見出し画像

2023年5月、WHOはCOVID-19のパンデミックの急性期は終息したと宣言した。しかし、このパンデミックの慢性期はいつ、どのように終息するのだろうか?私たちは慢性化と常在化(エンデミック化)を混同してはいないだろうか?

Dr. Geert Vanden Bossche 2025年1月26日投稿
In May 2023 the WHO stated that the acute phase of the Covid-19 (C-19) pandemic had come to an end. But when and how will the chronic phase of this pandemic end? Are we perhaps confusing chronicity with?
の翻訳です。
原文を参照の上、ご利用ください。


はじめに

皆さんの多くが、ウイルスのさらなる進化と、COVID-19による「津波」つまり、入院と死亡の急増についての私の理論が現実のものとなるのか、また、このような恐ろしい結末が、このパンデミックの慢性期を終息させるために考えられる、科学的に妥当な唯一のシナリオなのか、疑問に思っていることだろう。私はこの質問を何百回となく自問してきた。要するに、人々は、このSARS-CoV-2パンデミックを終息させる別の方法があるのではないか、と考えているのだ。しかし、このパンデミックが依然として進行中であることに疑いの余地は無い。もう相当の期間、準種の形をとってはいるが、ウイルスは整然と新しい変異株を生み出し続けている[1]。これらのウイルスが本質的に高感染性であることと、多くの場合、無症状軽症で感染しているため、現在循環しているウイルスの伝播率は依然として相当に高い。

現在、循環しているSARS-CoV-2変異株による疾患は、多くの場合、より軽症で、より慢性的な経過をたどるようになっている。さらに、下水中のウイルス濃度は比較的低い状態に留まっている。それでもなお、これらの変異株が依然としてCOVID-19という疾患を引き起こし、入院や、死亡の原因にさえなっていることは明白である。保健当局や、残念なことに、多くの科学者や専門家は、このパンデミックは徐々に縮小し、インフルエンザのような季節性感染症に移行する、と解釈しているが、彼らの解釈は、まったくのナンセンスである。高度にCOVID-19ワクチンを接種された集団がウイルスを排除する集団免疫を発展させられていないことは、以前から明らかである。つまり、SARS-CoV-2パンデミックは終息とは程遠いということだ。せいぜい、これまでと異なる経過を取るようになったというだけである。(つまり、より慢性に進行するようになった)。一方で、そのために多くの動物種が、今ではウイルスのリザーバーとなり、ウイルスを保有するようになっている。

私は、上気道を巡回する移動性樹状細胞によるウイルスの緩衝効果によって、感染の経過が比較的「軽症」となり、それが、急性再感染の減少として観察されていると考えている。樹状細胞表面のレクチン受容体は、循環する非常に感染性の高いウイルスの表面の糖成分と強く結合する(図1参照)。このような非常に感染性の高い変異株に曝露ばくろした場合、より多くのウイルスが、ウイルス感受性の上皮細胞の内部に入り込むのではなく、樹状細胞表面に「停留」することになる。そのため、増殖性感染の発生率が低下すると説明できる。一般の人々も、科学者も、パンデミックは弱まり、間もなく季節性の流行に移行するだろうという誤った印象を持っているが、その主な原因はここにある。そして、我らの公衆衛生当局は、人口の中の最も脆弱な人々に、毎年ワクチン接種を行なうという、インフルエンザ同様の対応で制御できるだろう、と言うのだ!しかしこの複雑な生物学的現象を理解しようと、もう少し努力する私達のような者にとっては、活発に循環し、保菌動物の間で容易に変異し、組換えを起こす呼吸器感染ウイルスに、ワクチンによって最適ではない免疫圧力をかければ、ウイルスに免疫逃避を促すだけではないことが理解されるだろう。つまり、新たな変異株に対して、ワクチンによって誘導された抗体の中和力が大きく減弱すれば、そのような抗体は、抗体依存性感染増強のリスクを著しく高めるため、危険でさえあるのだ。最適ではない中和性と、抗体依存性感染増強は、それぞれ、免疫逃避変異株の自然選択と、ウィルスの感染性の「増強」を促進し、更なるウイルスの蔓延を促す。

