買取店の選び方
Xなどでもちょっと話題になりましたが、買取店が景品表示法の規制対象となりました。
不景気と金相場高騰を背景に急拡大を続けている買取店ですが、本当にすごい広告を打っているので規制はやむなしですね。
そんな社会の悪たる賎業の買取店も、不要品が現金になるのは嬉しいことなので、使う選択肢は持っておいても良いでしょう。この記事ではそうした場合にどのように店を選んでどのように売ると良いのかを書いていきます。
以降この記事では「買取店」とは貴金属やブランド品の買取を行う店とし、売るものも貴金属やブランド品とします。
店選び
まずぶっちゃけた話をすると、行きやすい店で良いです。
実のところ買取店同士で大した差はないです。違いはなくはないのですが、まあまあ誤差なので交通費などで考えましょう。
買取店の種類
買取店の分類はざっくり三つです。まず無店舗かそうでないか。そうでない場合には店舗で買取品を販売しているかしていないか。この三つです。
無店舗型
店舗を持たずに買取をやっているような業者です。どのように買取をするかというと、「宅配買取」か「出張買取」です。家にいながらに取引ができるので楽ですが、まあまあトラブルが多いです。おすすめはしません。ちなみに店舗を持ちつつ「宅配買取」や「出張買取」を行っている買取店も多いです。特に「出張買取」はどこでもやってるレベルです。儲かるっぽいですね。
さて、どうトラブルになるかですが、宅配買取の場合にまずあるのが「事前査定から大幅減額されて買い叩かれる」というものがあります。実務上やむを得ず実際に品物を見て事前査定の値段では買えないことはまあまあ発生するのですが、悪質な買取店は事前査定を囮価格にして買い叩いてきます。値段に納得いかなければ返送してもらう必要があり、それを面倒に感じてそのまま売ってしまう人もいます。宅配買取の狙いはそこです。
そこを乗り越えて返送してもらうことになったとして、その返送がつつがなく終わる保証はありません。返送するとなった途端に対応が鈍くなったり、しつこく問い合わせてやっと返送されてきたと思ったら違う物が入っていたりすることは十分に想定されます。本当に宅配買取はおすすめしません。悪質な業者ばかりではありませんが悪質な業者を引いてしまった時の厄介さが段違いです。
出張買取はまだマシですがそれでもヤバい業者はかなり想定できます。出張買取は「特定商取引法」の規制対象なのでクーリングオフができるなど様々な規制が入っていますが、「そんな法律知らねえ」とばかりに違法行為をする業者や、そんな法律知らないので違法行為をしてしまう業者がいます。そのような業者にしっかりと備えておきましょう。悪意だろうと無能だろうと厄介なことには変わりないです。
この悪意ないし無能に備えるには、まずは法令を知ることが大切です。これはこの記事で説明するよりも消費者庁の特定商取引ガイドを読むのが良いです。事例集の方にもしっかりと目を通しましょう。
さらに売却予定の品物のだいたいの価値は予め把握しておきましょう。そうしておけば買い叩こうとしている業者は価格提示の段階で把握できます。クーリングオフで契約を解除できるとは言え、しなくても良い契約は最初からしない方が良いです。悪質な業者を引いてしまうと、クーリングオフで契約を解除する段階で面倒なことになりかねないという悲しい現実もあります。
そしてもう一つ大切なのが一人で業者を呼ばないことです。相手はプロとして買取をやっています。ごねて食い下がって粘り買うプロです。このプロが徒党を組んでくることも珍しくありません。こちらも徒党を組みましょう。その際には徒党を組んでくれる人とはしっかりと特定商取引法ガイドの読み合わせを行っておきましょう。法令を把握することが身を守ることに繋がります。
大げさな話に聞こえるかもしれませんが、得体の知れない人を家に上げると考えるのなら、用心しすぎることはありません。玄関先で事を済ますぐらいでも良いかもしれません。
実店舗型
店を構えて買取店をやっている業者です。このタイプの業者にはさらに、その店舗で買い取った品物を売っている業者と、買い取るだけの業者があります。後者のタイプは店舗面積をあまり必要とせず比較的少ない資金から始められることから、フランチャイズ契約で個人経営しているような店も少なくないです。以降、前者のような店舗を中古店、後者のような店舗を買取専門店と呼びます。
さて、中古店は買い取った品物をその店舗で販売しているので、その販売価格を決定する人が居ます。買い取りの際の査定もその人が行えます。そのため、中古店は査定が速い傾向があります。これは買取専門店と比較したメリットになりやすいです。
