わるものだろうが、最終的には可変性の受容体結合ドメイン(RBD)全体の免疫認識を妨げるものとなるだろう。これにより、新しいO型糖鎖変異株に対するエピトープの自然選択の制約は消滅する。受容体結合ドメイン(RBD)自身に結合した糖鎖が、「クローズ」型でも「オープン」型でも、ACE2と直接相互作用しない領域を等しく遮蔽/保護することが示されていることから、O型糖鎖による可変性RBDエピトープの遮蔽は受容体結合ドメイン(RBD)「クローズ」型の状態にあるか「オープン」型にあるかに依存しないだろう (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7523240/)。中和力の高いCOVID-19回復者血清から、SARS-CoV-2がin vitroで完全に逃避するメカニズムには、スパイクタンパク質のN末端ドメイン(NTD)への新たな糖鎖結合配列(sequon)の挿入が含まれたことから、スパイクタンパク質への糖鎖の追加はその下のポリペプチドエピトープを効果的に覆い隠すことができると知られている(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7781313/)。
その一方で、スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)がO型糖鎖化されても、受容体結合ドメイン(RBD)がオープン型にある時の、受容体結合モチーフ(RBM)とACE2受容体との相互作用が妨げられることはないだろう。(感染増強性抗体がN末端ドメイン(NTD)の保存された部位に結合した結果、受容体結合ドメイン(RBD)はオープン型となる)。これが当てはまるのは、SARS-CoV-2ウイルス粒子が上気道で(樹状細胞に捕捉されずに)自由に動き回っている場合である。つまり、スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)のO型糖鎖化は、上気道の上皮細胞へのウイルス侵入の抗体依存性増強と完全に両立するのだ(図5右を参照)。受容体結合ドメイン(RBD)の可変抗原領域が遮蔽されることで、受容体結合ドメイン(RBD)への潜在的な広域中和抗体(ワクチン・ブレークスルー感染や更新された(オミクロン)スパイクベースのワクチンの再接種による)の結合が阻害される一方で、N末端ドメイン(NTD)に対する既存の感染増強性抗体(「多反応性非中和抗体」)が、より強毒な(即ち、より糖鎖化された)SARS-CoV-2ウイルスの感染力を増強させるということだ。
したがって、受容体結合ドメイン(RBD)のN末端におけるO型糖鎖化の亢進は、スパイクタンパク質の中和エピトープに対する集団レベルの免疫圧力の結果として起こるものではないが(上記参照)、それにも関わらず、Newco変異株に、それまでのブレークスルー感染や更新されたCOVID-19ワクチン(11)の再接種によって誘導される潜在的広範性中和抗体に対する抵抗力をもたらすと結論づけられる。
まとめると、O型糖鎖化されたNewco変異株は、接種者集団がN末端ドメイン(NTD)の保存された「感染増強性」部位におよぼす選択的免疫圧力に対抗するために理想的に装備されており、接種者に多反応性非中和抗体依存性重症COVID-19疾患増強を起こし、オミクロンによるブレークスルー感染やあらゆる更新されたCOVID-19ワクチンによる再接種によって誘導された潜在的中和抗体に完全に耐性であると考えられる。
高度にワクチン接種された集団に対して想定される、Newco変異株の免疫病原性に対するO型糖鎖の影響の概要を図4にまとめ、図6にはさらに詳細に示した。
Newco変異株はO型糖鎖の増加によって、どのようにして接種者に抗体依存性感染増強とウイルス病原性の増強を共存させるのだろうか
N末端ドメイン(NTD)の感染増強性部位と感染増強部位特異的抗NTD抗体との結合は、遊走性樹状細胞に繋留されてクローズ型に拘束されたウイルス粒子によるトランス感染を阻むと考えられるため、感染増強性抗NTD抗体と対応するエピトープとの結合を弱めて「トランス感染性」を回復するために、糖鎖付加戦略を用いることは、ウイルスにとって重要であろう。しかし、糖鎖変異によって感染増強部位そのものの構造が影響されてはいけない。そうなれば、多反応性非中和抗体依存性ワクチン・ブレークスルー感染に必須の、受容体結合ドメイン(RBD)によるACE2受容体の認識を促進する、抗NTD抗体による遊離ウイルス粒子のオープン型への誘導が妨げられてしまうためである。
この挑戦は、N末端ドメイン(NTD)の立体構造を変えることなく、NTD上の特異的感染増強性エピトープを隠すことができる、スパイクタンパク質のもう一つの保存された領域に糖鎖を拡大することで達成される可能性がある。受容体結合ドメイン(RBD)がクローズ型にある時(ウイルスが樹状細胞上に吸着している場合など)には、受容体結合ドメイン(RBD)はN末端ドメイン(NTD)と密接していることが報告されている(https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/acs.jpclett.0c01431)。したがって、受容体結合ドメイン(RBD)にさらに糖鎖が追加されると推測される。ウイルスが樹状細胞に繋留した場合には受容体結合ドメイン(RBD)はクローズ型であるため、受容体結合ドメイン(RBD)の部位特異的糖鎖化は、N末端ドメイン(NTD)内の特異的感染増強性領域を隠し、感染増強性/病原性抑制性抗体が結合することを妨げ、立体構造の変化を促す可能性がある。ここまでに述べてきたように、感染増強性/病原性抑制性抗体のN末端ドメイン(NTD)への結合は、N末端ドメイン(NTD)のガングリオシド結合ドメインによって促進されるスパイクタンパク質の細胞融合性の再構成を妨げる(図5左)。このため、〔受容体結合ドメイン(RBD)の部位特異的糖鎖化によって〕遊走性樹状細胞による遠隔組織細胞のトランス感染の抑制が妨げられ、感染が全身に広がるが、その一方で、引き続き、感染増強性抗体は遊離ウイルス粒子に結合して多反応性非中和抗体依存性ワクチン・ブレークスルー感染を起こすことができる(以下のセクション「O結合型糖鎖付加はCOVID-19ワクチン耐性ももたらすことができるのか」を参照。〔当該セクションが見当たりませんでした〕)。
しかし、受容体結合モチーフ(RBM)とACE2との相互作用におよぼす立体構造上の影響を最小限に抑えるために、糖鎖は受容体結合モチーフ(RBM)からできるだけ遠い位置に追加されなければならない。受容体結合ドメイン(RBD)のN末端に二つのO型糖鎖結合予測部位があると報告されていることは興味深い。一つは323番目のスレオニン〔Thr323〕であり、もう一つは325番のセリン〔Ser323〕である。この部位に予測される糖鎖の機能はまだ明らかになっていない。この領域のO-結合型グリコシル化は微量にしか検出されなかったことから、本来の構造においてはこの領域の糖鎖は最小限であると示唆されている (https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32366695/)。そのため、隣接する二つのN型糖鎖(N331とN343)とともに、SARS-CoV-2のこれらのO結合型糖鎖部位には、ウイルスの排出の減少がウイルスのライフサイクルを脅かす場合に、病原性能力を発揮するのに十分な柔軟性があると考えられはしないだろうか(例えば、活性化した細胞傷害性T細胞によってSARS-CoV-2感染細胞の除去が促進された場合などhttps://www.voiceforscienceandsolidarity.org/scientific-blog/when-anti-s-pike-antibodies-against- omicron-can-no-longer-sustain-the-narrative-why-not-resort-to-t-cells 〔和訳〕)。
