ブロックチェーンで変わる次世代のデジタルアートマーケットプレイス
ブロックチェーン上で動くデジタルアートのマーケットプレイスをテストネットでリリースしました。
※使用するにはEthereumに接続できる専用のブラウザが必要です。(ChromeプラグインであるMetamaskをインストールしてください)
本記事では開発に至った動機、そしてGALOは何を解決するプロダクトなのかについて触れます。
なぜゴッホの絵は高値で売れるのか?
きっかけは素朴な疑問から生まれました。
「なぜ絵画には値段がついて、デジタル作品には価値がつかないのか」
紙の方がコストがかかるとか、クオリティが高いとかは全然思いません。デジタル作品の中には相当時間をかけて作成するものもありますし、アーティストが込める想いやクリエイティビティに違いはないはずだからです。
ではなぜ実物の絵画は売れて、デジタル作品は売れないのか。
理由としては、ピカソでもゴッホでもリアルな作品は物理的な制約によって希少性が生まれるために市場価値が付いているのではないか。つまり数に限りがある、そこにしか存在しないものであるからこそ需要が生まれるという考え方です。
それに対してデジタルアートの場合は、実体は0と1のデータなので無限に複製することができます。
限界費用が0に近いということです。
それに一度インターネット上に流出してしまうと、コピペし放題です。
これはデジタルコンテンツ全般の課題ですが、コピペに関して完全な解決方法は現状ありません。規制によって抑制するのが関の山といった状況です。
いくらでもコピペできるものに対して価値が付きづらいのは想像できます。
それを言ったらKindleとかもデジタルデータを売ってますが、あれはインターフェースで上手く解決しています。クローズドのプラットフォームでコンテンツを消費するように囲い込めれば価値が付きやすくなります。
ただし注意点がひとつあって、そのプラットフォームが突然閉鎖されてしまうリスクがあることです。例え閉鎖されなかったとしても、事業者がそのコンテンツを突然削除する可能性もあります。本当の意味で自身が所有しているとは言えないのです。
(ただKindle的な解決方法も個人的にはありだと思っていて、今後デジタルアートの世界にも同じ波が来るかもしれません)
ここで焦点を当てたいポイントは、
絵画には物理的な制約があること(数に限りがあること)
コンテンツを所有しているということが保証されていること
です。
絵画は手に持っていること自体が所有しているということ示していますし、有限です。
ではこの2つの課題に対してブロックチェーンで解決することができるのか?
もしデジタルの世界でもその希少性と所有権の証明を再現することが出来たら新しい価値観が生まれるんじゃないか、と考えたのがモチベーションの一つです。
ブロックチェーンで希少性を担保する
ではブロックチェーンでどのように希少性を担保するのでしょうか。
それはブロックチェーンが持つ「価値の保存」という機能によって実現します。
ブロックチェーン技術を活用したサービスで一番有名なのはビットコインですが、なぜあれほど注目されているのかというと、今までインターネットに存在するあらゆる情報は各コンピュータに個別に保存されているに過ぎないものであり、データの複製や移動も個々の端末に依存している存在でした。
金銭の授受といった情報に関しても、実際にお金が存在しているわけではないので、各々の保有額をコンピュータ上で差し引きしているに過ぎません。
それに対してブロックチェーンは「共有可能」なパブリックなネットワークに取引情報(トランザクション)を保存することを提案したのです。しかもその情報は容易には改竄できない仕組みになっています。
つまり、誰にでも明らかな形で価値の移動を実現することができるようになったのです。
これは今までのデータの複製・保存とは別次元の話であり、インターネット上で確かにそこに存在しているかのように振る舞います。
これがブロックチェーンが価値のインターネットと呼ばれる理由であり、この性質を利用することによってデジタルデータに物理性を持たせることが出来るのではないかというのが基本的な考えです。
実際にはEthereumというブロックチェーンを使います。
Ethereumは分散型アプリケーションを構築することができるプラットフォームであり、改竄できないプログラムを実行することが出来ます。
デジタルアートをハッシュ化し、ブロックチェーン上のデータとして管理することによって唯一性を確保し、かつ誰に対しても所有権を主張できるというアイデアです。
ハッシュ値をブロックチェーンで管理するのなら実際のファイルはどこで管理するんだ?という疑問が浮かびます。
