見出し画像

牛皿定食 2024/10/08

仕事終わり、吉祥寺の吉野家で牛皿定食を注文した。5分も経たずに到着した御膳には牛皿・ご飯・味噌汁・生卵が配置されている。まず牛皿に箸付けて、ご飯と交互に口に運んでいく。身体が食事に慣れてきたところで味噌汁に口をつけた。味噌汁は海苔と葱の風味がご飯の香りをよく引き立てる。白米が半分ほどに減ったあたりで溶き卵を勢いよくご飯にかける。生卵のとろみと牛皿の肉汁が混じるのを口いっぱいに感じて、味噌汁の温かさを流し込めば、あっという間に食器は空になっていた。

牛皿定食が4ピースバンドだとしたら、牛皿がギターボーカルである点については異論は無いだろう。おかずと交互に口に運ばれて食事のリズムを刻む白米は手堅いドラマーである。定食全体を下から支える味噌汁はベーシストだといえる。考えてみれば牛皿と味噌汁の出汁の風味こそ定食の「コード感」を決定づけているわけだ。

そこに名スライドギターとしての生卵が絡んでくる。生卵は白米の上に君臨することで定食全体に魔法をかける。牛肉の脂と絶妙なハーモニーを構成し、白米の甘さを引き立てる。そして口いっぱいに濃厚なとろみが広がったところを、味噌汁の塩気が引き締める。

これが例えばトンカツ定食であればキャベツと白米が互いを打ち消しあってしまうだろう。餃子であれば皮の風味がビールを呼び込んで、白米を遠ざけてしまう。牛皿定食のほかにこれほど最強の布陣などあり得ない。奇跡のバンドサウンドだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?