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純粋は逃げ場がないこと

「おやすみプンプン」の主人公、小野寺プンプンは私によく似ている。

というか、本質の部分ではそっくりなのではないだろうか。

ただもしかしたら、プンプンが持ち合わせているものを誰もが持っていて、それがうまく表現されているからこそ自己投影がしやすくなっているだけかもしれない。

これは、自分の話だ、と思える話こそ作者の表現力の上で操られていることが往々にしてある。

となれば、やはりプンプンはどこにでもいる普通の男の子である。にも関わらず、非情で恵まれない、けれども嫌に現実的な出来事の積み重ねによって、彼の運命は普通でない方向へと翻弄されていく。

作者が人間の本質をよく理解していないとこの作品は生まれなかっただろう。浅野いにお先生は天才だ。

世の中の理不尽や、モヤモヤはいつも何となく誤魔化されてしまう。お酒を飲んだり、愚痴を話したり、寝たり。それを繰り返して毎日を過ごすと、理不尽を人は忘れてしまう。蓄積されたモヤモヤした感覚は、本当はどこかに残っているんだけど。

それから、人は嘘をつく。自分にも人にも。理不尽は、理不尽でないと相手にも自分にも思わせようとする。それは、相手に絶望させないための優しさなのか、それともみんなそうすることで自分を守ってきたからかは、分からないけれど。

この漫画は、現実を認識させるための漫画だ。
理不尽をどんな小手先の美談も語ることなく、ありありと見せつける。

でも、だからこそ現実よりも逃げ場がないからあんなにも真っ直ぐに心がえぐられるのではないだろうか。

私は、自分を見つめ直しても逃げてばかりの自分に気づかない。自分に嘘をつくからだ。でも、自分はいつも逃げてばかりなのだ。プンプンも。

失敗することや人に拒否されるのが怖くて、向き合えていないことばかりだと、忘れていたことを思い出した。

愛情を求めてばかりで、大切な友達に離れていかれてしまったこと。

体裁ばかり気にしていて、自分のつきたい仕事に向いていないと言われたこと。

本当は、大事な人を救いたいと思っているのにできなかった不甲斐ない自分。

そんな過去があるから、今救いたい人に全力を出しきれていない自分。

全力で誰かを愛した時の自分が怖くて、全力が出せない自分。

失敗と向き合えずに正当化してしまう自分。

もっともっと、他の子供から大人になるにつれて割り切れるようになってしまった、本当は悲しい、変えたい、変わりたいと思っていること。

割り切れていないから、向き合おうとしていることもあるけれど、いつも考えているわけではないから気をぬくと忘れてしまう。

大人になるって、こういうことだったのかなとまた割り切ることを正当化しようとした。それは自意識から決別して受け入れることでもあるから、正しくもあり間違ってもいるんだと思う。

考えているだけで、何も変えられていないことが多いから、もう少し受け入れるだけじゃなくて変えていける勇気を。誤魔化すだけではなく、立ち向かえるように。

プンプンは、「自己啓発本」と考察している人がいたけどそれは、間違いではないと思う。

「圧倒的成長」も「人生はワンチャンスだ」とも書いていないけれども。

本当の自己啓発って、自分の汚い部分も人らしい弱い部分も逃げずに今の現実を見ることから始めるんじゃないだろうかと、思う。

明日もまたもう少し、正当化しないで素直になろう。悲しい変えたいことを、変える努力をしてみよう。

おやすみ。プンプン。

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