奈良公園にワーケーションを求めるのは間違っているだろうか
数多の歴史的文化遺産が宝蔵される広大な奈良公園。巨大な大仏と鹿の大群。
働く場所と休暇的体験を求め、いざワーケーションへ。
ノートPC1台で優雅にリモートワークをし、休憩時間に訪れるのは鹿と戯れる旅人との出会い。
和気あいあいとした笑い声、鹿ののどかな鳴き声、夏風のさざめきとPCキーボードの軽快な打刻の音。
資料作成を終え、クールにPCを片付けるスマートな自分。
ほんのりと染まる夕暮れ、出会った旅人との会話。淡いセレンピディティ。
奈良公園にワーケーションを求めるのは間違っているだろうか?
結論。
僕が間違っていた。
奈良公園は仕事する場所じゃない
奈良公園は広大である。500ヘクタール以上の土地に、春日大社、興福寺、東大寺、奈良国立博物館、正倉院など大物クラスがひしめいている。
東京ディズニーランドとシーを合わせて100ヘクタールくらいなので、それが単純に5個くらい入る計算になる。
さてどこでリモートワークしようかなと考えてみたが、さすがに東大寺や正倉院に仕事ができる場所は無いだろうし、
奈良公園といったらやっぱり鹿だろう、ということで、適当に鹿がたむろしている場所を探すことにした。
奈良公園には野生の鹿が1,100頭くらいいるらしいが、
近鉄奈良駅から東へ歩き、興福寺や国立博物館からの東大寺南大門の参道に至るまでのコースに鹿せんべいの売り場がいくつかあるのでえさを求めて鹿が大量に集まっている。
近い近い。
もう鹿せんべいをもらい慣れ過ぎているので人間がいても気にならないし、むしろ群れで近寄ってくる。
僕は過去何度も奈良公園に来たことがあるが、今回初めて鹿の鳴き声を耳にした。
みなさんは鹿の鳴き声を聞いたことがありますか?
チィーというか、ギィーというか、なんとも表現しづらい声で鳴きます。
ちなみにこの声の時は鹿せんべいよこせ、と言っているらしいです笑
鹿せんべい売り場の近くは観光客も多いのでちょっと仕事をするような場所じゃないなとすぐに場所を変えることにした(当たり前である)。
新緑の芝生が延々と続く広場も、地べたに座ると鹿のフンまみれになるのでベンチがないと座れない。
僕が訪れた日はとてもよく晴れた日差しの強い初夏の午前中で、木陰でもないとすぐに熱中症になってしまいそうだった。
というわけで、木陰のベンチがあり、騒がしくなく、適度に鹿が近くにいるという条件で落ち着けるスペースを探したのだけれどなかなか見つからない。
炎天下の中で歩いていると暑さと汗で頭がボーッとしてくるので、これはまずいなと。だだっ広いし、ただ無理やりに鹿と仕事の写真が撮りたいだけの人になってきた。
結局ようやくそれっぽい場所を見つけて、SNSで映えそうなPCと鹿の写真を無意味に撮って、大して仕事もせずに早々に立ち去ることにした。
いや分かってたからね。
奈良公園はワークスペースではない。WORKとVACATIONだったら、VACATIONの方だから。
そもそも電源とWi-Fi無いし。
奈良公園至近のコワーキングスペースBONCHIがあるじゃないか
もちろん本命のワークスペースはちゃんとおさえてあった。
近鉄奈良駅から奈良公園に行くまでの間にある、もちいどの商店街の中に2020年にオープンしたばかりのBONCHIというとても素敵なコワーキングスペースがあるのだ。
もちいどの商店街の入り口にある中谷堂の高速餅つきは有名なので知っている人も多いかもしれない。
秒速3回の爆速餅つきで作られたよもぎ餅は柔らかいのにコシがあって、とても美味しい。
1個から買うことが出来るので、仕事の休憩時間のおやつにもおすすめです。
BONCHIは「ひとりでに、持続可能な地域や社会が生まれる場所」というコンセプトのもと、奈良市の創業支援施設として生まれた4階建てのコワーキングスペースだ。
商店街に面した1階はショップや小さな本屋も併設していて、無料の休憩所としても利用できる。キッズスペースもあり、地域に開かれた空間となっている。
ちなみに本屋で販売している本はフロア内であれば買わずに読んでもOKとのことで、哲学や工芸、建築、写真集やイノベーション関連の書籍などよりすぐりの本が500冊ほどあるので仕事で煮詰まった時などに読めば発想の転換ができて良いかもしれない。
普段使いが出来る本格的な2Fのコワーキングスペース
コワーキングスペースのドロップイン利用をする場合は先に1階の受付で名前などの記入が必要だ。
僕はdroppinアプリで予約をしていたので受付記入のあとQRコードでチェックインをして、店内の利用方法について説明を受けた。
ここは2階と4階がコワーキングスペースになっていて、2階は大きく3つのエリアに分かれる。
ひとつ目は、ちょっとした休憩エリア。
仕事の息抜きや一緒に働く仲間と雑談をするようなスペースとしてちょうどよい。
2階のもうひとつのエリアが自席でWEB会議も可能なワークスペース 。
奥に広い空間となっていて、ずらっと仕事用のテーブルが並んで入る。