この能力はO型糖鎖結合部位の糖鎖占有率を上げることで容易に強めることができる。「トランス感染」強く阻害された場合、予測部位のO型糖鎖化の度合は、感染増強性抗NTD抗体による免疫圧力に応じて得られる競争的適応上の優位性に基づく自然選択によって、次第に増加する可能性がある。
受容体結合ドメイン(RBD)のN末端に追加されたO型糖鎖は、受容体結合ドメイン(RBD)がクローズ型にある場合に、感染増強性抗体の結合部位を隠す (12)。したがって、感染増強性エピトープを含む領域に密接に接触していると考えられる。このことは、受容体結合ドメイン(RBD)への重要な糖鎖の追加はN末端ドメイン(NTD)の構造に影響をおよぼす可能性を示している。
N末端ドメイン(NTD)のN型糖鎖の変化は受容体結合ドメイン(RBD)立体構造の動態に影響することが報告されている (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7523240/pdf/oc0c01056.pdf)。同様に、より高密度に糖鎖化された受容体結合ドメイン(RBD)は、レクチンを介したウイルスと樹状細胞の結合によって受容体結合ドメイン(RBD)がクローズ型に安定化されている場合に、N末端ドメイン(NTD)に構造変化を引き起こすと考えられるだろう。N末端ドメイン(NTD)はN型糖鎖を介して受容体結合ドメイン(RBD)の立体構造の動態を修飾することが知られているため (13) (https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/acs.jpclett.0c01431; https://www.science.org/doi/pdf/10.1126/science.abb2507)、 N末端ドメイン(NTD)の構造変化によっては、受容体結合ドメイン(RBD)がオープン型へと変化することが妨げられ。受容体結合ドメイン(RBD)の接触面(即ち受容体結合モチーフ)とACE2受容体と相互作用する機会が減少するという危険性がある。糖鎖の密度が高くなればなるほど、最適な細胞融合性を引き起こすN末端ドメイン(NTD)構造と両立しなくなる可能性がある。
糖鎖化によって引き起こされるN末端ドメイン(NTD)の構造変化は、樹状細胞に繋留したウイルスのトランス感染を阻害する可能性もあるため、ウイルスがN末端ドメイン(NTD)の可変領域のアミノ酸変異を選択することで、N末端ドメイン(NTD)がスパイクタンパク質の細胞融合性の再構成を誘導する能力を補い、トランス感染を可能にすることも合理的に考えられる。受容体結合ドメイン(RBD)の立体構造の状態は感染増強性抗体によって認識されるエピトープ周辺の領域に大きく依存することが報告されているため、これは完全に実現可能なはずである(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8142859/pdf/main.pdf)。
したがって、N末端ドメイン(NTD)内の単一の保存された感染増強性部位に対する不十分な免疫圧力は、最終的に、感染増強部位の周囲に位置するN末端ドメイン(NTD)内の可変性抗原部位に対する立体的圧力に変換されると考えられるだろう。これによって、N末端ドメイン(NTD)の高度に可変性の領域に、いくつかのアミノ酸変異の選択が進み、樹状細胞に載ったウイルス粒子が遠隔組織の標的細胞に接触した時に、スパイクタンパク質に細胞融合性再構成を起こすN末端ドメイン(NTD)の能力が、受容体結合ドメイン(RBD)のO型糖鎖の増加によって低下することが防がれると考えられる。
以下に要約する(図5左も参照):
スパイクタンパク質のN末端ドメイン(NTD)の保存された感染増強性部位におよぼされる抗体による免疫圧力は、スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)にO型糖鎖化を促進する自然選択を促す。
スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD) のO型糖鎖化の促進による立体的圧力は、スパイクタンパク質のN末端ドメイン(NTD)の可変領域のアミノ酸変異の自然選択を引き起こす。
スパイクタンパク質のN末端ドメイン(NTD)の保存された感染増強性部位内のエピトープにおよぼされる抗体による免疫圧力は、最終的に、感染増強性抗体によって認識される保存されたエピトープ周辺の可変性エピトープに対する立体的圧力に変換される。
選択的アミノ酸変異により、ウイルスは、宿主の遠隔組織細胞にトランス感染する(即ち、全身性疾患を引き起こす)能力に対しておよぼされる集団レベルの免疫圧力を克服することができるだろう。
N末端ドメイン(NTD)の進化的可変性は、スパイクタンパク質の他の部分よりも高い(https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmicb.2020.02112/full) 。そのため、保存された感染増強性エピトープ周辺にアミノ酸変異を組み込む余裕がまだ相当にあり、それによって、N末端ドメイン(NTD)がスパイクタンパク質の細胞融合性再構成を引き起こす能力に対し、O型糖鎖化がN末端ドメイン(NTD)の構造におよぼす悪影響に打ち勝つことが期待できる(すなわち、下気道や、おそらく他の遠隔臓器レベルにおける、「トランス感染性」が復帰する)。
以上すべてに基づくと、ウイルスの中和能力が低いために上気道で起こる抗体依存性感染増強によって、ウイルス侵入の入り口である粘膜で樹上細胞に捕捉され、閉じこめられる感染性ウイルス粒子の量が劇的に増加し、感染性ウイルスを遠隔臓器に運ぶリザーバーが劇的に増加し、トランス感染性に対するバリアが解除されるや、下気道で重症COVID-19疾患を引き起こすと考えられる。このバリアを取り除くのは受容体結合ドメイン(RBD) のO型糖鎖化ではないだろうか。N末端ドメイン(NTD)の、感染増強性領域に隣接する(高度に)可変性な領域に、いくつかのアミノ酸変異を追加することは、O型糖鎖化されたNewco変異株に最適なトランス感染性を回復させ、ウイルス病原性を増強するエレガントで効果的な戦略であると考えられる。
