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文献38_新たな二価COVID-19ワクチン:免疫学的常識はCOVID-19パンデミックの影響をどう予測するか?

Dr. Geert Vanden Bossche 2022年8月20日投稿
Novel bivalent C-19 vaccines: What does common immunological sense predict in regard to their impact on the C-19 pandemic?
の翻訳です。原文を参照の上ご利用ください。2023年6月修整

二価mRNAワクチンによるブースター[1]は、SARS-CoV-2ウイルスに対抗するためのCOVID-19ワクチンの次のステップとして開発されたものである。これらの新しいワクチンは、オリジナルのワクチンよりも幅広い免疫反応の誘導を目標としており、ある程度は規制当局(例: FDA、MHRA)によって既に承認されている。

これらの新しいワクチンは主に第一世代のCOVID-19ワクチンを接種した人々に投与されるにも関わらず、これらの新規ワクチンを試験するための研究は、ベースラインでの抗体価が陰性の者のみが参加者となっていることについて、皆さんは疑問に思うことだろう。既にCOVID-19ワクチンを接種した集団において優勢に流行しているオミクロン変異体と闘う目的でこれらの新しいCOVID-19ワクチンを使用することは、ワクチン学の基本原則に反する、極めて禁忌と言える驚くべきことである。オミクロンに対応したスパイクタンパク(S)ベースのワクチンによって、スパイクタンパク内の保存された抗原部位に結合する感染増強抗体の記憶がすみやかに再刺激され、増加する。これらの抗体の再刺激にはヘルパーT細胞を必要としないが、Sの可変性領域の抗原モチーフやこれまで認識されていなかった抗原モチーフ(いわゆる「エピトープ」)に対する免疫反応のプライミングはヘルパーT細胞が必要であり、したがって抗原提示細胞による(これらのエピトープに由来する)抗原性ペプチドの取り込み、処理、提示が必要である。

これまでに述べてきた通り、COVID-19ワクチン接種者におけるCOVID-19疾患は、組織常在性樹状細胞(遠隔臓器に移動する)の表面に付着したウイルス粒子によるトランス感染の抑制と、スパイクタンパク内のユニバーサルエピトープを認識する細胞傷害性CD8+T細胞/リンパ球(CTL)の活性化の促進により緩和されていると考えるのが最も可能性が高い(https://www.voiceforscienceandsolidarity.org/scientific-blog/predictions-gvb-on-evolution-c-19-pandemic; https://www.voiceforscienceandsolidarity.org/scientific-blog/monkeypox 和訳)。SARS-CoV-2変異体が耐性化して抗S抗体による中和能が低下すると、感染増強抗体が受容体を介したウイルス侵入を強化するようになり、この2つの機構が促進される。CTLがヘルパーT細胞非依存性に持続的に活性化されることにより、これらのCTLは、ワクチン抗原の取り込みと処理に引き続いて(MHCクラスI分子上にも)普遍的なS関連CTLエピトープを交差提示するプロフェッショナル抗原提示細胞(樹状細胞)を認識し、殺すことができるようになるだろう。これにより、これらの抗原提示細胞がワクチン由来のオミクロン型スパイクタンパク内の新しい(すなわち、オミクロン特異的)免疫原性B細胞エピトープに対してヘルパーT細胞依存性の抗体反応をプライミングすることが妨げられる。より具体的に言えば、健康なワクチン接種者の免疫応答では、自然免疫応答が阻害されているだけでなく、抗原提示細胞による抗原の取り込みのブロック(すなわち、SARS-CoV-2粒子の表面への吸着による)、または以前にも図示したように(以下の図を参照)(保存CTLエピトープからなる)ワクチン由来のS抗原を取り込んだプロフェッショナル抗原提示細胞(樹状細胞)が殺傷されることによって抗原提示が妨げられ、新しい適応免疫応答を誘導することができない。
その結果,ほぼ完全にCOVID-19ワクチンを接種した集団に行われるワクチン接種の免疫学的効果は,自然感染(および自然なブレイクスルー感染)がもたらす免疫学的効果とは大きく異なるものとなる。ブレイクスルー感染[訳者による補足:ワクチンでプライミングされた者のブレークスルー感染]では,前述の防御機構、つまり、抗原提示細胞がトランス感染を防いだり,細胞傷害性CD8+T細胞の活性化ということがほぼ失敗し、宿主を防御できなかった結果として、COVID-19疾患を発症するのだ。つまり、COVID-19ワクチン接種者では、一過性の感染増強抗体によって促進されている(一時的な)宿主の免疫防御をウイルスが突破しない限り、古典的な抗原提示による新規S関連エピトープの免疫認識はできない、ということである。しかし、(ワクチン接種者の感染感受性が高まっている結果;https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2022.01.28.22270044v1))再感染の頻度が高くなるため、ウイルスがワクチン接種者の脆い、ヘルパーT細胞に依存しない免疫防御を突破する可能性は低いだろう。そのため、ワクチン接種者では新しい変異体、あるいは新しいS由来のワクチン抗原(どの変異体に由来するかに関係なく)に対して免疫を獲得する可能性が低下する。

