最高彩度の半分って何ですか?
こんにちは、色彩計画家の加藤幸枝です。
昨年9月に「色彩の手帳」という書籍を出版しました。
以後、様々な方や方面から、反響・感想・ご批評を頂く中、多くの質問を頂く機会が増え、今まで自身が当たり前に考えたり実践してきたことの根拠や具体的な数値の意味するところを問われる状況が続いています。
また、本業に関連して屋外広告物の審査や協議に関わる機会が増えています。多くの自治体では景観計画の策定に併せ、まちなみ・景観に大きく影響を与える屋外広告物の規模やデザイン・色彩等について、地域の特性に応じた規制・誘導が実践されています。
自治体の規模や地域の特性によって、規制のタイプはさまざまで、京都市のように厳しい規制をかける観光地をはじめ、小田原市のように歴史的資源(城)に重点を置き、周辺一帯を重点区域に指定し「色彩景観の手引き」を活用しよりきめ細かな誘導を図る例も多くあります。
こうした手引きやガイドラインには、規制の内容をはじめ、推奨色やデザインにおける具体的な配慮事項が図版等で紹介されているものも多く、検討の参考になることは間違いないのですが、一方ではそもそもの数値や面積の規定に疑問を持たれる方が多いことも事実で、例えば自治体の担当の方が事業者に「なぜ20パーセント以内なのか!?」と問われたりした際、答えに窮してしまう場合も少なくないようです。
屋外広告物の規制に用いられている色彩に関する数値基準は、いくつかのタイプに分類することができます。大きくは、以下の3つといえるでしょう。
①広告物の地色(ベース・背景色)を規制するもの ②使用する色数を制限するもの ③純色(原色・鮮やかな色彩)の使用面積(割合)を規制するもの
以後、この3つの規制のタイプについて、具体例を示しながら解説をしていきたいと思います。まずは①広告物の地色(ベース・背景色)の規制について。
例えば東京都の景観計画では、景観形成特別地区の屋外広告物において 1)文化財庭園等景観形成特別地区 2)水辺景観特別地区において、他の地区よりも厳しい制限を設けています。
ここには、色相ごとの彩度の制限が記載されていますが、大きくは暖色と寒色で上限が異なります。暖色系でもR (レッド・赤)系は5以下ですが、YR(イエローレッド・黄赤)系は6以下となっています。
色相ごとに彩度の制限が異なる要因は、表記にマンセルカラーシステムを採用しているためです。マンセル表色系による色彩の表記は、色相ごとに純色の最高彩度(の数値)が異なり、さらに明度にも幅があることが表記上の特性です。
例えば色相に限らず、一律に「6以下」としてしまうと、YR系の彩度6とB系の彩度6は「同じ印象(調子)」に見えません。下の図は、左からR系、YR系、B系を並べたもので、右に純色・左に純色の1/2(以下)の色を明度順に配置しています。
それぞれの色相で見ていくと、純色の最高彩度にも幅があることがわかります。R系の場合、明度7だと彩度は10.0、明度6.0や5.0になると彩度は14.0まであります。
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