今支払っているシステム費用は適正?そう思っている方へ
とある会社の方(Aさん)からアプリケーションの改修に対して、自身が知見がないから教えて欲しいという内容の相談がありました。
相談の対象となるアプリケーションは優しい雰囲気で多くのファンがついているメディア系のサービスでした。
実際のサービスを見てみると、素敵な記事を書いたり、いい写真を撮ったり、読み手のことを大切に考えられてコンテンツ作成をされているのがパッとみただけで分かります。
運営者の努力が分かる素敵なサービスです。
そのサービスはブラウザで見るためのWebアプリケーション、スマホのiOS、android両方で見れるためのネイティブアプリと、3つに分かれており
(正確にはコンテンツを登録するための管理側のWebアプリケーションもあるので4つ)それだけでも大変そうなことが伺えます。
そんなしっかり運用されているシステムを背景知らずにどうこうアドバイスが出来るわけもなく、Aさんに何が課題かを聞いてみました。
そこで出てきた内容をまとめると
・システム開発会社に対して払っているお金が高いかもしれない
・システム開発会社と意思疎通が取れない
・会社間の関係性が不健全
というものでした。
これを1つ1つみていきたいと思います。
システム開発会社に対して払っているお金が高いかもしれない
その年はアプリのアップデート作業など、大きめな作業があり年間6,000万円近くかかっていました。
これだけの額をパッと見ると「予算をかけられてすごいな」と素直に思います。
特定のシステム1つで売上を上げているようなIT企業でない限り、
他の事業等での利益をシステムに投資されているからです。
経営者、従業員の皆さんの努力が伺えます。本当すごい。
そんな中、Aさんが「高いかもしれない」と感じたのはどこでしょうか。
システムのアップデートがなくとも年間のシステム開発会社に保守費や改修費で払っているのが年間1,000万〜2,000万円
サービス自体が生み出す直接的な売上は一部の広告収入とECの売上でその2〜3割
その為、サービスだけを運用し続けると赤字です。
システムでの直接的な売上が目的か?
そのサービスはWebやアプリだけでなく、オフラインの事業にもファンがいます。
そのファンがインターネットを通じて記事などに触れられるのは素敵なことです。
その結果、別事業の売上が上がったり、合わせて黒字であれば直接的な赤字も1つの広告宣伝費としての役割として見ることもできるかもしれません。
ただしやはり出て行くお金は気になります。
それにシステム周りで分からないことがあるままでは何が正しいかなど判断できないからと、システムの勉強をしたAさんが気になると言ってるのでより気になります。
そこで見ていきたいのが
・システムのアップデートは何故必要だったのか
・年間支払われている費用は果たして適切か
です。
システムのアップデートって必要?
システムは作ったら半永久的に動き続けるものではありません。人間と同じく歳をとって古くなります。
普段使っているパソコンやスマホを数年使っていたら新しいのが登場することもありますが、「古くなってきたから買い換えようかな」と思うのと同じです。
そのため過去に大手企業のインフラを見させていただいてた時に「システム更改」が当時は5年毎に行われていました。
インフラなので使っているサーバやネットワーク機器自体が古くなることもあって、新しいものに入れ替えます。
この入れ替え(アップデート)作業は新しく作ってスタートするものとは違い、元々動いているものもある中で入れ替えをしなくてはならないので大変です。システムが大きくなればなるほど、どこかしらで不具合が出てくる確率が大きくなります。
それがシステム自体の問題かもしれませんし、業務オペレーションという人軸での問題かもしれません。
とはいえ古いものを使い続けることも時にセキュリティリスクだったり、保守サポートができなくなったりと色々なリスクを抱えることになるため、必要なことだったりします。
ただしそのアップデートのタイミングと内容が適切かは別で考える必要はあります。
話が逸れましたが、今回のシステムのアップデートをしたのはどういった経緯だったのか?ユーザーに何か大きなメリットがあったのですか?とAさんに聞くと、社内の意思決定者が決めてしまっていた、メリットに関しては大してなくむしろバグなどが多く使いづらくなってるとのことでした。
システム開発会社と意思疎通が取れない?
