「ねたみ」について

ラッセル『幸福論』岩波文庫は、古典でありながらとても読みやすいと思う。この本には、不幸の原因となるものがいくつか書かれている。そこに「ねたみ」というのがある。僕はよく誰かを妬むから注意しないといけない。誰かを妬んでるうちは不幸である。

江戸時代なら妬みは少なかっただろう。比べる相手が近所の人くらいであり、大した差もない生活だったろうから。ところがグローバル化が進み、さらにネット社会になって遠くの人まで近くになった。隣人が無限に増えたと考えられる。

そんな中で生きる現代人の僕は、妬みを抑えることを意識しなければ膨らんでいく一方である。自分と年齢が近く成功した漫画家、何かしらの賞をとった人、有名になった人、金持ち、幸せそうな人を僕はねたんでいる。

そうするとき、自分は自己を否定しており、現在の状況に感謝していない状態だといえる。そんな時間は悲しいものである。

悲しいことが必ずしも悪いとは思わないが、感傷的な態度は何も生まない。もう少し今の自分を冷静に見て、幸せな面もあると考えよう。そのための工夫が必要である。

そのために、妬みと反対ともいえる情念を増やすのがいい。その情念とは「賛美の念」である。それが幸福へと向かわせてくれる。

・ねたみ深い人は…自分の持っているものから喜びを引き出すかわりに、他人が持っているものから苦しみをひきだしている。(p93)

・自分のねたみ深い感情の原因を自覚しただけでも、そういう感情を治す方向に大きく一歩踏み出したことになる。他人と比較してものを考える習慣は、致命的な習慣である。何でも楽しいことが起これば、目いっぱい楽しむべき、、(p95)

・(ねたみの)本質は、決してものをそれ自体として見るのではなく、他との関係において見ることにある。(p96)

・幸福ほどうらやましいものが、ほかにあるだろうか。だから、ねたみぐせを治すことができれば、私は幸福をつかみ、人にうらやまれる身分になれるわけだ(p97)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?