COVID-19パンデミックの現在の進化の動向は、軽症だが遷延する感染症(一般的に「ロング・コビッド」[訳注:日本ではコロナ後遺症か]と呼ばれる)によるウイルスの複製と排出に、ますます依存するようになっている。そして、「ロング・コビッド」の患者の大半はCOVID-19ワクチン接種者である。このことは、次のような疑問を提起する。ワクチン接種が、現在のSARS-CoV-2変異株の感染拡大を抑制する有効な手段に程遠いのなら、現在も進行しているCOVID-19パンデミックを封じ込めるために他にどのような選択肢があるのだろうか?

COVID-19ワクチンを高度に接種した国々の現在の免疫疫学的状況を踏まえれば、パンデミック終息に貢献しうるシナリオは2つしか考えられない。ただし、どちらも私が予測してきたように、COVID-19による入院と死亡が急増する超急性の津波を引き起こすことになるだろう。

一つ目のシナリオ

そのうちの一つのシナリオについては、昨年、自身のHPに掲載した[日本語訳]。それは、高度にCOVID-19ワクチンを接種された集団から鳥へのSARS-CoV-2曝露がおよぼす影響で、その始まりは、鳥類での、軽症または無症状の鳥インフルエンザウイルス感染となって現れる。遺伝的変異(ドリフト)と交雑(リアソートメント)によって進化してきた複数の遺伝子系統(主にH5N1亜型)を含む、高病原性鳥インフルエンザウイルスの急速な拡大が、人への感染に適応し、動物から人への感染が起こった場合に、人から人への感染を可能にするような株の出現可能性を高めるのは明らかである。鳥から空気感染によって拡大する鳥インフルエンザウイルスは、理論的には複数の哺乳動物種での世界的流行や、人のパンデミックの引き金にさえなり、特に免疫学的に未経験の集団で高い罹患率と死亡率を起こしうる。この可能性を完全に排除することはできないが、私は、種特異的な抗インフルエンザ抗体を多く持つ哺乳類集団に高病原性鳥インフルエンザが十分に適応するとは思わない。実際、新たに発生した鳥インフルエンザウイルス系統が感受性の哺乳類細胞の細胞表面レセプターに結合する能力が高ければ高いほど、既存の感染、またはワクチンによって誘発された種特異的な季節性インフルエンザウイルスに対する抗体によって認識される可能性が高くなることは、十分に考えられる。例えば、米国では人口の約50~60%がそのような抗体を持っていると推定されている。しかし、この認識は非機能的(すなわち、最適ではない)である。なぜなら、これらの抗体は、ヘマグルチニン(HA)またはノイラミニダーゼ(NA)タンパク上の特定のエピトープに、ある程度の抗原性の類似性があるため、鳥インフルエンザウイルスと交差反応するが、中和はしないからである。このような交差反応性は、抗インフルエンザ抗体を多く持つ集団において、抗体依存性疾患増強を引き起こす可能性がある。