実はEthereum上でファイルを保存するととんでもない手数料がかかってしまうので、分散ストレージシステムのIPFSにファイル自体はアップロードしています。(EthereumのSwarmというプロジェクトを使えばIPFS同様にストレージ機能を使うことが出来ます)
ファイルそのものはIPFSで格納し、ファイルのハッシュ値をEthereum上で管理するといった仕組みです。
※ちなみにハッシュ化してブロックチェーンに刻むというアイデアは割と有名で、特に目新しいというわけではありません。海外のプロジェクトだといくつか事例もあるみたいです。
所有権を売買する
ブロックチェーン上で動作するプログラムはスマートコントラクトと呼ばれます。
それぞれのトークンに所有権を設定し、取引によってその所有権を移譲できるスマートコントラクトを構築することでデジタルアートのマーケットプレイスを構築することが出来ます。
また、売買などの流動性は全てパブリックなブロックチェーン上で実現します。そのため例えサービス提供側だろうと改竄や停止することは出来ません。これがブロックチェーンアプリケーションが非中央集権的と言われる所以です。
(ちなみにここには一つ注意点があって、ブロックチェーンとやり取りしているインターフェースはサービス提供側が管理しているため停止されるリスクはあります。しかし、裏側のデータや仕組みは半永久的に存在し続けることが出来るという概念です。)
セカンドマーケット(二次流通)における作者への報酬の仕組み
実はGALOにはもう一つ目的があって、それはセカンドマーケット(二次流通)におけるアーティストへの報酬の仕組みをデザインすることです。
イメージとして印税みたいなものです。
つまりアート作品がより流動的であればあるほどアーティストに還元されます。
普通であれば一度手を離れた作品がどこでいくらで売買されようと、アーティストには支払われません。
これだとアーティストに対する経済的なインセンティブが上手く働かない可能性があります。
インセンティブが上手く働かないということは飯が食えるアーティストの絶対量が減ってしまいます。
これは物理的なアート市場では解決が難しいような気がします。
しかし、スマートコントラクトを使った取引では売買が成立するごとに自動的にアーティストに報酬が支払われます。
これはブロックチェーンというパブリックなプラットフォームの上にマーケットが構築されているからこそ実現できます。
GALOの収益モデルは、取引成立時の手数料です。
プラットフォームとして10%、アーティストへ10%が支払われる仕組みにしています。
ブロックチェーン×アートの未来
まとめるとGALOで解決したい課題は2つでした。
デジタルアートに物理性を与えること
そして2次流通における作者への報酬の仕組みを整備すること
もちろんこれはデジタルアート分野における課題の一部にフォーカスしたものに過ぎないので、課題が変わればソリューションも変える必要があると思っています。
例えばトレーサビリティーの課題などはこのプロダクトでは解決できませんし、その他にも業界の課題は色々あるかと思います。
実際ブロックチェーン×アートの分野は世界でも様々な取り組みがなされています。
この分野で初期のころから活躍していて一番有名なのは「Dada.nyc」でしょう。サイトもかなりアーティスティックで個人的にかなり好きなプロジェクトです。
国内でも最近「スタートバーン」さんがブロックチェーンを使ったサービスを発表していました。どんなプラットフォームになるのか楽しみです。
ブロックチェーンは技術的な革新性はあるものの、具体的なユースケースとなるとそれブロックチェーンじゃなくてよくね?なパターン多いので、その中でもアートとの組み合わせはしっくり来る感じがします。
この分野がもっと盛り上がるのを期待しています。
最後に
GALOはデジタルアートの所有や売買に新しい価値観を提案するプロダクトとして開発しました。(シンプルに作りたかっただけ)
作品が多くの人の手に渡りながらあなたが作者であることを永遠に実感させてくれるようなプラットフォームを目指しています。
コンセプトは「ただひとつ ここにある デジタルアート」
今回はWhyの部分にフォーカスして話しましたが、そのうち技術的な話もしていこうかなと考えています。
ありがとうございました。
※GALOは現在テストネットですが本番リリースするかは検討中です。日本の法律的にかなりグレー寄りなのでその辺りの課題がクリアになればリリースするかもしれません。
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