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書くことが無い状態とは?
何も書くことが無いというか、浮かばない。脳に言葉の風船が膨らんでいれば、結び目をほどけば文章は出来上がっていく。けれど今は、心の中に空気圧が感じられない。とても穏やかな、凪のような状態。
書くことが無い状態とはどのような状態なのか?自分を俯瞰で盗撮する監視カメラを想像してみる。もしくは、物陰に隠れた私のストーカーになりきってみる。その日の私はきっと、そこそこ充実した、澄んだ表情をしているのだろう。今日は疲れてもいない。
私が聴いて育ってきたロックンロールの世界は、ルサンチマンを原動力とする文化だった。社会への文句をたっぷり詰め込んだバンドが、イライラとギターを掻き鳴らし、喚き散らす。けれど、バンドが長く続いていくうちに、勢いは衰え、社会への不満は解消していく。サウンドからは緊張感が消え、退屈さに取り込まれる。歌う必要のあることが無くなるのだろう。
自己表現を動機とした活動は、自分自身が理解されていくにつれて満足していき、表現意欲が萎んでいく。高い水準の作品を発表し続けるアーティストには共通して、「○○とは何か?」「××はどうあるべきか?」という普遍的な問いがある。自分自身に根ざした、けれど自分自身の枠に収まらない、普遍的な問いだ。
ひとつだけでいいのならば、良い作品を残すのは難しいことでは無いのだろう。けれど、良い作品を残し続けたいのであれば、自分自身の枠外にある問いを見つけなければならない。不満が無いから書けなんて甘い。今日は自戒も込めて。