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【ワーケーション体験記】熱海とコワーキングの奇跡(後編)

熱海は奇跡の街である。
かつては衰退した観光地の代名詞とまでなっていた熱海は、あることをきっかけに再生し活気を取り戻した。

人口減少や高齢化、空き家問題など日本のどこの地方にも存在する課題の先進地域として、街全体で解決に取り組んでいる熱海の奇跡の秘密を、ワーケーションを通じて体験した。

ワーケーション。WORKとVACATIONを組み合わせた造語だ。最近耳にすることも多いが、旅するように働くことや、その土地でしか出会えないこと、体験できないことを求めて訪れることもワーケーションと言えるだろう。

その意味でワーケーションは単に労働と休暇の範囲にとどまらず、学びや新発見の舞台装置ともなる。

WORK x EDUCATION
WORK x INNOVATION

今回のワーケーションでは1泊2日しか滞在しなかったけれど、小さなゲストハウスがいかにして熱海の再生の端緒となり、街全体のCo-Working(協働)を生み出しているかを身をもって体験することができた。

それは僕自身の学びになったし、新しいビジネスにつながる出会いにもなったと思う。

この体験を別にワーケーションとかノマドとか、あるいは僕は会社員で、業務で訪れたわけだから出張とでも好きに呼べばいいと思うけれど、
ワーケーションの可能性をWORK x VACATIONに閉じ込めてしまうのはちょっともったいない。

ここからは熱海とコワーキングの奇跡(後編)です。

(前編はコチラ↓)

ひものから始めるワーケーション生活

朝目覚めると、前日までの天候よりは幾分天気の良い一日が始まろうとしていた。

僕が泊まっていたロマンス座カドの屋上にはちょっとしたテラスがある。
朝起きて軽く仕事してから、朝食までの少しの時間を目の前の街並みを眺めながら過ごした。

ロマンス座カドのROOF TERRACE

朝食の場所は昨日宿泊のチェックインで立ち寄ったguest house MARUYAのカフェスペースで。
 近くの干物屋で好きな干物を購入し、MARUYAにあるグリルを使ってセルフで炙って食べる。
MARUYAは食事場所と白ご飯・お味噌汁のセットを提供し、メインの干物は周囲のお店と連携しているというわけだ。

MARUYAの目の前にある小沢ひもの店
グリルを使って表7分、ひっくり返して3分炙る

ちょうど食事をするMARUYAの目の前の店が干物屋なので早速買いに行ってみると、看板には和銅3年創業と書いてある。
和銅・・・。歴史の授業の記憶で和同開珎がうっすら思い出されるくらいの昔である。奈良時代から続いているとはなんとも壮大。
熱海で最も古い干物店だそうだ。

なんかこういう情報だけで美味しくなりますよね?なりません?笑

MARUYAのスタッフの方に軽いノリで勧められてよく考えずに入ったのだけれど、おすすめは間違いなかった。またしても良い店の紹介ありがとうございます。

製法は創業当時から代々受け継がれてきたということで変わっていないのだそうだが、1,300年前の熱海の漁師も村で干物を火で炙って「これだよ、これこれ。鯖のみりんが一番美味いんだよ。いや俺は鰯だな最高だな」などと言いながら味わって食べていたのだろうか。

ちなみに熱海という地名の由来ともなっている、海が熱湯で魚が焼け死んだという伝承も奈良時代だそうである。

というわけで、僕も鯖のみりんの干物を干物屋で購入し、MARUYAのカフェラウンジで火に炙って出来立てを食べた。

1台のグリルを使って焼くので、たまたまタイミングが同じになった他の旅行客のカップルと、次、あと1分で裏返します、などと声をかけ合いながらほんわかとした時間が流れていった。