買取店なんだから査定が出来る人が店にいるのは当然だろうと思うかもしませんが、買い取った品物を業者に転売することがメインの店では、転売先の業者の買取価格が重要となるので、その店の鑑定士が「これは何円だ」と言うことの価値は実は薄くなってきます。そのため、特にフランチャイズ契約の店では、査定の核心部分を外注しているパターンがとても多いです。この場合には、その場で査定が完結しないため査定が遅い傾向があります。
ここまで査定にかかる時間の話しかしていませんが、肝心の買取価格はどうかというと、一概にどちらが高い/安いとは言い難いです。素朴に考えると、間に入る業者が少ない中古店の方が高くなりそうですが、問題はそこまで単純ではありません。古物の需要は時期性や地域性がとても強く出ますが、中古店の買取価格はその店で売れるであろう価格を超えることは基本的にありません。それに対して買取専門店の転売先の業者は、さらに古物市場、オークションを持っている場合が多く、そこからさらに広い範囲の業者にアクセスすることができます。間に入る業者の数が増えようが、最終的な価格が充分に高ければ、買取専門店の買取価格が中古店の買取価格を上回ることは十分に想定できます。
店選びの冒頭で「実のところ買取店同士で大した差はないです」と書きましたが、これは正確には「差はあるが計測することが非常に難しい」となります。
高く売る
ということで、どこで売っても同じではありませんが、最良を見つける労力に見合う差はありません。どう売るかで一番差が出ます。
物を高く売るには、まず第一歩として売ろうとしている物の価格をざっくりで良いので把握しておく必要があります。
ブランド品の価格を調べる
簡単に言いましたが結構難しいことです。
すぐに調べることができて参考に出来るものとして、中古の再販売価格があります。ここを超えることはないだろうという上限値になります。問題はその上限値としての質がどれほど良いか、つまり買取価格の上限にどれだけ近いかですが、あまり良い上限とは言えません。と言うのも中古の再販売価格には在庫リスクのヘッジ分が乗ってきます。1万円で売ったギターが100万円で売られていても、売れなければ買取店は1万損している状態です。買取価格や中古の再販売価格は、品物の価格に加えて、どれだけ動く品物であるかによって変わってきます。これを素人が判断するのは難しいです。
ではどうすれば良いかというと、買取店に査定を出させるのが一番簡単で確実になってきます。身も蓋もない話ですが結局のところ相見積もりが一番強いです。
じゃあ早速相見積もりを取りに行こうと、「査定だけでも結構です」と謳う買取店に品物を持っていくと、気付いたら品物を置いて現金を持って帰っていたということがしばし発生します。というのも落ち着いて考えて査定だけで結構なわけは無いので、相手は全力で買い取ろうとします。そしてその相手はごねて食い下がって粘り買うプロです。このプロが徒党を組んでいることも珍しくありません。査定だけ持って帰るという強い意思を持って身構えて臨むことなし生還は難しいです。ちなみに店舗での買取ではクーリングオフができないので、売ってしまったら取り戻すことは難しいです。
そもそも相見積もりを取るためにいきなり店舗へ行くのは早急です。古物取引では基本的に品物を持っているやつが一番強いです。品物を持って相手のテリトリーに飛び込むのはそのアドバンテージを活かせていません。まず第一段階として、品物を自宅に置きながら査定を手に入れましょう。自宅で撮影した写真を送ると、ざっくりとした査定額を提示してくれるサービスは探すとたくさん出てきます。用語としては「LINE査定」と呼ばれることが多いです。この査定額は業者それぞれが限られた情報からリスクリターンを考えてそれぞれの考え方から提示されてくるため、上にも下にも盛大にぶれますが、いくつか収集すればざっくりとした価格はわかってくるはずです。そしてそれらの査定額を持って実際の店舗へ向かい相見積もりを取っていきます。
貴金属の価格を調べる
ブランド品と違ってこちらは単純明快です。金の品位と重量が分かれば発表されている相場に当てはめるだけです。計算自体は算数です。
問題は重さはともかく品位をどう調べるかですが、アクセサリーなどに使われる金はだいたい18金なのでとりあえず18金で計算しておけば良いです。
もう少しちゃんと調べるのなら、金製品はそのどこかに品位の刻印があります。それを探して、読み取って、ググると、品位がわかります。小さな品物だと刻印も小さくなるので、場合によってはルーペがあった方が良いです。