現在の季節性インフルエンザ患者の急増——特にCOVID-19ワクチン接種者の間での——と、季節性インフルエンザに対するワクチンの接種推奨を考えれば、高度にCOVID-19ワクチンを接種された集団の中では、インフルエンザに対する抗体価の高い人々の割合が確実に増加している。したがって、真の世界的な鳥インフルエンザパンデミックではなく、高度にCOVID-19ワクチンを接種された集団での抗体依存性疾患増強による死亡の増加を目撃することになる可能性が高い。この影響を受けるのは、季節性インフルエンザの深刻なブレークスルー感染によって、インフルエンザウィルスに対する抗体価が高まった人々だけでなく、インフルエンザワクチンによって抗体価が高まった人々もそうである。これは、COVID-19ワクチンを接種しているかどうかには関係ない。そのため、私は、現在のような、複数の国でインフルエンザが大流行しているよう状況であっても、季節性インフルエンザに対するワクチンを接種しないように、と強く助言する。一方で、自然免疫が弱い人々——例えば、基礎疾患がある人々や、このパンデミックの前半(すなわち、COVID-19ワクチンが、蔓延する急性SARS-CoV-2感染による細胞性自然免疫の訓練を妨げていた時期)に細胞性自然免疫が十分に訓練されなかった人々——もインフルエンザウィルスに対する抗体価が高くなる可能性がある。そのような人々は、発症早期に抗ウイルス薬を服用することを検討するべきだろう。

2つ目のシナリオ

しかし、現在の、高度にCOVID-19ワクチンを接種された集団でのSARS-CoV-2以外のウイルス性呼吸器感染症の急増(季節性インフルエンザ、RSウイルス、ヒトメタニューモニアウイルス(HPMV)など)が、COVID-19パンデミックの終わりの始まりとなる可能性の方がはるかに高い。

免疫反応が、樹状細胞を介する病原性抑制(図2参照)を標的とした細胞性免疫[2]に方向を変えるにつれ、COVID-19の病態は急性から、より慢性的なもの(「ロング・コビッド」)へと移行する傾向が強まっている。この移行によって、集団レベルの免疫圧力は、ウィルスの感染性に対するものから、ウイルスのトランス感染性トランス細胞融合性に対するものへと変化する。慢性感染率が増加しつつあるため、宿主内伝播[3]能力のある潜伏変異株[4]の出現と、慢性感染患者からのウイルス排出が増加している。このため、時間の経過とともに、「適切な」[5]潜伏変異株が出現する可能性が高まる。それは、同時流行する様々な変異株にさらされている高度にCOVID-19ワクチンを接種された集団が、ウイルスのトランス感染とトランス細胞融合(すなわち、ウイルスの病原性)に対しておよぼしている、最適ではない免疫圧力に打ち勝つと同時に、個体内で伝播することができる変異株である。

以前にも述べたように、流行している非常に感染性の高いSARS-CoV-2変異株は、ますます、上気道を巡回する移動性樹状細胞表面に吸着されるようになっている(図1と関連文献を参照)。これにより、増殖性感染率が低下するだけでなく、抗ウイルス免疫反応が刺激されなくなる。樹状細胞は、ウイルスや抗原を細胞内に取り込めば、抗原提示細胞として機能できるが、単に細胞表面にウイルスや抗原を吸着しただけでは、抗原提示細胞として機能しないためである。これによって、ウイルス産生と排出は減少するが、殺菌免疫ではないため、ウイルスの伝播を止めることはできない。そのため、このパンデミックの進化の動きは遅くなっているように見える。このパンデミックの「準安定」期において、ウイルスの宿主間伝播は、繰返し、あるいは、「慢性的に」SARS-CoV-2に感染した人々からの、弱いが持続するウイルス排出に大きく依存している。この準安定平衡によって、ある種の定常状態が生み出されている[6]。その平衡の中で、ウイルスは、依然として、その生存を保証するのに十分な宿主間伝播を保つことができているが、その一方で、上気道を巡回する樹状細胞にウイルスが吸着することによる病原性抑制効果に打ち勝つような新たな表現型のウイルスが選択されるための細胞性免疫圧力はまだ十分ではない。