もちろん、受容体結合ドメイン(RBD) のO型糖鎖化密度の増加によって、接種者のトランス感染が増強される可能性もあれば(つまり、樹状細胞表面のC型レクチンによってリクルートされたウイルスのN型糖鎖のクラスターに加わることによって、ウイルスの上気道常在性樹状細胞への接着が強化される)、遠隔組織におけるウイルス感染細胞と非感染細胞間のトランス細胞融合が増強される(つまり、SARS-CoV-2感染細胞表面細胞に発現したスパイクタンパク質上のオリゴマンノース化糖鎖と隣接する非感染細胞上の糖鎖結合分子との相互作用を促進する)可能性さえある。したがって、受容体結合ドメイン(RBD) の部位特異的O型糖鎖化が(感染増強性/病原性抑制性抗体との結合を阻害することで)ウイルスのトランス感染とトランス細胞融合を回復させるだけでなく、強化し、COVID-19ワクチン接種率の高い集団における、重症/全身性COVID-19疾患の発生を促進する可能性さえあると考えられる。
したがって、O型糖鎖がより豊富であれば、SARS-CoV-2は接種者に対して病毒性が非常に高くなり、重症の全身性疾患に非常に罹りやすくなると考えることは妥当である。
部位特異的O型糖鎖化はウイルスにどのような表現型上の特徴をもたらすだろうか。
ウイルス粒子による)感染を「中和」する抗RBD抗体から守ることができるだろう。こうして、接種者に対するウイルスの病原性と感染性の両方が増強され、彼らが重症COVID-19疾患増強を起こす危険性が増すのだ。
私は、スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)のN末端のほんの数個のO型糖鎖部位の糖鎖占有率が上がるだけで、樹状細胞に繋留したウイルス粒子が、多反応性非中和抗体によってスパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)におよぼされている集団レベルの免疫圧力に打ち勝つのには十分であり、ウイルスはワクチンによって誘導された中和抗体に対して、(オミクロンによって獲得された中和抗体耐性のレベルに比較して)さらに高度に耐性となると予想している。
結論として、ワクチンによって誘導された潜在的ウイルス中和抗体から遮蔽することによって、ウイルス感染性を増強するという要求を満たすだけでなく、潜在的病原性中和抗体から遮蔽する(すなわち、これらの抗体とスパイクタンパク質のN末端ドメイン(NTD)の保存された抗原エピトープとの結合を妨げる)ことで、トランス感染とO型糖鎖化されたスパイクタンパク質の細胞融合性再構成を促進することができるという点において、受容体結合ドメイン(RBD)をO型糖鎖化することほどふさわしいものはないと考えられる。したがって、Newco変異株に曝された接種者は、抗体依存性重症COVID-19疾患増強(AIESD)のリスクが非常に高くなるだろう。
言い変えれば、受容体結合ドメイン(RBD)のN末端のO型糖鎖化は、ACE2依存性の、抗NTD抗体によるウイルス-細胞融合を促進して、接種者に、より多くの抗体依存性感染増強(ADEI)を引き起こす可能性が高い。それによって最終的に、より多くの抗体依存性重症COVID-19疾患増強(AIESD)を、集団の接種を受けた部分に引き起こすことになるだろう。これは、ウイルス感染性の増強によってワクチン・ブレークスルー感染が引き起こされるためである。それによって、ACE2依存性、かつ、抗体依存性の細胞間融合を引き起こす新しい変異株の出現が促進される可能性が高い。
以上は、ウイルスの糖鎖化にはウイルスの中和性と病原性の双方を調節する能力があり、ウイルス感染を防いだり、ウイルス伝搬を阻害したりしない方法で免疫圧力をおよぼす抗体に対して耐性を得ることができるという、文献上の圧倒的な証拠と完全に一致している(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29579213/;https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7781313/)。
O型糖鎖化されたNewco変異体は高度にワクチン接種された集団でどのように進化するか。また、個人の健康や公衆衛生にどのような影響をもたらすか
ここまでに述べた進化のダイナミクスから、N末端ドメイン(NTD)の保存された感染増強性部位に対する集団レベルの免疫圧力の増加によって、より豊富に糖鎖化され、したがって、より病原性の高い変異株が自然選択されることは明白になったと思われる。O型糖鎖結合部位の変異と、それに伴って必要となるN末端ドメイン(NTD)の可変領域のアミノ酸変異は、接種者集団がN末端ドメイン(NTD)の保存された感染増強性部位にかける、着実に増加する免疫圧力に追いつかなければならないだろうが、自然選択される変異株の病原性も着実に増加するだろう。高度にワクチン接種された集団では、オミクロンに勝る競争的適応優位性を持つ、より病原性の強いNewco変異株は、さらに高度なトランス感染性/病原性を持つ、したがって、より高度な適応優位性を持つ別のNewco変異株に次々に置き換わるだろう。より病原性の強いNewco変異株が新たに選択される度に、重症疾患数と死亡数は急速に増加するだろう。その一方で、それぞれの変異株が適応する間隔はますます短くなるだろう(図7)。このことは、ウイルスの病原性(すなわち、ウイルスのトランス感染性)に対する集団レベルの免疫圧力の増加とともに、重症COVID-19疾患の数は急速に増加することを示唆している。病原性抑制性抗体による集団レベルの免疫圧力が低下しない限り、このウイルスの劇的な進化が止まることはないと論理的に想定できる。成り行きを自然に任せるならば、このようなことが起こるのは、接種者集団に対するウイルスの病原性が強まって接種者集団が縮小する場合のみである。高度にCOVID-19ワクチン接種を行った国では集団レベルの免疫圧力が一定の閾値を超えると、症例が急速に増加し、ついには、重症者と死亡の大波が押し寄せることになるだろう。
個人の健康という観点から考えれば、より病毒性の強いNewcoが拡大し、ついに強毒Newcoに達するにしたがって、接種者が抗体依存性重症COVID-19疾患増強を起こしやすくなることは明らかである。
より病原性の強いSARS-CoV-2変異株が主流になるまでどれくらいの時間がかかるだろうか。
オミクロンの子孫変異株はまだ固有の感染増強能力を向上させる過程にあるようであり、受容体結合ドメイン(RBD)の適切なO型糖鎖変異の組み合わせと、N末端ドメイン(NTD)内の適切なアミノ酸変異の選択には時間がかかる可能性があるため、最初のNewcoが出現するまでには「もうしばらく」時間が必要であろう。しかし、ウイルスが急速に病原性と感染性の両方を急速に増す進化を進めていると思わせる複数の異なる証拠がある。つまり、最初のより病毒性の変異株が適応の谷を超えてオミクロンに置き換わり始めるまでの猶予期間はかなり短い(執筆時点から半年以内)と私は考えている。
オミクロンが急速に、より病原性の高い変異株に進化するのはなぜか。