それにしても干物って普段あんまり食べないですよね。ただでさえ魚を食べる機会も少なくなってきているのに干物となると人生で数えるくらいしかないかもしれない。

しかしいざ試してみると、火で炙った魚の肉がこんなにもふっくらとして旨味が凝縮されて美味しいとは知らなかった。

地域のお店が連携して、宿の食事を買い出しで選べるようにすることで、買い出し自体が体験コンテンツになる。気に入ったら後でお土産を買いに再訪する人も出てくる。

MARUYAが外から訪れる人を街へ送り出すゲートウェイとなり、街全体でコンテンツとしての魅力を高めていく。

MARUYAを運営するmachimoriが始めた熱海再生の成功モデルだ。

そのようにして熱海のワーケーション2日目はひものから始まった。

いざnaedocoへ

コワーキングスペースnaedocoの店内

熱海にはコワーキングスペースがほとんどない。
コワーキングスペースとしては3店舗ほどで、それ以外はホテルやスパのワークスペースくらい。

そんな熱海では貴重な存在のnaedocoはロマンス座カドやMARUYAと同じくmachimoriが運営するコワーキングスペースだ。

今年の7月で6周年ということでいくつかイベントが企画されていて、今日はそのうちのひとつとしてnaedocoの無料開放と参加者によるランチ会があるということだった。

僕は、naedocoのコミュニティマネージャーの廣野さん(みっすーさん)や以前machimoriさんの新規事業研修プログラムでお世話になった佐々木さんと打ち合わせを行い、他にもいくつかリモートでWEB会議や作業をこなして終日利用した。

最近は軽井沢や沖縄などリゾート地でもしっかりと仕事ができるコワーキングスペースが増えてきたが、まだまだ広さ、オープンスペースの席数、ソロブースや個室の数、Wi-Fi速度など十分な設備のある店舗は少ない。

その点、naedocoは広々としたスペースにフリーデスクやパーティションのブース席、半個室、ソロ用の個室ボックスと、ワーケーションで求められるワークスペースのタイプが一通り揃っている。

有料だが貸し会議室もあるので、チームビルディングのためにグループで利用するのにも適している。
正直ホテルの会議室は料金がかなり高かったり簡易なテーブルと椅子が置いてあるだけのケースも多くて、
4,5人くらいのグループにちょうどよいサイズの会議室って意外に少なかったりする。

ブース席
半個室ブース
貸し会議室

遠くのオフィスより近くのコワーキング

ちなみにnaedocoを日常的に利用する会員はどんな人が多いのかみっすーさんと佐々木さんに聞いてみたところ、
意外に熱海市内在住の方よりも、周辺地域の多賀や三島、小田原あたりからの通い利用が多いのだそうだ。

それってやっぱり以前は東京や横浜などにあるオフィスへ通勤していた人が、在宅勤務のテレワークになったことにより、オフィスの代わりを近場で求めているのかもしれない。

自宅だと集中出来ない、プライベートとの境がなくなり気分転換が出来ない、などが主な理由というところ。

この事象は僕が昨年droppinの事業として、鎌倉市と一緒に取り組んだテレワーク実証実験でも同じだった。

横浜や川崎に住んでいる人が、都内に通勤する代わりに鎌倉市のコワーキングスペースを使ってテレワークしていた。

だってそりゃそうですよね。
都内に行くのと同じかそれ以下の時間で通えて、しかも通勤電車も鎌倉方面なら混まない。
オフィスに通うより自然と歴史の環境の中でテレワークした方が嬉しいに決まっている。

そうした従業員のニーズはなかなか掬い上げられることはなく、
在宅勤務のワークスペース環境作りは個人に丸投げしているのが大半の日本企業の実態だ。

いつかは生産性や快適性の高いワークスペースを地域のHUBオフィスとして複数の企業でシェアをすることが求められてくるだろう。

そうした時にnaedocoのような地域コミュニティのHUBとなるコワーキングオフィスがあれば、
単なる作業をする仕事場としてだけでなく、地域の人とのつながりができる新しいオフィスのカタチに進化していくような予感がする。

machimoriの佐々木さん、みっすーさんとは熱海のコワーキングをもっと盛り上げようということで意気投合し、企画の具体化は持ち帰ってまたリモートでやりとりすることにした。

