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前輪後輪 2024/09/20

昼頃、上司がAmazonで注文していた台車が届いた。急ぎの用途もなかったが、上司は早速ダンボールを開封して組み立てはじめた。組み立てといっても、荷台部分の裏に車輪を取り付けるだけだったけれど、レンチを何度も使用する骨の折れる作業のようだった。私は遅い昼食に西友の親子丼を摂りながら脇で見ていた。

しばらくして、「あれ!?」と上司が声をあげた。どうやら、固定車輪と可動車輪の前後がわからなくなったようだった。同僚がスマホで「前輪が固定で後輪が可動ですよ」と調べて、上司はぶつくさ文句を言いながら車輪を付け直していた。

車輪を付け終えても、上司は納得していない様子だった。「ほんとにこれでいいの?」と言って、台車を押しながらウロウロウロウロしている。動物園のパンダのようだ。「重い物を載せるときは、後輪が動いたほうが小回りが効くそうです」と同僚は胸を張っていた。こっそり手元のパソコンで調べてみると、どうやら軽い物を運ぶ場合には"前輪可動・後輪固定"で、重い物を運ぶ場合には"前輪固定・後輪可動"と2パターンあるようだった。「そういうものか」と呟きながら、上司はしばらくウロウロし続けていた。

しばらくして、私は「じゃあ、台車を倉庫に下ろしておいて」と頼まれた。私は文房具の箱などをまとめて荷台に載せて台車を押してみた。すると、台車はフラフラとよろめきながら立ち往生した。シンプルに、めちゃくちゃ押し辛い。

事務所で台車に載せるものは世間一般の基準でいえば「軽い」ものしかないのだろうから、前後の車輪が逆なのは明らかだった。けれども時すでに遅し、「付け直しましょう」と提案できるはずもなく、私は平静を装って台車を押した。結局、使わされるのは私なのだから、私さえ我慢すれば丸く収まるのだ。

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