第一に、SARS-CoV-2には(受容体結合ドメイン(RBD)の大部分を使わないとしても)O型糖鎖を追加する余地がふんだんにあると考えられる。さらに、受容体結合ドメイン(RBD)の糖鎖密度が上がったとしても、当初のRBDの糖鎖化によってウイルスのトランス感染性に対しておよぼされる立体的圧力に対応するために必要となる、N末端ドメイン(NTD)の高度に可変性の領域のアミノ酸変異はわずかでよいと考えられる。しかし、受容体結合ドメイン(RBD)の糖鎖化を可能にするために必要なアミノ酸変異の数が増えたとしても、いまそれほど問題はないように思われる。なぜなら、組替えや、種内伝搬だけでなく種間伝搬も、頻繁に起こるようになった結果、変異がかなり急速に蓄積するようになってきたためである。種間の伝搬性は受容体結合モチーフ(RBM)(すなわち、ACE2受容体にSARS-CoV-2が効率的に結合するために必須の、限られた数のアミノ酸からなるモチーフ)がどの程度保存されているかによって決定されるようであるため、SARS-CoV-2(オミクロンを含む)は複数の異なる動物種に感染することができる(https://bmcresnotes.biomedcentral.com/track/pdf/10.1186/s13104-020-05242-8.pdf)。 これは、既に、動物から人への感染事象の数が、より頻繁に起こっていることを示唆する(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0168170221001805)。したがって、オミクロンは、新たな、さらに多くのSARS-CoV-2の保菌動物を生み出している可能性が非常に高い。しかし、高力価のワクチン由来の非中和抗体をもつ割合が非常に高いため、接種者が感染感受性と伝搬を持続させており、ヒトの接種者集団がウイルスの重要なリザーバーとしての役割をますます高めている (https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2022.01.28.22270044v1)。言い換えるなら、ウイルスには複製し、伝搬するチャンスがふんだんにあり、したがって、変異し、組替えを起こすチャンスもふんだんにあるということだ。このため、ウイルスは変異を選択出来る武器庫をますます大きくしている。
さらに、N末端ドメイン(NTD)も受容体結合ドメイン(RBD)も高度な立体構造上の可塑性をもつ(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7962585/;https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7953435/;https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/acscentsci.0c01056)ため、受容体結合ドメイン(RBD)のO型糖鎖変異とN末端ドメイン(NTD)のアミノ酸変異のいくつかの異なる組み合わせが可能であり、それら全てが感染性の増強と病原性の強化を同時に求める自然選択に適合している可能性が高い。Newco変異株が求める変異の選択基準はそれほど厳しいものではない。O型糖鎖化された受容体結合ドメイン(RBD)がクローズ型に安定化された時に引き起こされるN末端ドメイン(NTD)の構造変化は、いくつかの異なるアミノ酸変異やそれらの組み合わせによって補われる可能性が高いためである。最後に、オミクロンによって選択された重要なアミノ酸変異を保存するための受容体結合ドメイン(RBD)に対する選択圧力は、受容体結合ドメイン(RBD)がO型糖鎖化されるにつれて弱まり、これらのアミノ酸がもはやNewco変異株のライフサイクルにとって必須でなくなれば、完全に消失する可能性がある。つまり、Newco変異株はスパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)やN末端ドメイン(NTD)に、かなりの多様な抗原性を持つ可能性があるということだ。
以上の考察にもとづけば、適切なNeuco変異株の自然選択は急速に起こるだろうということと、その選択は世界中の高度にワクチン接種を行った集団で完全に独立して起こるだろう、ということが予測される。抗原性/ペプチド骨格が異なっていても(出現する地理的な場所によってかなり異なる可能性がある)、選択されるNewco変異株は類似したO型糖鎖パターンを示し、現在オミクロン亜株にさらされている高接種集団におなじように広がるだろう。Newco変異株の自然選択は、もはや、抗原性を変えやすいスパイクタンパク質関連ドメインに対する集団レベルの免疫圧力によらないからである。その結果、そのようなドメインの変化は、感染増強性/病原性抑制性抗NTD抗体とN末端ドメイン(NTD)の保存された抗原部位との結合に影響せず、保存された受容体結合モチーフ(RBM)とACE2の結合にも影響しないだろう。
その一方で、共感染や動物種内での進化の結果、組替えや遺伝子再集合が活発となり、はいくつかの新しい変異株が発生する可能性がある。新しい変異株は絶えず同定されており、そのなかには非常に異なる変異株の特徴を共有するものもあるが(デルタクロン、コンビクロンなど)、上記の選択基準を満たさない限り、そのなかのどれも、新たな、高感染性のオミクロン亜株に打ち勝つことはないだろう。
結論として、私は、感染増強性/病原性抑制性抗NTD抗体による集団レベルの免疫圧力が優勢であるという現在の状況においては、高度にワクチン接種された集団に、免疫逃避性をますます高めた変異株が、より急速に広がり、接種者に高い感染性と、より強い病原性をもたらす可能性が劇的に増加していると予測している。
O型糖鎖化されたNewco変異株が健康な非接種者では無症状か軽症感染にしかならない理由
いくつかのエンベロープウイルス(コロナウイルスを含む)は、宿主細胞によって合成された糖鎖(例えば、シアル酸)で覆われており、この糖鎖は自然免疫細胞表面に発現しているシアル酸結合免疫グロブリン様レクチン(Siglec)によって感知され、Siglecはこのシグナル伝達を利用して免疫炎症メディエーター(例えば、サイトカイン)を産生する。スパイクタンパク質をはじめとするウイルス糖タンパク質上の糖鎖は、宿主の糖鎖合成装置によって合成されたものであり、したがって「自己」糖鎖である。このような自己由来のウイルス糖鎖は、"非自己 "であるウイルスペプチドを覆い隠し、宿主の免疫反応から隠れるエレガントな戦略としてウイルスによって利用されている。スパイクタンパク質は、相当量の「変化した」または「自己類似」糖鎖パターンを含んでいることに注意することは重要である。スパイクタンパク質の糖鎖のプロセシングは、例えば、相当量のオリゴマンノース型糖鎖を含む複数のスパイクタンパク質関連糖鎖化部位の存在によって示されるように(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7199903/)、宿主糖タンパク質のプロセシングとは大きく異なる可能性がある。同様に、「自己類似」糖鎖パターンはB1a由来の自然免疫系のエフェクター細胞のB細胞受容体(BCR)によって認識される。したがって、その表面に糖タンパク質を持つSARS-CoV-2や他のエンベロープウイルスがB1a由来の自然免疫系細胞によって認識されるのは驚くべきことではない(https://www.nature.com/articles/s41435-020-0105-9.pdf)。これらの細胞が活性化すると、多反応性の自然抗体(natural antibodyとされているが、私はinnate antibodyの方を好む)が産生される。