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街並みと色彩の多様性について/この2ヶ月を振り返って

間もなく6月。西の方からは梅雨入り間近、という知らせも聞こえ始めています。
3月上旬から新型コロナウイルス感染拡大に対する懸念がじわじわと広がり始め、弊社では自粛要請(その時点ではまだロックダウン、という言葉を使っていました)が出るかもしれないということを想定し、社内サーバーへ外部(自宅)からアクセスできるようにしたり、モニタを自宅に持って帰ったり、という準備を(比較的早い段階から)進めて行きました。

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※モニタを持って帰りノートPCに繋ぐのにどのケーブルが必要かわからない私。写真を撮って送ると、即レスをくれるスタッフYさんは私にとってのまさに神、でした。

その後4月に入り、緊急事態宣言の発令、各種営業や活動への自粛要請、テレワークの推進と、あれこれに「対応」しているうちに、あっという間に2ヶ月が過ぎてしまった…というのが正直なところです。

すぐさま、周囲では早々にオンラインでのトークイベントやセミナーが開催されはじめ、「アフターコロナ」「ウイズコロナ」等をテーマとした都市論や空間・建築論が盛んに行われており、建築家や都市プランナーが様々な危機感を持ちつつ、ポジティブに変化に立ち向かう姿を見聞きしています。
プロフェッショナルな方々の未曾有の危機に対するこうした姿勢は、過去には阪神淡路大震災、そして東日本大震災後の混乱や変化に対応してきた・道を切り開かれてきた経験が生かされているのだろうなと感じます。

こうした「変化せざるを得ない」状況に対し、建築家や都市プランナー、土木・景観デザインに携わる友人・知人たちがポジティブであることにとても救われています。

やや話が逸れましたが、弊社のテレワーク体勢は

・Team Viewer で自宅から会社のデスクトップ(サーバー)にアクセス
・4名中3名は自前のノートPC+会社のモニタで、1名は会社のMac本体+モニタを自宅に移動
・各種連絡は以前から導入していたslackで、オンラインミーティングにはzoomやTeamsを活用
・事務所に比較的近い私のみ、週2〜3程度時差出勤で郵便物等に対応

という具合で、ほとんど新規の設備投資をすることなく、テレワークに以降することができました。
(ちなみにフルリモートではないものの、私が購入してよかったものはUSB-Cハブ・キーボード・マウス、の3点です。)

業務の推進において最も懸念していた「色」の確認については、

・取引先の要請もあり、打ち合わせやプレゼンがほぼオンラインに移行したので(5月末現在)、資料はデータを画面共有に移行。カラープリンターによる出力が不要になり、よって出力のみのために出社する必要もなし。
・これまで現場で行っていた塗装見本等の確認はA4程度の見本一式を担当者自宅に郵送してもらうことで対応。(通常のように発注者と同時に検証はできないが、指定色通りに再現されているか、濃淡の幅をどう組み合わせるかを設計者として判断し、候補の見本を現場へ送り返して最終的には発注者に承認をもらうこととしている。)

という具合に対応してきました。
時期的には、3月の年度末で成果品(報告書等)の提出が一段落した時期であったことも幸いした、と感じます。
また、発注者や協同している設計事務所等、周囲の多くの関係者がほぼ同じペースでテレワークに移行したこともあり、出社しない(できない)ことで現場の工程等に支障が出るほど業務が滞る、といったことは全くありませんでした。

2ヶ月が過ぎ、緊急事態宣言は(一旦)解除されたものの、大企業などでは引き続き出社率を25%程度まで削減するなど、数値目標を掲げ引き続きテレワークを続ける企業も多く、私たちの取引先でも技術職(設計や企画)は当面在宅で、という方も少なくありません。

弊社は代表を含め5名ということもあり、各自の意向を確認した結果、6月1日(月)からの業務については基本通常通りとし、各自状況に合わせ在宅を組み合わせて良い、という方法で再始動することとしました。子どものいる・いない、未婚・既婚など、家族構成によっても各自の事情は様々です。
引き続き、様々な状況や環境の変化を睨みつつ、「対応」していくことになるのかなと考えています。

