引用日記㉞

緑色がかった古い蛍光灯が何本か灯る脱衣所には、天井からプロペラ型の旧式な大扇風機が吊下っている。鍵のこわれていないロッカーを探して、その前で、しゃがんだり立ち上ったり足踏みしたりして裸になりながら、「知らない町のお湯屋に入るのは緊張する」と、Hがくすくす笑う。

武田百合子「浅草観音温泉」『遊覧日記』(作品社、1987)

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