自然抗体は比較的低親和性で、主に多価のIgMアイソタイプである。自然抗体は、NK細胞による、ウイルス表面のエンベロープに自己類似糖鎖パターンを示すウィルス粒子の殺傷を促進し、抗原提示細胞の抗原取込みを促進する。この働きによってウイルス感染細胞の除去が促進され、増殖性感染からの回復が早められると考えられる。環境曝露の変化に対する自然免疫の適応のエピジェネティックなメカニズムや、B細胞受容体(BCR)がB1a細胞の発達に果たす役割を考えれば(https://www.nature.com/articles/s41577-020-0285-6.pdf; https://www.jimmunol.org/content/204/1_Supplement/241.3; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5943138/pdf/nihms934113.pdf) 、自然免疫系細胞であるB1a細胞がウイルス曝露によって活性化した後、教育されリプログラムされ、その機能を向上させる(「訓練」される)ことは確実であろう。自然免疫細胞の訓練によって、流行するウイルス変異株に再曝露した場合の、変化した自己類似糖鎖パターンの認識が促進される。
追加されるO型糖鎖は宿主の糖鎖化メカニズムを利用して産生されることは同じであるため、スパイクタンパク質表面の糖鎖パターン全体の認識効率はO型糖鎖部位変異が追加されても変わらないであろう。それどころか、上述のスパイクタンパク質上の自己由来糖鎖パターンの変化は、自己認識性自然免疫細胞の活性化と持続性の機能リプログラミングを促進し、関連する多価IgMの新しいO型糖鎖化変異株に対する親和性を上げると私は考えている。そのためSARS-CoV-2による増殖性感染からの回復が早まり、同時に、これらの抗体〔自然抗体〕が、獲得される可能性のある感染増強性スパイクタンパク質特異抗体によって打ち負かされてしまうことが避けられる。
したがって、自然免疫の訓練は、その後のコロナウイルスによる増殖性感染を阻止すると考えられる。最近の英国健康安全局(UK Health Security Agency, UKHSA)の公開データによれば、ワクチンの有効性はほぼ全ての年齢層で強く否定されたことも、これを支持する(https://www.gov.uk/government/publications/covid-19-vaccine-weekly-surveillance-reports)。
N末端ドメイン(NTD)の感染増強性部位にある抗体エピトープはSARS-CoV-2の間では保存されているが、コロナウイルス一般ではそうではない(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0092867421006620)。したがって、抗NTD抗体による感染増強は、別のタイプのコロナウイルスに既感染していても発生しない。
また、多価性の自然抗体は異なるタイプのコロナウイルスを含む様々な糖鎖エンベロープウイルスに反応すると考えられている。
Newco感染は非接種者の大多数にとっては完全に無症状となる可能性がある一方、非接種であったとしても、自然免疫系が弱っていたり、十分なエピジェネティックな「訓練」がされていなければ、より病原性の高い変異株に感受性となってしまう可能性がある。
結論:非接種者の大半にとって、自然免疫のエフェクター細胞の能力の訓練のために支払わなければならない代償は、せいぜい、軽度から中程度の上気道症状であろう。それどころか、訓練された非接種者の感染上皮細胞は、感染の初期段階で排除されてしまうようになると考えられる。訓練された細胞性自然免疫は増殖性感染を緩和し、訓練されたIgM分泌自然免疫B1a細胞がCOVID-19疾患を強く抑制できるようになる。つまり、訓練された細胞性自然免疫と自然抗体による免疫の共同によって非接種者は、たとえ多反応性非中和抗体を持っていたとしても、COVID-19疾患から守られ、そしておそらく、増殖性感染からも守られる可能性が高い。
SARS-CoV-2増殖性感染やCOVID-19疾患が弱まっていくのは、非接種者のみである。それは、非接種者の防御的自然免疫能力はワクチンによる免疫プライミングによって損なわれないためである。これだけでもCOVID-19ワクチンの有効性が——すでに、ネガティブとなっているが——全年齢に渡って、さらに低下することは明らかであろう (14)。そして、非接種者はNewco変異株が新たに発生しても増殖性感染を起こす可能性は低い。したがって、「訓練された」非接種者は抗体依存性重症COVID-19疾患にかかる可能性は低い。
自然からの教訓
多くのコロナウイルスと脊椎動物は、宿主とウイルスの利害の健全なバランスを保ちながら、共に進化し、永遠に変わらない、とは言わないが、長期にわたる平衡状態を保ってきた。コロナウイルスは、宿主であるヒトと持続的な関係を築くように、恒常性を保つための進化的戦略を発達させてきた。集団ワクチン接種は宿主のウイルスの感染と拡散を制御する能力を大きく阻害した。集団ワクチン接種は、コロナウイルスに対する、宿主の最も強力(すなわち殺菌免疫〔ウイルス排除免疫〕)な自然な免疫防御ラインを、ワクチンによって誘導される免疫反応に移行させてしまうからである。ワクチンによって誘導される免疫反応は——多くの場合——パンデミック時に導入された場合には、ウイルスを排除する力はなく、したがって、集団免疫を構築せず、ウイルスを制御できない。そのため、健康なヒト集団におけるウイルスの持続性を保証する、バランスの取れたウイルス宿主間の生態系を、ウイルスと宿主の相互作用によって確立することができない。急性の自己限定性感染症のパンデミックにおいては、集団免疫が、パンデミックを終わらせエンデミックに変えるための絶対条件である。しかし、宿主集団がウイルスに対して大規模に非殺菌性の免疫攻撃を仕掛け続ける限り、ウイルスと宿主に、この健全な平衡状態を達成することはできない。殺菌免疫をもたらさない〔ウイルスを排除できない〕ワクチンの集団接種は、ウイルスの免疫逃避を引き起こす。
免疫逃避ウイルス変異株のパンデミックを制御するために集団が取りうる戦略はただ一つ、自然免疫の訓練である。訓練された自然免疫はウイルス負荷の大部分を排除することができるからである。
自然免疫だけではコロナウイルス感染の阻止が難しい場合には、ウイルスの排除に短寿命のMHC非拘束性細胞障害性CD8陽性T 細胞 (15)の助けを借りることが必要となり、抗スパイク抗体が誘導され、次にウイルス曝露したとき時には、その抗体が迅速に増加して自然免疫を補助し、ウイルス排除に寄与する。自然なパンデミックにおいては、こうして誘導される抗体は、実際に、次の変異株に(抗原「シフト」が起きるなどして、以前のウイルスと非常に異なっていない限り)、十分な中和力を持つ。このように、コロナウイルスに対する殺菌免疫〔ウイルス排除免疫〕は自然免疫エフェクター細胞(ナチュラルキラー細胞と多反応性IgM産生B1a細胞)を基本とし、そこに、再曝露で呼び戻された記憶B細胞によって産生される抗原特異抗体が加わって与えられるものなのである。