私はずっと、この準安定平衡状態は、果たして、突然、より安定な低エネルギー状態に移行するのか、移行するならば、それはどのようにしてか、ということを考えてきた。つまり、問題は、ウイルスのトランス感染とトランス細胞融合に対する現在の免疫圧力が、いつ、劇的な免疫選択イベントを引き起こすのに十分なほど高まるのだろうか、ということである。下水中のSARS-CoV-2レベルや、COVID-19による入院・死亡率が比較的低いことから、現在、準安定状態にあることは明らかなのだが、この準安定平衡状態を脱し、ウイルスのトランス感染に対する集団的免疫圧力を高めると同時に、宿主内伝播を強めた新規変異株の出現を促進するには、外部から何らかの力が加わることが必要だろう。そのような外力は現在のバランスを不安定化し、高度にCOVID-19ワクチンを接種された集団でのウイルス拡大がもはや、集団レベルの免疫によって緩和されることのない、より安定な状態へと移行させることができるだろう。

現在、複数の高度にCOVID-19ワクチン接種を行なった国で、他のウイルス性呼吸器感染症が流行しているが、これによって、高度にCOVID-19ワクチンを接種された集団で高度の病原性を示す新たなコロナウイルス系統の出現が早まり、このパンデミックの準安定状態が、安定な低エネルギー状態に移行するための十分なエネルギーが供給される可能性がある。

なぜこれが、科学的に妥当な仮説と言えるのか?さらに、このような季節性ウイルス性呼吸器感染症の流行が、間もなく、COVID-19パンデミックの終わりにつながるのは、どのようなメカニズムによるのだろうか?

パンデミックの急性期には、SARS-CoV-2の急性感染が圧倒的に蔓延し、COVID-19ワクチン接種者と、重篤なCOVID-19を経験した非接種者の細胞性自然免疫の訓練を妨げた。このような、細胞性自然免疫の訓練の不足、あるいは、欠如が、これまではSARS-CoV-2に圧倒されていた、他の呼吸器感染ウイルス(季節性インフルエンザ、RSウイルス、ヒトメタニューモニアウイルスなど)の現在の流行を引き起こしている。これらのウイルスに感染し、発症することは、そのような人々の細胞性自然免疫の訓練となるだけでなく、広範に機能する細胞傷害性T細胞も活性化する。このような細胞傷害性T細胞は、ウィルス感染を阻止し、他の呼吸器感染ウイルスの蔓延を抑えるだけでなく、循環するSARS-CoV-2変異株の伝播の抑制にも役立つ。しかし、それによって、SARS-CoV-2伝播率が全体として、さらに減少しても、集団免疫が得られるのではなく[7]、循環する変異株の中で、より感染性の高い変異株が占める割合が増え、上気道を巡回する樹状細胞に吸着するウイルスが増加することになるだろう。そのため、ウイルスの宿主内伝播に対する免疫圧力が増し、同時に、慢性SARS-CoV-2感染と関連疾患(すなわち「ロング・コビッド」)が増え、それによって、慢性SARS-CoV-2感染者で宿主内伝播可能なコロナウイルス系統の自然選択が密かに促進される。宿主内伝播に対する大規模な免疫圧力を考えれば、新たに出現する、遠隔臓器の感受性細胞に、トランス感染とトランス細胞融合を起こす能力のあるコロナウイルス潜伏系統が、突然、大きな適応上の優位性を得ることが考えられる。その突然の、圧倒的な拡大によって、高度にCOVID-19ワクチンを接種された集団が宿主内伝播に集団的におよぼしている免疫圧力は、大規模に解消されることになる。これによって、SARS-CoV-2関連播種性血管内凝固症候群(SC-2-associated disseminated intravascular coagulation: SADIC)の大規模な急増が起こり、この新規コロナウイルス系統を、その感染の初期段階で排除できないあらゆる人々に突然死を引き起こすことは避けられない。

言い換えれば、高度にCOVID-19ワクチンを行なった国でのSARS-CoV-2以外の呼吸器感染症の増加は、SARS-CoV-2免疫逃避パンデミックの急性期の間も、COVID-19免疫逃避パンデミックの慢性期である現在起こっている季節性急性感染症流行の間も、細胞性自然免疫系の訓練が出来なかった人々に対して強い病原性を示すコロナウイルス系統の出現と、自然選択を加速させると予測される。そのような人々を病原性から守るには、有効な高ウイルス薬の予防的服用が必要となるだろう。

現在流行している、他の呼吸器感染症によって細胞性自然免疫を訓練すれば、COVID-19ワクチン接種者は、新たに出現する病原性コロナウイルス系統から守られるだろうか?