さて。

弊社がこうして(なんとか)業務をつつがなく継続することができているのは、スタッフの多様性に助けられているところが大きい、と改めて感じています。
リモートの体制を早くから整え、各自に必要なツールや自社サーバーへのアクセス方法をレクチャーしてくれたYさん。あれこれ全体に目を配り、適宜slackにゆるいメッセージを発信し、緊張感を和ませてくれるAさん。一人暮らしで心細い中、細々としたデータの調整を粛々と進めつつ、私の勧めに従って某デザイン賞応募の手続きを頑張ってくれているKさん。そして2月より遠方に転居したものの、遠隔で着彩立面図やフォトモンタージュの作成にご協力をいただいているアルバイトのNさん。
年齢や経験、立場が異なるメンバーが集まっているからこそ、それぞれの経験や能力を活かし業務を推進していくことができるのだな、と実感しています。

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そんな中、昨日3月に竣工した現場の撮影に行ってきました。この団地は全部で5つの街区があり、昨年度その1部の改修計画を担当しました。今年度、別の設計事務所から隣の街区の改修を受注したので色彩計画を担当してほしいという依頼があり、その現地調査も兼ねての再訪でした。
敷地内の公園ではいくつかの遊具が使用禁止になっていましたが、豊かな緑とその緑陰、その傍らのベンチで読書を楽しむ方も多く、鮮やかな新緑と改修を終えたばかりの団地が大変まぶしく、久しぶりにとても清々しい気持ちを味わいました。

この団地は2003年の建替計画時に全体の基本計画が実施され、街区ごとの色彩の基本方針づくりと、先行街区の色彩計画に携わりました。昨年度の改修は、自身にとっては2度目の色彩計画だったわけです。
2003年以降、建替は着々と進み、他の4つの街区にも多くの住棟が建設されました。時代の変化や要請もあってか、街区構成は当初の基本計画が継承されているものの、住棟の意匠や配色等は当時の計画とはだいぶ異なっていました。

昨年度再訪し、当時の計画から大きく変わっていたため、はじめは少々残念に思う部分もあったものの、新しい街区には相応の魅力が形成されていることも事実でした。周囲の変化とうまく呼応しながら、建替時の基本計画で詳細に検討されていたいくつかの「通り」に対する表情の作り方などを改めて参照し、刷新性がありつつも周辺の街区との「連続性と適度な変化」の感じられるリニューアルを目指しました。

街並みの色彩における「連続性」と「変化」はそれぞれ、単独で叶えることはさほど難しくはありません。これを「連続性の中にも均質でない、適度な変化」が感じられるようにするためには、やはり周辺との関係性をどう構築するか、ということを丁寧に解いていかないと、適度な塩梅は見つけられません。

今回、2回目の色彩計画においては、改めて団地全体の色彩の方針を検討して欲しいという依頼を受け、順次改修を迎える他の街区についても、外装色の方針を改めて検討し、提案を行いました。
各街区に対しては、最終的には具体の色使いではなく『隣接する街区がこうだから、連続性の観点では基調色はこういう方針で検討してほしい』『街区ごと個性の出し方については、この街区はここが特徴だから、ここで変化をつくってほしい』というまとめ方をしています。

願わくば、他の街区の改修にも自身がずっと関わりたいなとも思いますが、現状ではそうはいかないので、担当者と協議し検討した『こういう視点で外装色彩を検討(=対応)してほしい』という考え方をその根拠とともに示すことで、『(先の計画を参照し)統一感と適度な変化が生み出される仕組み』を提案した次第です。
街並みの色彩は自身が綿密に計画するよりも、いかに適切なストライクゾーンを提示し、共有・展開しやすい仕組みをつくっていくか、が重要だと考えています。今の事務所の体制のように、様々なキャラクターが相互に反応しあいながら、個人の能力を発揮し成長(変化)していく。

環境における色彩には基本的なセオリーを踏まえつも、そうした寛容さが必要のではないか、と思うのです。

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