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引用日記㉝

二十代で恋人と別れるときは、寂しさを補って余りあるほど、前進や成長の手応えがあったものだけど、三十代の別れにそんなポジティブな要素はなかった。三十歳を過ぎて恋人と別れることが、こんなに堪えるものだとは知らなかった。そして美紀は気がついた。自分はもう、前進も成長もしようのないところまで来ているのだと。恋人がいなくなった寂しさに耐えて、慣れて、それが平気になるまで待つしかないのだと。

山内マリコ『あのこは貴族』(集英社、2016)

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