高度にCOVID-19ワクチンを接種された集団で高い病原性を発揮する新たなコロナウイルス潜伏系統の出現によって、超急性COVID-19疾患による入院と死亡の津波が引き起こされ、集団の大きな部分が急減し、残った、主に非接種者からなる集団が、自然な殺菌免疫と人口密度の減少によって、この免疫逃避パンデミックを終わらせることが可能となる。

実際、現在流行している他の呼吸器感染ウイルスによって細胞性自然免疫を訓練できたCOVID-19ワクチン接種者であっても、新たに出現する、非常に病原性の高い潜伏系統(私はこれを「HIVICRON」と呼んでいる)にかかる可能性がかなりあるだろう。

これは、特に、季節性インフルエンザ感染が蔓延している地域に特に当てはまると思われる。季節性インフルエンザへの曝露は、季節性インフルエンザのワクチンを接種していなくても、大部分のCOVID-19ワクチン接種者の抗インフルエンザ抗体の抗体価を高める! 上述したが、このように抗体価が高いと、急激に拡大している鳥インフルエンザウイルスに曝露した場合に、抗体依存性疾患増強を非常に起こしやすくなる。

要するに、高度にCOVID-19ワクチン接種を行なった国は、保健医療体制を崩壊させる重大な健康危機の瀬戸際にあるということだ。

下の図2は、高度にCOVID-19ワクチンを接種された集団における、COVID-19パンデミック時の集団レベルでのウイルス学的および免疫学的変化を要約したものである。左側のグラフは、パンデミックの進化動態における対応する変化を示している。

しかし、集団レベルでの、樹状細胞を介したウイルス病原性に対する免疫圧力が、この圧力を劇的に解消できる表現型変異株の自然選択を一斉に引き起こすのに十分なまでに高まり、それによって、ウイルスが、その病原性を完全に発揮できるようになるのはいつであるかは、誰にもわからないのだ。

私達はウイルスの感染やトランス感染に対して集団レベルでおよぼされる免疫圧力のレベルを測定することはできず、ウイルスが、ある新しい機能や表現型(高感染性であれ、高病原性であれ)を獲得するまでに、ウイルスが耐えうる免疫圧力のレベルも知ることができない。そのため、コロナウイルスによる入院と死亡の津波がいつ起こり、死亡率がどこまで上がるかを正確に予測することは不可能なのである。

循環している潜伏変異株の進化について、その遺伝子配列や、出現割合について詳細に、いくら多くのデータを集めたとしても、予測の不確実性は変わらない。下水サーベイランスによるウイルス進化のデータ収集も、入院率や死亡率のデータ収集も同じことである。

私はこのことを理解するのに、ずいぶんと時間がかかった。どれだけサーベイランスを行い、遺伝子配列データを集めたとしても、津波が起こる時期と大きさについての予測はどれも不確実なのだ。

確実に言えることはただ一つ、ロング・コビッドの患者が増加し、重篤な急性COVID-19患者も同時に増加するにつれ、私達は予測された津波に近づいている。そして、高度にCOVID-19ワクチン接種を行なった国での、他のウイルス性呼吸器感染症の流行はその進行を加速させるだけである。

超急性死亡が急激に、指数関数的に増加し始めれば、それは間違いなく、強力な、しかし、ごく短期間のコロナウイルスの津波の始まりのサインであろう。しかし、基礎疾患として免疫抑制状態になく、免疫逃避パンデミックの間、常にウイルスにさらされ続けてきた非接種者の健康状態がこれによって影響されることはないだろう。

