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カウンセリング(エッセイ)
診療内科の先生が定年退職するそうで、今日が最後の診察だった。私の通うクリニックは待ち時間が長く、今日も1時間半近く待たされた。持っていた本を読み終え、待ちきれずトイレに行き、受付に順番を尋ねたところでやっと呼ばれた。待ちきれなかった自分を恥じながらドアをくぐった。
先生は定年後はアメリカに渡り、コーチングスタッフの仕事をすると言っていた。アメリカではビジネスコーチングとしてのカウンセリングが一般的で、報酬も日本より高いらしい。すこし卑屈な気持ちになったが、表情には出さなかった。
先生は餞別に海外の珍しいコインをくれて、私は「今までお世話になりました」と伝えた。これまでの儀礼的なやりとりが治療になっているとも思えなかったが、いまさらやめる理由もなかった。カウンセリングの日は決まって天気が悪い気がするけれど、実際のところはわからなかった。