進化するウイルスに直接曝露した結果として得られる、自然免疫系の「訓練」とスパイク特異的中和抗体の協同によって、宿主のウイルス排除免疫能力が総体として強化される。集団レベルにおいて、この能力が十分に成長したときに、自然なパンデミックは、エンデミックの状態に移行する。ウイルス伝搬率が非常に低いことがエンデミック状態の特徴である。一旦エンデミックの状態となれば、感染圧力が増大して、集団の一部の免疫防御を破るまでにならない限りは、ウイルスは制御された状態となる(このような感染圧力は無症状での種内、または種間感染によって生じる)。こうした事態が発生した場合には、——集団のごく一部に影響するだけかもしれないが——エンデミックにおいて突発的流行(アウトブレイク)が発生する可能性がある。
集団免疫はその根底に強い自然免疫を必要とすることと、関連する自然免疫エフェクター細胞の機能的能力が接種者では(たとえ、ワクチンがもはや効果を無くしていても)低下している可能性が高いことから、高度にワクチン接種を行った国では感染の連鎖を断てるレベルにまで殺菌免疫〔ウイルス排除免疫〕を高められる可能性は低い。つまり、集団のコロナウイルスに対する自然免疫による免疫防御の第一線が抑圧されている限り、パンデミックはエンデミックにはならず、今のところ流行しているウイルスが軽い症状しか起こさないものであっても、より危険な変異株が生まれる可能性があるということだ。したがって、集団の自然免疫の防御力が非常に弱かったり、阻害されている限り、免疫学的自然選択圧力がSARS-CoV-2変異株を蔓延させる結果となり、パンデミックを持続させると考えられる。これは、必然的に、高度にワクチン接種を行った地域では、集団の多数(つまり、接種者)がワクチン・ブレークスルー感染を起こし続ける限り(彼らが感染しやすくなっていることが原因である)、パンデミックが続くことを意味する。このことから、パンデミックを「積極的に」終わらせるためには、高度にワクチン接種された集団では、集団免疫を確立するのに十分なほど未接種者の割合を上げる必要があることが示唆される。思い切った大規模な抗ウイルス化学予防プログラムを開始しないのであれば、自然に集団免疫を達成する方法は次にあげるようなものしかないだろう。
大規模なベビーブーム。しかしこれは実現できたとしても時間がかかりすぎ、現実的な解決法ではない。
接種率の低い国からの大規模な移民の受け入れ。しかし、公衆衛生当局はすでに、入国の前提条件として検査とワクチン接種を義務付けているため、これも実現できそうにない。
ウイルスが、より感染性が高く、より病原性の強い変異株へと進化を続け、「懸念すべき変異株(VOC)」から、自然免疫が抑制された人々(その多くは接種者であろう)に高率で重症COVID-19疾患と死亡を引き起こす「社会的影響が極めて重大な変異株(VOHC)」に変わること。そうなって初めて、健康な非接種者というわずかな集団が、集団免疫を可能にするのに十分なウイルス排除免疫をもたらすことができる。
ワクチン接種率の高い国では、大規模な抗ウイルス薬プログラムを直ちに開始しない限り、オミクロンの病原性におよぼされている免疫圧力の増加によって、新たなSARS-CoV-2変異株(Newco)の自然選択と拡大を促すだろう。オミクロンと比べてNewco変異株は、ワクチン接種の結果、自然免疫のエフェクター能力が抑圧された集団のあらゆる人々に対して、様々な面できわめて大きな競争上の優位性を獲得するだろう(ワクチンによって誘導された潜在的中和抗体や潜在的トランス感染抑制性抗体に対して完全に耐性となり (16)、その結果感染性と病原性が増強される)。
高度にワクチン接種された集団では、現在、病原性抑制性抗体が強い免疫圧力を引き起こしているため、感染性の高さが抗体依存性重症COVID-19疾患増強を促進する新しい逃避変異への道が開かれつつある。オミクロンに対するワクチン接種を行えば、オミクロンに自然に曝露した時と同様に、主に感染増強性抗NTD抗体が呼戻される。重症化の危険性が高いのは、ウイルスに自然に暴露する前にワクチンを接種した者である。ワクチン接種後は、ワクチン・ブレークスルー感染(スパイクタンパク質のN末端ドメイン(NTD)の保存された領域に対する多反応性非中和抗体によって促進される)が起こるため、もはや自然免疫細胞は「訓練可能」ではないかもしれないのだ。COVID-19ワクチン接種者は、循環する変異株への感受性が上がっているため、常にこの抗体が再刺激されている。しかし、現行のCOVID-19ワクチンで追加接種を行ったとしても、抗NTD抗体の抗体価をさらに上げるだけであり、ワクチン高接種集団に、抗体依存性重症疾患増強を引き起こすNewco変異株の自然選択と拡大を促進することに変わりはない。
ここに述べた見通しは、冷厳であるが、真に科学的なものである。それでもなお、他のウイルス(インフルエンザなど)に感染した宿主細胞や非感染性疾患によって病理的変化が起こった宿主細胞(癌細胞など)に発現する自己類似糖鎖に対する自然免疫認識が、長期にわたって抑制された場合に起こる可能性のある、多くの懸念については言及さえしていない。
このパンデミックの初期(つまり、集団として免疫学的に未経験である時期)に行われたのが、生(弱毒化)ウイルスによるワクチン接種であったとしたら、このような破滅的な結果とはなっていなかった、と考えられるのはなぜか。
現代の組替えまたは不活化タイプのCOVID-19予防ワクチンは、誘導される中和抗体の抗体価が高ければウイルスを排除できるが、パワクチン接種がパンデミックの最中に行われた場合には、誘導された抗スパイク抗体は集団の大部分でウイルス排除能力を達成しない。そのため、より感染性の高い変異株が蔓延するようになり、より高力価で感染増強性抗体を持つ割合が高まっていく。このような抗体は、一時的にウイルスを「麻痺」させるが、ウイルスを殺す/除去することはない、ある種の「疑似免疫」と考えられる。スパイクタンパク質に対する中和抗体がない場合に、(パンデミックにおいて)集団免疫に達する最善の方法は、訓練された自然免疫(自然感染による獲得免疫で補完される可能性もある)に頼ることである。遺伝的に安定な、弱毒の生SARS-CoV-2であれば免疫逃避を起こすことなく人々の自然免疫の訓練に貢献しただろう。もちろん、免疫不全者にとっては、弱毒生ワクチンは常に重症疾患を引き起こす危険性はある。
急性自己限定性ウイルス感染は、公衆衛生の立場からはどのよう監視されるべきだろうか。
パンデミックの進化を確実にモニターする唯一の方法は集団のウイルス感染率の変化を測定することである。標準化された血清学的検査方法を用いて、異なる標的(すなわち、ヌクレオキャプシドとスパイク)に対する抗体を測定し、ワクチン接種された割合(抗スパイク抗体のみ存在)と自然感染を起こした割合(抗ヌクレオキャプシド抗体と抗スパイク抗体の両方が存在)を明らかにするのだ(https://www.ecdc.europa.eu/sites/default/files/documents/Considerations-for-the-use-of-antibody-tests-for-SARS-CoV2-first-update.pdf)。オミクロン感染は多くの場合、軽度から中程度の症状である。したがって、血清学的検査の対象をCOVID-19疾患の症状を明白に示した患者だけに絞れば、集団内のウイルス感染の動きをモニターするのに十分であろう。
