【兎草子】ローカル線存続を左右する都道府県知事の意思(24/11/28)
末端区間の廃止が決定した津軽線の訪問記を書いていたら、今度は立て続けに同じくJR東日本の久留里線の末端区間、そして同じく青森県の弘南鉄道大鰐線の事実上の廃止計画が公表されました。
廃止に至る経緯や、それぞれの路線が抱える事情は異なるのは承知の上ですが、JR東日本が急ピッチで不採算路線の処理=廃止または地元自治体の支援取り付けに動いているような気がしてなりません。
一方で、鉄道路線というものは、実際に廃止となれば地元自治体の同意が必要となるということが規定されているのですが、これまた自治体によって考え方や対応はさまざまです。そして、決定には地元市町村の意向はもちろんですが、都道府県いや都道府県知事の意思が大きく影響しているように感じます。
地元が「廃止しないでほしい」と言った場合に、鉄道会社側は「赤字なので維持できないんです。維持するなら地元も支援してもらえませんか」となるのですが、ここでの「支援」とはつまり赤字補填=「お金」ということになります。とはいえ、ちょっとしたローカル線であっても年間の赤字額は億単位以上が普通で、地元の市町村レベルでは対応しようがないのが現実です。だって全国の自治体のほとんどは国から地方交付税が支給される赤字自治体ですからね。
したがって、鉄道を維持するお金を拠出するには都道府県レベルの支援がほぼ必須となるわけです。
鉄道維持に積極的な県の代表例として青森県のお隣の岩手県があります。
国鉄を解体してJRに民営分割する際、赤字の大きい地方交通線(ローカル線)を全国で廃止することになりましたが、そのうちに半分ほどは道府県も出資する第三セクターして再スタートを切りました。
岩手県も超赤字路線であった久慈線と宮古線の2路線を第三セクター三陸鉄道として維持することを決定しましたが、それだけでなく、そもそもこの路線は宮城県から八戸までの三陸沿岸部を結ぶ路線の一部で未完成なのだから、完成させてから(岩手県部分を)引き取るという方針を打ち出したのです。
三陸地方は、何度も津波被害に遭い、一方で交通手段が貧弱なので、交通網整備は悲願だったのです。(この時点ではまだ三陸道の計画などないに等しかった) そして、宮古〜久慈間の北リアス線と、盛〜釜石間の南リアス線を3セクとして開業させました。その後東日本大震災により大きな被害を受けた釜石〜宮古間も復旧の上引き取るという決定をし、今や三陸鉄道は盛から久慈までの163キロにも及ぶ路線として地元および観光の足となっています。
この取り組みは、まさに県の姿勢そのものだと思います。
また、只見線では災害による運転見合わせに対して、多額の復旧費用を拠出するとともに復旧後は上下分離により線路等のインフラを自治体で所有・維持することを福島県が主導して進めることで、路線維持につながりました。
一方で、同じ東日本大震災で被害を受けた鉄道路線でも、宮城県は鉄道での復旧を断念してBRT(Bus Rapid Transportaion)、つまり専用道を走るバス化を選択しました。また、津軽線のように災害復旧費用ほかの県などの自治体負担議論はほぼなく、廃止を決定したケースもあります。
たまたま、今東北各県の例を挙げましたが、似たような地域でもこれだけ対応が異なるのは、都道府県知事の姿勢、意思によるところが大きいのは間違いないと思います。
これは、整備新幹線の開業に伴って3セク化される幹線引き受けとは別の次元の話です。
今、東北では、山形県と新潟県を結ぶ米坂線が、やはり災害による運転休止が続いていて、復旧に対してJR東日本が地元自治体の支援を求めていますが、山形県・新潟県の反応は鈍く、なかなか話が進んでいないようです。
まだこの件がどうなるかはわかりませんが、関心を持ってみていきたいと思います。