言い換えれば、パンデミックの準安定状態からパンデミック後の安定状態への移行は、かつては慢性SARS-CoV-2患者によって排出され、樹状細胞によるウイルスのトランス感染の抑制から逃避する能力のあるコロナウイルスの一系統に過ぎなかったものが、高度にCOVID-19ワクチンを接種された集団での優勢系統として選択され、蔓延することによる、短期間だが劇的な症例致死率の増加として起こる。そのようなコロナウイルス系統の病原性は、疑いようもなく、主にCOVID-19ワクチン接種者と、以前に重篤なCOVID-19に罹った人々に対して発揮される。

私達は、今、最終段階にあり、津波がいつ現れてもおかしくないことを知りながら、水平線をただ見つめている。これ以上、私は何を言うべきなのだろうか。

熱力学の法則が、ますます私に明確に示していることは、どのようなモデルも、どのようなサーベイランス法も、遺伝子配列決定も、ウイルスの変異のどのような追跡方法も、いつ自然が、この超急性イベントを引き起こし、安定した低エネルギーの平衡状態を再建するのかを確実に予測することはできない、ということだ。

科学的真実を共有することは常に私の目標であった。それには、このパンデミックに対して行われた人為的介入の有害な結末について人々に警告することだけでなく、自然がいつ報復するかを予測することも含まれた。しかし、人類史上最大の、人類自身を巻き込んだ、機能獲得実験によってもたらされた、この悲惨でありながら好奇心をそそる現象についての、私の演繹的研究とその探索結果の発信を終わらせる時がきた。

私は、このパンデミックがいつ、どのように終わるのかについての予測に役立たないウイルス学的研究や免疫学的研究には、いくら分子レ(ルの詳細を明らかにしていても、興味を持てない。私はこれまでに、生物学的真実の多くを伝えることができたと思う。しかし、ついに私は、人類によって乱された健康上の混乱を、自然が再び掌握し、回復させるのはいつかを正確に予測することはできなかった、と認めざるをえない。先ほど述べたように、どのような分析もそれを明らかにすることはできない。前例の無い技術革命の時代に生きている私達であっても、これは完全に不確実なのである。自然にはかなわないのだ。これからは、残された貴重な時間を、自然の美しさと、それを敬う人々の美しさを探索し、賞賛することに費やしたいと思う。そして、個々の免疫系、さらには集団全体の免疫防御に対する、この狂った、前例のない介入がもたらす、想像もできないほど悲惨な結末についてより学びたいという、人々の幅広く誠実な興味がある限り、免疫生物学フォーラムに参加しつづけようと思う。

結論

高度にCOVID-19ワクチンを接種された集団での、多種多様な疾患の大規模な発生、ウイルスの今も続く進化、集団的な免疫失調の様々な症状、そして、他のウイルスによる動物のパンデミック(例えば、鳥インフルエンザ)や他のウイルス性呼吸器感染症の現在の流行(季節性インフルエンザ、RSウイルス、ヒトメタニューモニアウイルスなど)といった点と点をつないでいくと、これらの前例のない現象——とくに、それらの時間的空間的重なり——は、SARS-CoV-2パンデミックに対する集団としての宿主免疫反応に対して行われた無謀な人為的介入の間接的結果であるという結論を避けることは困難となった。

慢性COVID-19が急性COVID-19に置き換わるほど、私達はCOVID-19の入院と死亡の津波に近づいているのだ。

SARS-CoV-2に慢性感染した人々に出現したSARS-CoV-2潜伏系統が、高度にCOVID-19ワクチンを接種された集団がウイルスの病原性におよぼしている集団的な免疫圧力を克服しない限り、パンデミックは「準安定」状態に留まり、社会はパンデミックは沈静化しているとの印象を持つ。しかし、高度にCOVID-19ワクチンを接種した国での、他の呼吸器疾患の流行は、残された免疫圧力が崩壊する可能性を高めている。新たな「適切な」SARS-CoV-2系統の突然の出現は、高度にCOVID-19ワクチンを接種した国々に超急性のコロナウイルスパンデミックをもたらす可能性が非常に高い。私はそのような国の社会は不意打ちを喰らうと警告し続けている。

