引用日記㉖
没落が間近に迫っているにもかかわらず、ブントには明るさが、漲るというほどではないにしても、つきまとっていた。ブントは、自分の虚妄については鋭敏であったのだが、それを自己否定の暗さにもっていくようなことはしなかったのである。正確にいえば、自己否定に並んで、明るく頑固に自己を肯定しようとしていた。今にしていえば、自己否定と自己肯定のあいだに際疾く平衡を保つこと、それがブントの精神の型であるようにみえる。
西部邁『六〇年安保 センチメンタル・ジャーニー』(文藝春秋、1986)
没落が間近に迫っているにもかかわらず、ブントには明るさが、漲るというほどではないにしても、つきまとっていた。ブントは、自分の虚妄については鋭敏であったのだが、それを自己否定の暗さにもっていくようなことはしなかったのである。正確にいえば、自己否定に並んで、明るく頑固に自己を肯定しようとしていた。今にしていえば、自己否定と自己肯定のあいだに際疾く平衡を保つこと、それがブントの精神の型であるようにみえる。
西部邁『六〇年安保 センチメンタル・ジャーニー』(文藝春秋、1986)