結論:

オミクロン変異体に対応したCOVID-19ワクチンは、mRNAを使用したものであれタンパクを使用したものであれ、COVID-19集団ワクチン接種のすでに悲惨な結果をさらに悪化させるだけである。新規ワクチンによって細胞表面に発現するスパイクタンパクや遊離のスパイクタンパクが増える結果、感染増強抗体だけがおそらく持続的に増加するが、大多数の健康なワクチン接種者は新しいオミクロン特異抗原に対する中和抗体を獲得することはない。これらの新規ワクチンの目的は、進化する変異体に対する防御の強化であるが、ウイルスの進化のダイナミクスを強化するという点で全く逆の効果をもたらすだろう。オミクロンに適応した新規ワクチンの大量接種の継続は、感染増強抗体(これは現在下気道レベルでの病原性を抑制する効果を持っている)がウイルスの病原性に対して及ぼしている集団レベルの免疫圧力を高めるだけである。これらの新規ワクチンによる大規模なワクチン接種は、接種者において、高いレベルの病原性と感染性を示すSARS-CoV-2変異体の自然選択と拡大を促進するだけである。しかし、ワクチン非接種者はこの影響から免れるだろう。

図: 

https://www.trialsitenews.com/a/epidemiologic-ramifications-and-global-health-consequences-of-the-c-19-mass-vaccination-experiment-a212bb47より)

図1 
略語の補足:C-19:COVID-19, SC-2: SARS-C0V-2
原図

全身性/重篤な疾患(そしておそらく死亡)に至らない急性自己限定性ウイルス感染は、主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)非拘束性細胞障害性CD8+T細胞によって終息する。この細胞は記憶を持たず、スパイク(S)タンパク質内に含まれる普遍的、変異体非特異的T細胞エピトープによって活性化される。感染者が重篤な疾患に進行しない限り、初回の増殖性感染後に疾患からかなり迅速に(そして確実に、完全に機能するウイルス中和抗体がピークに達する前に)回復できるのはこの働きによる[2a-2b-2c-2dの経路による]。しかし、ワクチン接種者がワクチンに対する免疫逃避変異体に暴露した場合には、この逃避変異体に対する中和抗体が新規に生成されるのではなく、低下した非中和性の感染増強抗体が速やかに増強される(これらは、すべてのSARS-CoV-2変異体のN-STD内に保存されている抗原部位に向けられており、いったん宿主免疫系をプライミングした後は「抗原原罪」のライセンスとなる)。
COVID-19(C-19)ワクチン接種前に増殖性感染との戦いの経験が乏しい(したがって、経路1a-1b-1cによる自然免疫防御の訓練が不十分な)ワクチン接種者では、樹状細胞(DC)に付着したウイルスに結合して重症化を防ぐ役割を果たす感染増強抗体[2](3a-3b-3c-3d経路による)は、強く活性化された細胞傷害性CD8+T細胞を介した細胞の殺傷(3c')と相乗的に働き、COVID-19の発症を完全に防ぎ、結果として、ワクチン接種者は非常に再感染しやすいも関わらず無症状となる(B + C → D)。発症阻止は増殖性感染の阻止ではなく、感染の排除の促進によるものであるため、ワクチン接種者は再感染時にSARS-CoV-2(SC-2)を排出し、感染伝搬を続けることになる。自然免疫のエフェクター細胞( NK細胞)はMHC非拘束性かつ多特異性であり、したがって免疫逃避を促進しないが、感染増強抗体は抗原特異的(すなわちS特異的)であり、もし集団の大部分が、十分高い力価と十分高い親和性でこれらの抗体を産生するなら、これらの抗体よる病原性抑制能力に抵抗できる免疫逃避変異体の自然選択を促すことになる。これは、ワクチン接種者が増殖性ウイルス感染を防ぐことができないためである。結果として、ワクチン接種者ががウイルスの病原性に及ぼす免疫圧力は、この免疫圧力を克服する能力を持つ免疫逃避型SARS-CoV-2変異体の普及拡大を防ぐことができないという点で最適でない。感染増強抗体の病原性抑制作用に対するウイルス変異体の抵抗性は、必然的に抗体依存性重症疾患増強(ADESD)を引き起こすことになる。

脚注
[1] オリジナルの武漢株とオミクロン変異株BA.1またはオミクロン変異株BA.4/5の系統の両方をベースにしている。
[2] すでに説明したように、非中和性の感染増強抗体は、現在、下気道などの遠隔臓器レベルでのトランス感染を妨げている。現在、ウイルスの病原性に対して集団レベルの免疫圧を及ぼしているのは、この感染増強抗体である。(https://www.voiceforscienceandsolidarity.org/scientific-blog/predictions-gvbon-evolution-c-19-pandemic).


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