システムのアップデートなどが決まった経緯は分かりませんが、システムである以上バグが出てしまうことも一部致し方ないと思うことがあります。意図的にバグを出したくて出す人はそうそう探してもいないと思います。
ただし、話を聞いていると
・そもそもテストをしていなかったのではと思うくらいにバグの量が多い
・指摘したバグ修正や対応が遅い
とその後の対応に問題があるようです。
サービスを使ってくれる人にとって影響が大きいものはできるだけ速やかに修正したいものですが、それを依頼しても出てくるのが遅いようです。
気になったAさんは直接システム会社に行って話をしたものの、先方の社長さんからAさんの上長に「うちのエンジニアに厳しくしないで欲しい」と苦言が飛んできたとのことでした。
当事者ではないのでこの話だけでは気になりますが、
・デバッグはシステム開発会社がやったという実績がなくAさんが代わりに自ら全部やった
・月一の提携作業が数十万円請求されている
・その作業も人力でやっており、ミスなどで度々不整合がおきたりしていた
・それに対しての開発会社担当者からのお詫びの連絡や改善の話がない
・バグ改修よりも新しい技術の方にリソースを割いていた
と、色々と話が出てきます。
月一の作業が人がやるだけで数十万円というのも気になりますし、バグ改修よりも新しい技術(機械学習による、ユーザー向けにおすすめ記事を出すもの)を優先するというのも気になります。
対応も優先度の付け方もそうですが、使い手のことを考えていない対応に見られて残念な感じです。
Aさんの指摘はもっとですし、Aさんが求めているものとは違うものしか出てこない場合、やはり払っているお金は高い(語弊なく言えば無駄遣い)のだと思います。
ただしシステム開発会社のクライアントの立場のAさんの利益に反する行動が見受けられるのは何故でしょうか。
会社間の関係性が不健全
さらに踏み込んだ話を聞いてくと、どうやらシステム開発会社の社長さんとAさんの上長が仲が良いとのこと。
その為、両社間の話し合いで予算(費用)ややりたいことが決まってしまい現実に即してないことが多々あるとのことでした。
やや政治的な感じですが、その関係性があるからシステム開発会社の方は守られていてる状態です。
守られている状況は決して悪いとは思えませんが、クライアント・サービス利用者の不利益になりそうなことをそのままにしても気にならないくらいの温度感にまで野放しになってしまっていたらそれは不健全な関係性だと思います。
このサービスは冒頭にも書いたとおりファンが多くついている為、花形のサービスなこともあり、ITに強くない会社だからこそAさんの上長の立場は強かったようです。
個人の利益を優先する上長と利用者の利益を優先するAさんとでは、意見も割れてよく揉めるとのことでした。
意思決定者/決裁者1つでシステムは良くも悪くも転がる
これはどの企業でも見られることですが、システム投資(導入や運用、サービス展開など)をする際に意思決定者がどういうところを見られるかでよくも悪くも決まってしまうなと思います。
どんなにいい技術、システムでも「誰のため?」ということをしっかりと考えていなかったり、このようなケースのように自分個人の利益を優先してしまったり、システムが「分からない」まま外のシステム開発会社に丸投げしてしまったりするとどこかに歪みが出てきます。
現場担当のAさんがどれだけ優秀でも意思決定者でない場合、どんなにいい意見でも通らなかったりします。個人的にそれがすごく残念で仕方ないです。
私にできること
実際のソースコードや、インフラの設計や体制を見てAさんと「安定運用すること」と「それに必要な費用の見直し」をしました。
ただただ「今何が必要」で「何が必要でないか」というのを仕分けしただけなのですが、システム側がどうなっているか分からないとシステム開発会社の言うことが全てになってしまうので、セカンドオピニオンというような形で、Aさんの会社側の立場になって一緒に考えてみることが精一杯協力できることでした。
それでも「分からない」ことが大分なくなり、システムの内容と費用について内容が把握できたことでお役に立てたんだと思います。
その後のお話
社内体制が変わり上長のさらに上の部長さんが元々システム関連会社にいた方になり、Aさんからの進言もあり、予算や状況が見直されたようです。
そのまま放置されていたら誰のためにもならないお金が流れ続けていたのかと思いますが、それが結果防げたのであれば良かったなと思います。
今日久しぶりにそのサービスを覗いてみたら今も続いているため、体制は変わったかもしれませんが担当されている方々の努力で継続されていて少し安心しています。
少しでも「分からない」ことが放置されたまま、無駄にお金が流れてしまうことを「分かる」に変えて、良いものを残せる企業が増えていくお手伝いをこれからも続けていきたく思った一件でした。