向いていない 2024/05/20
仕事の成果がなかなか出ない状況が続くと、だんだん「この仕事向いていないかもしれない」という気持ちに浸食されていく。この仕事向いていないと思えば、次に思うのは「じゃあ向いている仕事って何だろう」で、結局「自分には何も向いていない」という悲しい結論にたどり着く。もう30なのに、働き始めた頃から何も抜け出せていない。
久しぶりに再読した田中和将の『群れず集まる』に、こんな一節があった。
前に読んだときには読み流していたが、今読むと心に留まるものがあった。これほど充実した表現活動をしているGRAPEVINEですら「向いていない」と思うなら、誰が音楽に向いているのだろう。本人の孤独というのは、傍からはほんとうにわからない。
「向いていない」という気持ちは、本当の向いていなさから来ているのではなく、ある種の向上心が変態したものであるように思える。別の見方をすれば、人に「もっと向いている仕事がある」とでも囁きかけるような、強迫観念的なものがはびこっているのではないか。囁きに真面目に取り合うか受け流すかの問題だというのは、簡単に片づけすぎだろうか。
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