夏のウナギ
その町と隣町の間には一級河川が流れていて、子供のころよく魚釣りをしました。
昼間に釣った鮎をウナギをとるための仕掛けに入れて、夕方になると仕掛けを川のよどみに沈め、朝を待ちます。
仕掛けは竹でできた円筒型で、その先に鮎をぶつ切りにして入れます。鮎の匂いに誘われて入ったウナギは、仕掛けの構造上外に逃げることができません。
翌朝、仕掛けを上げると鮎の切り身がそのまま残っていることもありましたが、たいてい細めのウナギが入ってます。さばくのがやっという大きさです。たまに太めのウナギもとれましたが、珍しい。
いまスーパーで売っているような立派なウナギは、ほぼすべてが養殖物で、一年中おいしく食べられますが、天然の夏ウナギは脂ののりが十分でなく、味は劣ります。それでも戦後の食糧事情の悪い時代はおいしい食べ物でした。家に持ち帰ると親はウナギをまな板に押さえて、頭に釘を打ち込んで三枚にさばきました。
丑の日にウナギを食べる風習がありますが、これは江戸時代、平賀源内という奇才の人が考え出した宣伝文句だといいます。
いま夏のウナギはおいしい。これは養殖物のウナギだからです。天然のウナギは夏場はやせていて味が劣ります。養殖がなかった江戸時代、夏場に客足が遠のいたウナギ屋が源内さんに頼んで宣伝してもらったのかもしれません。
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