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統率者戦のガチとカジュアルの考え方

ずっと盛り上がってるので書いてみたくなってきました。なので書きます。
この文書では、カジュアルな統率者戦のデッキを組むにはどういうところに気を付けた方が良いかの指針のようなものを示すことを目指します。


ガチとカジュアルとはそもそもなんだろう

ここをまず明確にしていきましょう。

このような場合のアプローチの一つに名前の辞書的な定義から探っていくアプローチがあります。しかし、(偏見に基づく直観ですが)ガチとカジュアルが体をちゃんと表した名であるとはあんまり思えないので一旦この二つの言葉は忘れます

忘れたところで、ガチカジュ論争を眺めていると、統率者戦をプレイするプレイヤーには、勝利を第一義的に指向するプレイヤーと、そうではないプレイヤーが居るような前提があるように見えてきます。これは筆者の感覚としても「それはあるかもねえ」ぐらいの温度感になってきます。これを一旦採用しましょう。

統率者戦で勝利を指向することは大変

実は統率者戦で勝利を目指すことは結構大変です

まず単純にプレイヤーが4人なのに勝利できる人は1人なので通常の2人対戦のMtGと比較して勝利できる人数が半分になってしまっています。プレイヤーが4人ということは、アクティブターンも4ターンにつき1ターンしか回って来ず、これも通常のMtGの半分です。何もかも半分かと思えば、出し抜かないといけない相手は1人から3人へと3倍に増えています。場合によっては他のプレイヤーと利害が一致したりすることがあるので単純に3倍ではありませんが、真正面から勝ちに行けば飛んでくる妨害は3倍です。

この過酷な戦場(ルール用語ではない)に臨むにあたってプレイヤーの手札(ルール用語ではない)は磐石なものではありません。統率者戦のデッキは基本土地以外のカードは(《執拗なネズミ》などデッキの枚数制限を書き換えるカードを除いて)1枚ずつしか入れることができません。

日本語版《執拗なネズミ》カード画像

その上デッキの枚数は100枚と膨大です。ルール上歴代の強力なカードがほとんど全て使えるとしても、統率領域に置かれる1枚ないし2枚のカード以外は1/99ないし1/98でしかありません。統率者戦で引いてくるカードは氷が全部融けたカルピスのようなものです

それでも統率者戦で勝利したい

そういった強い思いが力となります。

統率者戦の困難さをまとめると次の3点になります。

  • プレイヤーが4人なので、出し抜いて倒す必要があるプレイヤーが3人も居る

  • アクティブターンが4ターンにつき1ターンしかないため、チャンスを逃すと次のチャンスが遠い

  • 100枚のハイランダー構築なので、引いてくるカードの価値が安定しない

この三つの困難を克服しようとする力が強いほど、勝利を第一義的に指向する傾向が強いと言えるでしょう。この力のことを、ここではガチパワーと命名します。

ガチパワー

ガチパワーは前述の統率者戦の困難に打ち克とうとする力です。

ガチパワーが克服する困難その一

克服すべき困難の一つ目は「出し抜いて倒す必要があるプレイヤーが3人も居る」です。

《雪花石を率いる者、ブルーナ》という統率者があります。

日本語版《雪花石を率いる者、ブルーナ》カード画像

このカードは、攻撃した時に戦場や手札や墓地から好きなだけオーラを自分に付けることができます。これにより《堕落した良心》や《エルドラージの徴兵》などを付けて悪堕ち天使になり対戦相手を一人ずつぶちのめしていきます。

日本語版《堕落した良心》カード画像
日本語版《エルドラージの徴兵》カード画像

お察しの通りこのような勝ち方はとても悠長で、ガチパワーは低いです。どのような勝ち方を目指せばガチパワーが高まるかと言えば、3人まとめて倒すことがまず挙げられます。

