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京都のHUBでは(エッセイ)

今いろいろあって仕事が延びている。5時の定時を30分過ぎてもまだ帰れない。展覧会用のスーツもまだ脱げない。手持ち無沙汰で控室に座って、日記を書き始めてみた。ギャラリーには外の空気が流れ込みはじめている。京都の夜は寒い。日中との寒暖差が大きくて、昼間の服装だと夜には肌寒くなる。身体中の神経に普段がかかる感じがする。



結局、展覧会場を後にしたのは18時ごろだった。私と同僚は夕食にお好み焼きを食べた。値段の割に美味しくない店だった。食べ終わって、下戸の彼が珍しくアルコールを飲みたいと言い出し、二人でHUBに行くことになった。

HUBには外国人客が多く、店の半分以上を占拠していた。彼らの飲み方は日本人と大きく異なっていた。彼らは初対面でも容易に打ち解け合い、通路で立ち話をしている男女もいれば、ベビーカーを押している女性もいる。指笛の音も聴こえてくる。初対面のグループが溶け合い、ひとつの大きなパーティを形成していた。すごい光景だった。

それを遠目に見ながら私は、ハイボールを勢いで2杯も頼んでしまった。トイレに立つと身体がクラクラした。下戸の同僚は、カクテルを「アルコール弱めで」と頼むと予想以上にアルコールが弱かったようで、まったく酔っていなかった。



暗いニュースが多いと言われるが、確実に世の中は悪くなっているのだろう。社会はどんどんサバイバル化している。どんな状況でも、自力で、自分たちだけ助からないといけない。海外に出稼ぎに行かざるを得なくなる日も間近なのかもしれない。英語ができれば、あのパーティの輪に入れるものだろうか。当分、酔いは冷めそうにない。

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