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独りで音楽をやり続けるということ

私はアパートで独りギターを弾き、時折楽譜を書いたりして、自分の音楽をやり続けている。その作業については誰とも関わっていない。ギターについては、アパート暮らしのため大きな音で弾けないので工夫が必要となる。だから私の演奏技術は、私専用のものなのだと思う。まあ、ブラジルのボサノバの囁くような歌声は、当時の住宅事情によるものだと聞いたことがあるので、それは別に特別なハンディということではない。つまり小さな音でも成り立つよう工夫しながらやれば良いだけだ。

大きな会場で大人数を前に演奏することを想定している音楽、それはそれで良い。だが少人数に向けて、さらには自分独りに向かって奏でられる音楽もある。逆にその方が好ましいと考える人たちもいるように思う。

さて話は少し変わるが、NHKのラジオで土曜日の午前11時頃に始まる「文芸選評」という番組がある。私はTVを所有せずラジオも殆ど聴かなかったのだが、二年ほど前にカーラジオでこの番組を知ったのを切っ掛けに、今ではスマホで毎週聴くようになった。はじめて番組のタイトルを耳にした時、視聴者の投稿を偉い方が批評しながら、切り刻んで添削するような光景をイメージしたのだが、全然そんなことはなかった。何といっても日本全国から寄せられる一首一首に、司会の石井かおるさんが共感をもって受け止めて下さっている姿が素晴らしい。投稿作品を品定めするような心の構えは不要で、ほとんど安心して聴くことができる。すっかり私は彼女のファンになってしまった。

この番組を通して私は、こんなにも多くの見ず知らずの人々が、ささやかな題材をテーマに内に広がる心象を短い言葉に綴るという、その本質的に孤独な作業に取り組んでいるという事実に驚かされた。そしてその孤独な作業の中から生まれる短い言葉の連なりが、それに耳を傾ける人々の心と共鳴しあうというその事実に感動を覚える。そこには作品の優劣よりはるかに大切なものがあるように思う。
そしてこのような芸術の在り方がある。
そしてそれは、私が独りで音楽をやり続ける理由にも関係している。


PS.いつもはですます調の文章なのに、今回はそうでかったことに後で気づいた。さて次回からどうしようかと検討中。


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