重さの方は電子天秤などで量るだけですが、注意点として貴金属ではないパーツの重さを差し引く必要があることが挙げられます。例えば金縁眼鏡は金以外の重量がかなりあります。また、パーツによって金の品位が異なるような製品も存在します。例えば、18金のネックレスに純金の金貨がペンダントトップに付いているようなアクセサリーです。
もう売ると決めてしまっているものなら、貴金属でないパーツをペンチなどで無理矢理外してしまっても良いですが、その貴金属ではないパーツが宝石の場合には注意が必要です。ダイヤモンドを筆頭にエメラルド、ルビー、サファイアなど宝石として取引されるようなものは、それ自体に価値がある上に、その鑑定には専門的な知識が必要です。そのため、価格の調べ方はブランド品と同様に相見積もりで調べていく必要があります。
ブランド品の売り方
だいたいの価格を調べることが出来ているのならめちゃくちゃな買い叩きはされません。行きやすい店へ行って、LINE査定の値段をちらつかせながら多少ごねれば大丈夫です。徒党を組めるのなら組んでおくとなお良いでしょう。
時間と手間を掛けても良いのなら、最初の店としてちょっと遠くの店へ行き、「ごねごねにごね倒して出てきた一番高い値段を品物と一緒に持ち帰り、次の店の起点にする」というカスのループを二回か三回ほど回せば飽和するはずです。時間と手間の他に人間性の喪失も必要でした。申し訳ございません。
このカスのループを回していると(何ならちょっと売るのを渋るぐらいでも)、「今だけの特別なキャンペーン」だとか「今だから出せる金額」だとか、判断を急かすような言葉にたくさん遭遇します。そのような『今だけ』のキャンペーンや『今だけ』の金額は基本的に存在しないため、この度景品表示法の規制対象に含まれることとなりました。この記事の一番大事な部分です。ここだけでも覚えて帰ってください。
貴金属の売り方
貴金属は買取店の主力品目なので、隙あらば全力で買い叩いてきます。ここで必要なのは「お前らのやっていることは丸っとお見通しだが、お前らだって利益は欲しいだろう?」と逆に買取店の足元を見ていくことです。前述の通り古物取引で一番強いのは品物を持っているやつです。強く出ていきましょう。
具体的には「相場によって決まる価格に対して店の利益として何パーセントを取りますか?」というようなことを電話などで聞きます。ここまでわかってるやつに無茶なことをする買取店はまずないので、淡々と順当な取引ができるはずです。店頭に品物を持っていった後も、品位ごとの相場と買取単価を提示させ、目の前で計量して貰いましょう。そこで拒否されるのなら次の店へ行きましょう。貴金属の買取は買取店であるのならどこでも同じです。
なお、田中貴金属のRE:TANAKAの取扱店があるのならそちらに行った方が買取額は高いし話も早いです。
買取店が収集する個人情報
古物の取引をする際には様々な個人情報を書面に記入して提供することを求められます。これは古物営業法により古物商は取引の相手方の個人情報を確認する義務があるからです。実際に条文を見てみましょう。
という事で取引の相手方の住所、氏名、職業、年齢を確認する義務が古物商にはあります。
ところで、買取店ではしばし住所、氏名、職業、年齢(ないし生年月日)の他に電話番号を書面へ記入することが求められます。これは古物商の義務には無いことです。とは言え、取引上必要になる連絡を迅速に行えるという点で電話番号を控える意味は無くはないでしょう。これだけなら社会通念上問題ないでしょう。ガツガツした買取店はこれを営業電話に使ってきます。嫌な場合にはその場で営業電話があるかどうか確認しましょう。そもそも電話番号を確認する義務はないので、記入しないのも手です。ごねられるかもしれませんが、面倒なことになってきたら次の店に行きましょう。古物取引は品物を持っているやつが一番強いですし、買取店は掃いて捨てるほどあります。
まとめ
どこで売るかよりもどう売るか。
「出張買取」は気軽にやってはいけない。
「宅配買取」は基本的にやってはいけない。
売る前に売るものの価値を調べる。
買取店の『今だけ』は明日以降もある。
貴金属の取引は仕組みを理解していることを見せつけていくと話が早い。
RE:TANAKAの取扱店があるなら、そっちに行くともっと話が早い。
買取店に電話番号を教えると営業に使われることがある。
電話番号は記入しなくても法令上の問題はない。
買取店は掃いて捨てるほどある。