測定は抗体陽転を確認するため2週間後に再度繰り返す必要がある。症状の重さや、感染者のウイルス排出レベルに注目することに意味はない。重症度やウイルス排出レベルの低下は(接種者にとっては)、(再)感染感受性がより高いことと関連している可能性さえあるためである。
パンデミックとは周期的に波を繰り返すダイナミックな進化現象であるため、特定の時点における感染率を見ても意味はない。ある介入が成功したかどうかを評価するためには、感染率を数週、数ヶ月にわたって測定して、(測定された)波の頻度と大きさが低下したかどうかを評価しなければならない。
結論
宿主集団は効果的にウイルス感染と伝搬を制御しつつも、ウイルスには存続の機会が残される、という、自然なパンデミックの進化全体を通じた特徴として構築される、ウイルスと自然な免疫の健全なバランスが、集団ワクチン接種によって妨げられた。ウイルスをエンデミックの状態に収め、ウイルス感染力と集団レベルの免疫との間にそのような健全な均衡関係を維持するためには、自然な免疫が鍵となる。パンデミックにおいて集団免疫を達成するにはそれしかないのだ。
自然なパンデミックでは、自然に集団免疫に達するものであるが、集団ワクチン接種キャンペーンによってかき乱されたパンデミックはウイルス伝搬の連鎖を断ちきることができず、最終的にはウイルスはワクチンによって誘導された免疫反応に対して完全に耐性となる。ウイルスの感染性に対して免疫圧力が集団レベルで上昇した結果(これは、ワクチン由来の抗RBD抗体によって引き起こされる)、ウイルスは第一段階として、潜在的中和抗体から逃避し、感染性のレベルを上げる(抗体依存性感染増強)。これが、現在、オミクロンが蔓延する結果となった。オミクロンは潜在的中和抗体にほぼ耐性であり、したがって、接種者に対する感染性が高い。高度にワクチン接種された集団では、C型レクチンを介したウイルスの「トランス感染性」/病原性に対する免疫圧力が上昇している結果(これは、「感染増強性」非中和抗NTD抗体によって引き起こされる)、次の段階として、ウイルスは、接種者に対する病原性も高め、重症疾患の劇的な増加(抗体依存性重症疾患増強、AIESD)を引き起こす可能性が極めて高い。感染増強や疾患増強はスパイクタンパク質の保存された部位に対する多反応性非中和抗体の結合によって引き起こされるため、抗体依存性感染増強(ADEI)や抗体依存性重症疾患増強(AIESD)は「ワクチン接種率が高く、何度もブーストされている」集団が、潜在的中和抗体に対し、ほぼ耐性のSARS-CoV-2変異株にさらされた場合に特に顕著となる。
対照的に、非接種者がオミクロン感染した場合には、コロナウイルスに対する自然免疫防御が弱められるのではなくブーストされる。これには現在と将来のすべての変異株がふくまれる。
以上全てから、非接種者は抗体依存性感染増強(ADEI)による 抗体依存性重症疾患増強(AIESD)を免れると考えられる。ウイルスとヒト集団の双方にとって有益な、健全なバランスを再構築するためには、集団のウイルス感染率を劇的に低下させるか、ウイルスのライフサイクルに対する集団レベルの免疫圧力を劇的に下げることが最も重要である(両者は本質的に関連している)。
COVID-19ワクチンを高度に接種した集団のウイルス感染率を下げるには、大規模な抗ウイルス化学予防キャンペーンを実施するより他にない。しかし、人間がそれをやらないというのであれば、自然が、間違いなく、免疫圧力を生み出している集団部分を劇的に減少させることで、集団レベルの免疫圧力を低下させるだろう。
図
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
付録
I. SARS-CoV-2の糖鎖化について
SARS-CoV-2を含むコロナウイルスのスパイクタンパク質の糖鎖化と、SARS-CoV-2の糖鎖とC型レクチンの相互作用、および、その相互作用がSARS-CoV-2の感染性を変化させる可能性について、以下の優れた総説から重要な洞察を得た:
糖鎖は糖タンパク質上の特定の領域を占めることで、そうでなければ露出し、免疫認識されやすい部分を隠す役割があることが繰り返し報告されている。部位特異的糖鎖化の分析によれば、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のの糖鎖シールドは他のコロナウイルスと一致しており、同様に、その糖鎖シールドには、感染増強性抗体で認識されるN末端ドメイン領域を含め、全体として、多くの弱い部分がある(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7253482/; https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32366695/)。SARS-CoV-2のスパイクタンパク質を覆う、多くのマンノース化N型糖鎖のマンノース基は、ACE2受容体より前に(https://www.nature.com/articles/s41580-021-00418-x.pdf) 、標的細胞表面の、グリコサミノグリカンやシアル酸を含むオリゴ糖などの接着因子と相互作用する重要な要素である (https://www.pnas.org/doi/epdf/10.1073/pnas.1712592114; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7112261/; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7278709/; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7128678/)。
ACE2の発現が非常に少ない、樹状細胞や、内皮細胞や肺胞上皮細胞などの宿主細胞上のC型レクチン(DC-SIGN, L-SIGN や SIGLEC1) も、オリゴマンノース化N型糖鎖に対する接着因子として働き、それぞれ、ACE2依存性トランス感染やACE2非依存性トランス細胞融合を促進する(IIIを参照)。
II. SARS-CoV-2のO型糖鎖化について
O型糖鎖もまた、複数のウイルスタンパクで観察されており、ウイルスタンパク質の生物学的活性に重要なことが示唆されている(https://academic.oup.com/glycob/article/28/7/443/4951691; https://www.nature.com/articles/s41591-020-0820-9)。SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に関しては、X. Zhaoによる総説が現状に関するもっとも優れた要約であり ( https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmolb.2021.629873/full)、そこには以下のように述べられている。