混乱を全て片づけ、秩序を取り戻すのは誰だろうか。

高度にCOVID-19ワクチンを接種した国々での、このような前例のない現象と、その時間的空間的重なりは、急性自己限定性ウィルス感染によって引き起こされたパンデミックの最中に、個人レベル、および、集団レベルで自然な免疫に介入することの有害な結果を浮き彫りにしている。私は、全ての点をつなげようと試みた。そして至った結論は、自然だけが、この免疫逃避パンデミックを終息させることができるということ、そして、無能さと無知を露呈し続けてきた公衆衛生当局や、いわゆる「専門家」たちが、公衆衛生の聖なる介入として推奨し続けているワクチンは、どれも、その経過に良い影響を与えることはない、ということを私達は認めなければならない、ということである。


図1

Figure 1

図2

Figure 2

脚注

[1] 準種(quasispecies)とは、突然変異と選択のプロセスによって生み出される、遺伝的には異なるが非常に類似した変異株の明確に定義された集合体である。準種の構成は動的であり、免疫反応や抗ウイルス治療などの環境変化による選択圧力を受けて、特定の変異株が優勢となる。準種内の多様性は、ウイルスが環境変化に素早く適応することを可能にし、生存上の優位性をもたらす。

[2] 細胞性免疫への転換は、体液性免疫の再集中に続いて起こる。これは、感染初期における細胞傷害性Tリンパ球によるウイルス感染宿主細胞の殺傷・排除から、樹状細胞による感染性ウイルス粒子の吸着・排除への転換である(図1および図2参照)。

[3] 慢性感染は、ウイルスに、長期間、複製し進化できる環境を与え、その特定の宿主の中での適応度を増した変異を獲得することを可能にする。この適応によって、ウイルスは細胞の種類や組織間での宿主内伝播により適したものとなる可能性がある。

[4] 潜伏変異株(cryptic variants) [訳注:以前の記事ではcrypticを「不可解な」と訳した(参考記事)]:潜伏変異株が持つ、SARS-CoV-2の慢性感染で選択された変異には、急性感染では一般的には見られない新たな変異が含まれている可能性がある。それらはいずれ、集団内で観察されるかもしれないが、それらに対し免疫圧力をおよぼさない集団や、適応上の優位性をもたらすような免疫圧力をおよぼさない集団では、広く拡大することはない。したがって、これらの変異株は、下水サーンベイランスや標準的なウイルス監視・追跡方法では通常は同定されない。これが、これらの変異株が「隠れた(cryptic)」と呼ばれる由縁である。しかし、例えば、高度にCOVID-19ワクチンを接種された集団*が発揮するような、特定の集団的免疫圧力がかかった場合、特定の新たな潜伏変異株が競争優位性を獲得する可能性がある。

*しかし、ワクチン接種の前にSARS-CoV-2に感染していた集団は該当しない。なぜなら、そのような集団は、中和力が不十分な抗スパイク抗体を持つ人々の割合が低いからである。

[5] 本稿では、「適切な(suitable)」とは、ウイルスのトランス感染とトランス細胞融合に対する、不十分な集団レベルの免疫圧力に打ち勝つために、十分に適応している状態を指す。

[6] 「準安定(metastable)」とは、一時的に安定した平衡状態を指す。この状態は、急な坂道の小さな穴にはまり込んだゴルフボールと考えると良い。ちょっとしたかく乱(選択圧力が弱い場合)なら、その穴の中でボールが回転するだけで、やがて静止位置に戻って安定する。しかし、かく乱が十分に強ければ(選択圧力が強い場合)、例えば、穴の狭い範囲から脱出するのに十分な力(より低いエネルギー状態に移行することを妨げているエネルギー障壁を克服するための力)が加われば、ボールは坂のより低い位置に転がり落ち、よりエネルギー的に低い、より安定な平衡状態に移行する。

