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現代から戦争を描くこと 2024/05/27

『虎に翼』は第八週まで来た。伊藤沙莉が妊娠・出産で弁護士の仕事を続けられなくなり、夫の仲野太賀が出征するところまでだった。寅子が困難に突き当たり元気を失っていく無念さは見ていて泣きそうになるし、直三が気丈に振る舞う姿は胸を打つ。演技と演出がとても丁寧で、作品としての質がとても高い。

と、前置きはここまで。ここで考えてしまうのは、現代から戦争を描くということについてだ。

日本が戦後奇跡的ともいえる経済復興を果たしほぼ80年ほど戦争せずに済んでいるという事実は、あくまで結果論に過ぎない。いま私たちが平和を大切に思っていられるのは、結果的に戦争をせずにやってこれたからだ。当時の人々は現在のようになることを知らなかったはずだし、もっと酷い世界線だってありえたはずだ。

2024年のわたしたちの考え方や感情を持ち込んで戦時下の人々を描くということ、それは大文字の出来事のみ踏襲しつつ、ソフトな部分で歴史を改変していることにならないだろうか。(これは『ゴジラ-1.0』を見たときに思ったことでもある)

当時の人々が劣っていたわけではなく、むしろその時代なりに合理的な判断をして戦争が起こったという風に考えないと、本当の意味で歴史は反省できない。人間の考え方は時代によって大きく変わるし、より良くしていくこともできる。それが作品がいちばん伝えたかったことのはずだ。

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