席は密にならないように間引きされているので利用は最大10名までとなっている。
そして2階の最後のエリアが一番奥の集中スペースである。
集中スペースは席ごとに高いパーテーションで区切られていて、背もたれの高い高機能なオフィスチェアに座って仕事をすることが出来る。
WEB会議は禁止エリアなので必要に応じて席を移動すると良いだろう。
悠久の時間が流れる異世界コワーキング
コワーキングスペースは4階にもある。
TENと名づけられたこのフロアは、「ソトを感じるウチ空間」として昨年2021年にリニューアルオープンしている。
空間クリエイティブディレクションをアーティストの田中孝幸氏が手掛けたTENは、2Fの一般的なワークスペースとは趣が異なり、かなり前衛的な空間だ。
4Fの入口の暖簾をくぐると、まるで異世界のダンジョンに迷い込んだかのような、景色が漆黒色から青丹色にグラデーションされていく静謐な空間を歩むことになる。
4Fのメインエリアはフロア中央に開放された天窓と一対となるインスタレーション作品が大きく設置されている。
中心部には苔石があり、周囲の階段に座ってたまに眺めてみると癒されるような気分になる。
はっきり言って4階フロアのコワーキングスペースは機能的ではない。
オフィスにあるようなデスクや椅子があるわけではないし、普通にデスクワークをするだけなら使い勝手は良くないかもしれない。
でもそれで良いのだと思う。
BONCHIには、2Fにしっかりとした作業が出来るワークスペース があるので、ここはイノベーティブなフロアで良いのだ。
僕はこのフロアで半日リモートワークをして過ごしたのだけれど、2階フロアよりこのフロアの方が利用者が多かった気がする。
きっとみんな日常と隣り合わせにある非日常の世界線を越えたいのだ。
この創造的でインスピレーションが湧いてきそうな空間で。
それは美術館や博物館に近い感覚かもしれない。
そういった場所でリモートワークができる機会はそうそうないが、ここでなら思う存分気兼ねなく仕事ができる。
ただぼんやりと考え事をしてもいいし、クリエイティブな作業をするのもよいだろう。
こういった空間の使い方はとても贅沢で、都会のコワーキングスペースではなかなか真似が出来ない。
なお、PCモニターの貸し出しはあったが、特に備品貸し出しやフリードリンクがあるわけではないので、
リモートワークに必要な準備は事前にしておいた方がよい。
ウォーターサーバーはあるが、コップは持参が必要なので注意。
まとめ
奈良でワーケーションなら奈良公園 x BONCHIがおすすめ
テレワークの普段使いも出来る本格的なコワーキングスペース
クリエイティブな非日常空間はアイデア発想するのに向いている
ソロ個室は無いので個室でWEB会議をしたい人には向かない
奈良公園で鹿と遊んでもいいが鹿せんべいをあげる時は気を付けよう
店舗利用情報
予約 :日時指定予約、当日予約、直接利用(droppin)
受付 :有人
Wi-Fi :アップロード243.56Mbps、ダウンロード264.23Mbps
WEB会議:自席WEB会議OK(集中スペースのぞく)
個室 :貸し会議室のみ(別途有料)
会話禁止:専用エリア有り
照明 :落ち着いた照明
ドリンク:ウォーターサーバー(コップ持参が必要)
BGM :鳥のさえずりBGM(4F)※2Fは無音
机・椅子:長テーブル、カフェ風チェア(集中スペースのぞく)
備品貸出:PCモニター
トイレ :トイレ(男女別)
喫煙 :無し
BONCHI
住所:奈良県奈良市橋本町3-1
最寄:近鉄奈良駅徒歩5分
営業:ドロップイン 10:00〜18:00
料金:1日2,600円 ※22年8月末まで半額キャンペーン中
※上記最新情報はワークスペース予約アプリdroppinで確認ください。
(おまけその1)奈良公園近くの美味しいモーニング店
奈良公園ワーケーションにチャレンジする前に、近鉄奈良駅すぐのROKUMEI COFFEE CO.でモーニングを食べた。
ここは自家焙煎スペシャリティコーヒーの専門店で、中でモーニングを食べることが出来る。
フレンチ液にたっぷりと漬け込んだクロワッサンがふわふわ、サックサクで美味しい。ハチミツをたっぷりかけて。
コーヒーとのペアリングを堪能しました。
(おまけその2)祇園祭はあとの祭り
ちょうど京都祇園祭の期間だったので、少し足を伸ばして四条河原町から八坂神社のあたりまでぶらぶら散策して帰ることにした。
奈良から京都って電車だとちょっとアクセスが良くないんですよね。
いくつか乗り継いだりしないといけないのだけれど、四条河原町あたりの通りは日が暮れた後も祭の余韻がまだ漂っていて、雰囲気だけでも祭りの気分を楽しむ。
わざわざ来た甲斐があった。
鴨川沿いの名物、等間隔カップルが姿を消したという記事を以前見たことがあったけど、等間隔どころかばっちり並んでいた。
なんだかここだけ以前に戻ったようで、少しほっとする景色だった。