[7] このパンデミックの後期にワクチン接種者が細胞性自然免疫の訓練をすることができたとしても、もはや集団免疫に貢献することはない理由の説明として、免疫生物学フォーラムで提起された質問と、それに対する私の回答を示す。
質問:「あなたは、COVID-19ワクチン接種者が(現在流行している他の風邪ウイルスへの)曝露から恩恵を受ける可能性があると言っているように思える。もしそうなら、それは差し迫った津波に対する逆圧力を作り出すのではないか? そして、変曲点に達した場合、集団免疫が可能になるのではないか?」
回答: パンデミックが慢性期に移行したため、他の「風邪」ウイルスは、ほぼ、SARS-CoV-2変異株に駆逐されることはなくなった(より正確な説明は本文を参照)。そのため、これらのウイルスは、特に訓練が不足しているCOVID-19ワクチン接種者や重度のCOVID-19を経験した人々に病気を引き起こす可能性がある。この状況は、免疫抑制状態にあるワクチン接種者にとって特に懸念すべきものである。そのような人々は重症化リスクが高いため、抗ウイルス薬治療が必要になる可能性がある。
しかし、他の人々にとっては、これは自然免疫系の訓練の機会となる可能性がある。ただ、これによって免疫防御は強まるかもしれないが、集団免疫を可能にするものではないことには注意しなくてはならない。なぜなら、細胞性自然免疫が例外的に強く、全てのウイルス負荷を獲得免疫とは全く独立して排除できる場合を除き、殺菌免疫を達成するには、自然免疫と獲得免疫の協調が必要だからだ。このレベルの免役能力は、現在、免疫逃避パンデミックの間に繰返しウイルスにさらされてきた非接種者で認められている。COVID-19ワクチン接種者の場合は、他の流行する呼吸器感染症に一度か二度感染すれば、その細胞性自然免疫を獲得免疫系と協調させることができるようになり、このような新しい感染に対しては殺菌免疫を発揮できる可能性がある。しかし、集団内を循環し続けているSARS-CoV-2変異株に対して集団免疫を形成できるほど、十分に強く、彼らの細胞性自然免疫を強化することはできない。その理由は次の2つである:

  1. 他の呼吸器感染症の封じ込めは上手く行くだろう。なぜなら、殺菌免疫によって、免疫逃避と再感染が避けられるからだ。

  2. SARS-CoV-2伝播の部分的な減少——しかし、完全な殺菌ではない——によって、ウイルスのトランス感染とトランス細胞融合に対して、集団レベルの選択圧力が急速に引き起こされることになる。

SARS-CoV-2の本来の感染性は既に上限に近づいており(最近の感染性の増加は、ごくわずかなものだ)、ウイルスの生存は、宿主内伝播を妨げている全てのブレーキを解除できるかどうかにかかっている。このため、病原性の高いコロナウイルスが自然選択されると予測され、超急性の致死性の津波が引き起こされるだろう。悲劇であるが、これはCOVID-19ワクチン接種者の大部分に影響する可能性が高い。なぜなら、現在流行している呼吸器感染性ウイルス(季節性インフルエンザ、RSウイルス、ヒトメタニューモニアウイルスなど)に感染して、その細胞性自然免疫を訓練する機会が得られるのは、健康なCOVID-19ワクチン接種者のほんの一部にすぎないからだ。

[8] 本稿では、「病原性(virulence)」とは、感受性のある個体において、ウイルスが宿主細胞にトランス感染し、トランス細胞融合する能力を指す。したがって、病原性は、曝露された個体の免疫状態に大きく依存する。



いいなと思ったら応援しよう!

ym_damselfly
いただいたサポートは一般社団法人ワクチン問題研究会に寄付されます。