日本語版《太陽冠のヘリオッド》カード画像
3人まとめて倒すカードの例
日本語版《歩行バリスタ》カード画像
3人まとめて倒すカードの例

また、2人対戦では等価である「自分が勝つ」と「相手が負ける」が4人対戦の統率者戦では全く意味が異なり、「自分が勝つ」ことは「相手が負ける」3個分の価値を持ちます。そのため、「あなたはこのゲームに勝利する」と書いてあるカードはガチパワーが高い傾向にあります

日本語版《タッサの神託者》カード画像
「あなたはこのゲームに勝利する」と書かれたカードの例

ガチパワーが克服する困難その二

克服すべき困難の二つ目が「チャンスを逃すと次のチャンスが遠い」です。

統率者戦で勝利するためには、3人の対戦相手の妨害を掻い潜り勝利手段を通していく必要があります。そのためには多くの場合でたくさんのカードをプレイする必要があります。アクティブターンを返すとしばらく戻ってこないため、可能であればこれを1ターンで終わらせてしまいたいです。つまり「テンポアドバンテージを取ってやるぞ!」という思いがガチパワーを高めます。

テンポアドバンテージという言葉が出てくるときには、軽いカードを多く入れて1ターンに複数プレイするようなことが多いですが、マナがたくさん出てたくさんカードがプレイできたらそれはそれでテンポアドバンテージです。つまり強力なマナ加速はガチパワーを高めます

日本語版《波止場の恐喝者》カード画像
強力なマナ加速の例

ガチパワーが克服する困難その三

克服すべき困難の三つ目が「引いてくるカードの価値が安定しない」です。

今この場に必要なカードだけ引きたい」という思いがガチパワーを高めます。これは即ちいわゆるサーチカードです。強力なサーチカードは強力にガチパワーを高めます

日本語版《吸血の教示者》カード画像
強力なサーチカードの例

そして忘れてならないのが統率領域です。サーチするまでもなく必要なカードが統率領域に置いてあったらそれが一番良いです。勝利手段に直結するようなカードであったり、統率領域に置けない重要なカードを引き込むためのカードであったり、勝利へ向かうために必要なリソースを確保するカードであったり、そういった強力な統率者はガチパワーを押し上げます

日本語版《眷者の神童、キナン》カード画像
強力な統率者の例

ガチパワーのまとめ

以下のような要素がデッキのガチパワーを高め、勝利を第一義的に指向する傾向が強まります。逆にこれらの要素を薄めることによってカジュアルな傾向のデッキを作ることができるはずです。

  • 一度に対戦相手3人をまとめて倒せるような、あるいは自分だけ勝利するような強力な勝ち手段

  • より多くのカードを、より早くプレイするための強力なマナ加速

  • 必要なカードを必要な時に用意するための強力なサーチ

  • 強力な勝ち手段であったり強力なマナ加速であったり強力なサーチであったり、あるいはそれらを運用するためのリソースを生み出すカードであったりする強力な統率者

カジュアルな統率者戦デッキの作り方

……と、その前にお馴染みの晴れる屋さんの記事です。

この中に有名な「統率者テーブル、君はどこに座る?」チャートがあります。

「統率者テーブル、君はどこに座る?」チャート

このチャートに出てくる質問を見ていきましょう。

困難の克服その1
困難の克服その3
困難の克服その3
困難の克服その2
困難の克服その3

という事でこの記事は統率者戦の性質から「統率者テーブル、君はどこに座る?」チャートの妥当性を導く記事でした。いかがだったでしょうか

釈明

だいたいの構成を組み上げる所までは冒頭に書いたようなカジュアルな統率者戦のデッキの組み方を、統率者戦の特性からゼロベースで導いていくことを目指していました。導かれた先に「統率者テーブル、君はどこに座る?」チャートがありました

ずっとお世話になってますが、改めてすごい企業だと思いました。伊達にミーティングがMTになってないですね

晴れる屋 MTG, 「このMTG用語、なんて略す?【MTG常識王】」より

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