「N型糖鎖化に関する一致した結果とは異なり、採用したタンパク発現システムの違いや検出方法の違いによって、研究グループが異なると、スパイクタンパク質の異なるO型糖鎖パターンが報告されている。Shajahanらは、スパイクタンパク質のS1サブユニットとS2サブユニットを別々に発現させた場合に高レベルのO型糖鎖化を報告し、S1サブユニットのO型糖鎖化部位として、323番のスレオニン(Thr323)と325番のセリン(Ser325)を同定した (17)。しかし、解析にスパイクタンパク質の三量体を用いた他の二つの報告によれば、ほとんどのO型糖鎖修飾部位の占有率は低かったということだ (18),(19)。この矛盾を説明する一つの可能性として、スパイクタンパク質は立体構造や多量体構造が異なる場合に、異なるタイプの糖鎖化を受ける可能性がある、と言うことが考えられる。さらに、Andersenらはフーリン切断部位(furin cleavage site)を挟むユニークなO型糖鎖化パターンを予測し (20)、この切断部位周辺の糖鎖付加がスパイクタンパク質の活性化を制御していると考えられている。Sandaらは、質量分析を用いた方法で、このフーリン切断部位周囲のO型糖鎖化(Thr678)を確認し、さらに、8つのO型糖ペプチドを同定した (21)。ほとんどのO結合型糖鎖化の機能的役割は完全には解明されていない。」
アスパラギン残基(Asn)がオリゴ糖を結合できるのはAsn-X-Ser またはAsn-X-The配列の場合のみである(Xはプロリンを除く、どのアミノ酸でもよい) (https://cshperspectives.cshlp.org/content/5/8/a013359)。 しかし、一般的、あるいはアイソフォーム特異的な、O型糖鎖化のための保存されたタンパク質配列モチーフは存在しないため、この修飾を予測することはかなり難しい。 (https://www.jbc.org/article/S0021-9258(20)51541-X/fulltext; https://academic.oup.com/glycob/article/28/7/443/4951691)。
これまでのところ、オミクロンを含む主要な変異株の変異が、オリゴマンノース型糖鎖を含む、糖鎖化部位に影響したという報告はない (https:/www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7253482/)。この知見は糖鎖化部位はSARS-CoV-2の感染力に必要十分であり、一般に、選択圧力から免れていることを示唆している。しかし、中和力が非常に高いCOVID-19回復者血清を用いた実験で示されたSARS-CoV-2の逃避メカニズムには、スパイクタンパク質のN末端ドメインへの新たな糖鎖配列の挿入が含まれ、それは中和力に対する完全な抵抗性をもたらすことが示されている(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7781313/)。
III. SARS-CoV-2感染病理におけるC型レクチンの役割
C型レクチン受容体(DC-SIGN/L-SIGN/LSECtinなど)は、いくつかの異なるタイプの宿主細胞上に発現し、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質上に存在するマンノース化N型糖鎖(高マンノース型や複合型N型糖鎖)やO型糖鎖領域を認識する。C型レクチンは、発現する細胞の種類や細胞表面での発現レベルに応じて、ACE2を介したウイルスの宿主細胞への侵入を可能にし、シス型あるいはトランス型感染を促進する (https://www.nature.com/articles/s41590-021-01091-0.pdf)。
略語一覧
Ab: Antibody 抗体
ACE2: Angiotensin-converting enzyme 2 アンジオテンシン変換酵素2
ADEI: Ab-Dependent Enhancement of Infection 抗体依存性感染増強
ADII: Ab-Dependent Inhibition of Infection 抗体依存性感染抑制
AIESD: Ab-Independent Enhancement of Severe (C-19) Disease 抗体依存性重症(COVID-19)疾患増強
C-19: COVID-19
CBII: Cell-based innate immunity 細胞性自然免疫
CBIIS: Cell-based innate immune system 細胞性自然免疫系
CoV: Coronavirus コロナウイルス
CTL: Cytotoxic T lymphocyte 細胞傷害性T細胞
DC-SIGN: Dendritic cell-specific intercellular adhesion molecule-3-Grabbing Non-integrin 樹状細胞特異的細胞内接着分子3捕捉ノンインテグリン 樹状細胞特異的ICAM-3捕捉ノンインテグリン
L-SIGN: Liver/ Lymph node-specific intercellular adhesion molecule-3-grabbing non-integrin 肝/リンパ節特異的ICAM-3捕捉ノンインテグリン
LRT: lower respiratory tract 下気道
NK cell: Natural Killer cell ナチュラルキラー細胞
pNAbs: Potentially neutralizing Abs 潜在的中和抗体
PNNAbs: polyreactive non-neutralizing Abs (i.e., non-neutralizing anti-S-NTD Abs) 多反応性非中和抗体(すなわち、非中和性抗S-NTD抗体)
(S)-NTD: N-terminal domain on spike protein スパイクタンパク質のN末端ドメイン
(S)-RBD: Receptor-binding domain on spike protein スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン
(S)-RBM: Receptor-binding motif on spike protein (i.e., the region on the RBD that is in direct contact and interacts with the ACE2 receptor on target host cells) スパイクタンパク質の受容体結合モチーフ(すなわち、受容体結合ドメインの中で、宿主細胞上の標的分子であるACE2と直接結合し、相互作用する領域)
S: spike protein スパイクタンパク質
SC-2: SARS-CoV-2 virus SARS-CoV-2
SIGLEC1: Sialic acid–binding immunoglobulin-like lectin 1 シアル酸結合イムノグロブリン様レクチン1
URT: upper respiratory tract 上気道
VBTI: Vaccine breakthrough infection ワクチン・ブレークスルー感染
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