自転車レースで、エスケープ集団の中のもっとも適性のある選手が、交代でPeloton(集団)の先頭を走ることで全体のスピードを抑えるように、最も適応したウイルス変異株が現れては先頭に立つ…
自転車レースで、エスケープ集団の中のもっとも適性のある選手が、交代で集団(Peloton) の先頭を走ることで全体のスピードを抑えるように、最も適応したウイルス変異株が現れては先頭に立つ…
今流行しているSARS-CoV-2の変異株は、変異が一つ違う程度で、互いにほんのわずかに異なるだけである。しかし、これらの変異株がもつ、より高い感染性は、子孫ウイルスが上気道の粘膜をパトロールしている樹状細胞に捕らえられてしまうため、ほぼ打ち消されている(図1)。つまり、ウイルスの適応度の増加は、上気道をパトロールする樹状細胞による「中和」を十分に補えるほど高くはない。そのため、宿主間伝播が減少している。移動する樹状細胞への子孫ウイルスの吸着が増加すると、ウイルスの病原性を抑制している非中和抗体の局所濃度が減少する。そのため、上気道外の感受性組織で、樹状細胞に吸着したウイルス粒子によるトランス感染が促進される。トランス感染の増加は消化管でも、泌尿生殖器系でも起こるため、新たな、より感染性の高い変異株の出現によって、下水中のウイルス濃度が増加する(これはPCRで測定される)(図2)。したがって、下水中のウイルス活動の増加は、今や、宿主間伝播の指標ではない!
宿主間伝播性が難しくなればなるほど、新たな、より適応した「乗り手」が集団の先頭を引き受け、抜け出した選手を追おうとする集団のスピードを抑える可能性が高い(すなわち、新たな、より感染性の高い変異株の割合の増加が早まるだろう)(それぞれ図3と図4参照)。
この連携戦略は、別のチームの適応度の高い乗り手が先頭に立ち、集団のスピードを劇的に上げない限り、集団が、集団から抜けだす乗り手に追いつくチャンスを急速に減らす。同様に、別のコロナウイルス(つまり、HIVICRON)が突然、(高度にCOVID-19ワクチンを接種された集団で)主流となり、劇的にウイルスの宿主内伝播——ウイルス病原性の増強として知られる現象——を増加させない限り、ウイルスの生存も危ういのである。
図1
図2
グラフは下水中のSARS-CoV-2活動性レベルの全国および地域推移を示す。
図3
新たに出現している変異株は宿主間伝播性を抑えるために協調しているが、どれも完全に主流とはならない(素早く優勢となり、著しい優位性を獲得する変異株とは正反対である)。
自転車レースの選手のように、交代で集団 (Peloton) の先頭に立つことで集団のスピードを抑え、抜け出す選手が有利となる。