多分また熱海に来ると思うけれど、こうやって離れた地域の方々と、普段はリモートで議論を進めつつ、オンラインとオフラインをフェーズで使い分けてハイブリッドにコラボレーションしていくのが企業のワーケーションのひとつの型になっていくと思う。

naedoco 6周年イベント

6周年のチラシ

さて、本題のWORKも終わったところで、naedoco6周年イベントのひとつ、ランチ会の模様についても少しだけ紹介しておきたい。

ランチ会はコミュニティマネージャーのみっすーさんにおすすめの漁師めしのお店に連れていってもらい、新鮮な魚料理を食べた。

漁師めし味里熱海店のランチ

この日のランチでは鯵のたたきと、ムツとめじなの刺身に、名物のイカメンチが付いている。

僕はイカメンチは初めて食べたけど、全然イカの感じがしなかった。素朴だけど味が染み込んでいてとても美味しかったな。

熱海にはガイドブックにも載っているような観光客向けのお店も多いけれど、このお店は手頃な価格で本格的な魚料理が食べられるというので地元客も通う。
こういうお店の開拓ができるのも嬉しい。

ワーケーションに限らず近所ではないコワーキングスペースを利用することがあったら、コミュニティマネージャーに周囲の行きつけのお店がないかおすすめを聞いてみると良いです。

美味しいものが嫌いな人はなかなかいないしグルメは会話のテーマとしてもハードルが低いので特に僕のような人見知りな人間にはお店の開拓もできるし一石二鳥です。

ランチ会に参加した男性の話もとても興味深かった。
この春に都内から熱海の近くに移住してきた方で、月に2度ほど出社をするだけということだった。

意外に熱海の近くに住んでいても平日は時間が合わないし休日は観光客が多いのでなかなか来る機会がなかったと。

普段コワーキングスペースは利用していないということだけれど、やはり集中力と気分転換は在宅勤務の課題だと話していた。

移住先から都内のオフィスへは片道3時間かかるらしいので、どうか彼の勤めている会社でもコワーキングスペースの普段使いが認められる日が来ますように。

しあわせはサイダーの中

銀座通りのお洒落カフェ、Organic Box

ランチ会からnaedocoに戻る途中で、これまたみっすーさんおすすめのお洒落カフェ、Organic Boxに立ち寄り季節のサイダーをテイクアウトした。

カフェに向かう途中でみっすーさんから、夫婦で経営していてとても気さくな良い人たちなんですよ、と聞いていたのだが、
実際会ってみると実際その通りにとても笑顔の素敵なカラっとした気持ちの良い人たちだった。

旦那さんの方は朝から出かけていた畑からちょうど戻ってきたらしく、連絡がないから熱中症で倒れたかと思ったわ、などと笑いながら夫婦で話していた。

二人の仲の良さがこちらにも伝わってきて温かい気持ちになる。どうか末長くお幸せに。

季節のサイダーは熱海の梅の味だった。
夏のサイダーってなんだかテンションが上がりますよね。

熱海ワーケーションのまとめ

  • 集中して仕事をするならロマンス座カドは最高の籠り場である

  • ひみつの鍵は地域周遊のキーアイテムだった

  • 宿×商店は体験型コンテンツの無限の組み合わせになる

  • naedocoは日常テレワークにもワーケーションにもハイブリッドに対応できるコワーキングスペース

  • 熱海の地域コワーキングはまだまだこれから面白くなる予感!

今回、熱海ワーケーションを実践して感じたことは、
海辺のホテルやスパで優雅に過ごす休暇型ワーケーションも良いけれど、
naedocoやMARUYAを中心とした交流型ワーケーションは、日常や自分の世界を越境することができる、熱い経験になるということだ。
今回持ち帰った宿題を考えて、ぜひまた次来たいと思う。

今回のワーケーションにかかったお金

  • 交通費:3,100円(横浜〜熱海)※帰りは大阪へ向かうため片道分

  • 宿泊代:8,220円(1泊2日)

  • 朝食代:500円(干物代)

  • 昼食代:1,150円(味里熱海店)

  • カフェ:550円(季節のサイダー)

  • 合計 :13,520円

記事で紹介したイベント・施設

naedoco Anniversary fes

ロマンス座カド

ゲストハウスMARUYA

小沢ひもの店

コワーキングスペースnaedoco

味里熱海店

Organic Box

【ワーケーション体験記】熱海とコワーキングの奇跡(前編)

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