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内見2日目 2024/03/23

阿佐ヶ谷一帯を管理する不動産屋はGoogle Mapsの口コミがとても悪く、下手な案内をされたら即座に帰ろうと決心して、私たちは店に足を踏み入れた。実際、担当者は愛想がかなり悪かったが、悪意があるというよりは無愛想な性格のようだった。

案内された下井草の部屋は、戸を開くと新品のいぐさの匂いが薫ってくる物件だった。正面の窓はかなり大きく、生活のイメージが手に取るように湧いてきた。駅から徒歩2分で、礼金が不要という条件も魅力的だった。各所の長さをメジャーで測って、高揚感を抑えながら帰った。

違和感に気づいたのは、夜に再びその物件を訪れたときだった。正面の道路に飲食店が並んでいて、想像以上に騒がしかった。また、家の周りを歩いているうちに、魅力的だった窓が北向きであることにも気づいてしまった。途端に入居条件の良さが「いわく」のように感じられてしまって、萎えた気持ちでマンションを後にした。

内見を繰り返すうちに理想の条件がどんどん厳しくなってきているようで、膨張した欲望が自分を苦しめているのがわかる。どこかで妥協しなければならないのはわかるが、期待と不安で心が揺れ動いてしんどい。最終的には疲れて決心するのかもしれないが、決心するに疲れなければならないのは、なんとかならないものなのか。

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