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9.「音楽空間」に意識を注入する

いよいよこれから、このマガジンのメインテーマに入っていきます。
ここで以前の記事から再度引用します。

これは私の経験なのですが、ある方の演奏を聴いてとても深く心を動かされた曲があって、その楽譜を手に入れて演奏し、録音して聴いてみると、わたしの心の流れとはまるで関係のない、ただ音が流れているだけの中身のない別物で、それでとてもショックを受けたことがありました。曲を演奏できたとしても、心は満たされない…そのような状態をどのようにすれば脱却できるのでしょう?

このようなかつての私の疑問に対して、現在の私自身の答えはタイトル通り、"「音楽空間」に意識を注入する" です。しかし、それでは具体性に欠けますので、現在やっている方法を、これから記してみます。

今回は実際に音を出すことをテーマに絞ります。


1.プランティングによる注入

私はクラシックギターを弾いておりますので、ここからはクラシックギターを例にして記していきます。もし他の楽器の方がお読み下さっているのなら、想像力をはたらかせてお付き合いただければ幸いです。

現在クラシックギター界では、プランティングという技術が一般化してまいりました。
プランティングとは、右指で弦を弾く際に、指先を一旦弦に触れて止め、そこから弦を弾くという技法です。それについてはネットで検索すれば解説が色々とありますので、一つリンクを貼っておきます。

プランティングの効用は、上記のサイトにも書かれております。

さらにここで重要だと私が感じている点を付け加えますと、
1.指先を弦に一旦触れて止める。
2.その時、指先に意識を注入するポイントが設けられる。
3.意識化された状態で弦を弾く。

以上のトレーニングによって、弦を弾くというアクションを意識化しコントロールする力が発達します。これをやると、何となくポロンと弾いてしまうということが激減します。

2の意識を注入するポイントについて、もう少し具体的に言うと、そのポイントを通して思考やアイディア、音楽イメージを注入したり、情感や感情を注入したり出来るようにするということです。
そのポイントがつかめるようになると、そこで時間が停止するような感覚を覚えます。そこで注入はなされるのですが、実際には一瞬です。

そのポイントを個人的にはインジェクション・ポイントと呼んでいるのですが、一般的ではありませんので、本マガジンでは以降、注入ポイントと記すことにします。


ここから先は、私の個人的な応用です。

この注入ポイントの感覚を覚えると、実際には、上記1.のように指を弦に触れることなく、空中で一旦止めた状態で停止し、注入ポイントを設けることも出来ます。

それをさらに左手の押弦にも応用します。左手で弦を押す前に意識の注入ポイントを導入するのです。
左手のトレーニングで私がやっているのは次の通りです。
1.楽器を構え、左手は適当なポジションで構え静止した状態。
2.今構えているのとは別のコードフォームをイメージする。
  押さえる弦・ポジション・指・手フォームのイメージに加え、
  指・身体に負担をかけないような移行動作をイメージする。
  (事前にシュミレーションしておくと良い。)
3.静止した状態で2のイメージを身体・手・指先に注入する。
  まだ手・指は動かさない。
4.数秒間の停止後、その停止状態を解き、出来る限り瞬間的に押弦する。

実際は右手よりも早く左指が弦を押すことになるので、これは重要です。
その後は左手と右手のトータル・コンビネーションを図る必要があります。


2. 音の終え方、切り上げ方のコントロール

クラシックギターの多くの技術的な解説書では、音をいかに発するかについては詳しいのですが、どのようにその音を終えるか、切り上げるかについては、そう詳しく触れていないのでは?という印象をかつて抱いていたことがありました。
しかし考えてみると、技術的に言えば押弦の維持やビブラート、スタッカート、消音ぐらいでしょうから、それは当然で仕方のないことす。

それにしても音の始まりもそうですが、音の終え方にはとても豊かなバリエーションがあり、味わいがあります。
ではそれを味わうためにはどうするか?
これもまた、意識の注入ポイントを導入し、様々な音楽イメージを注入するしかありません。
どのように音が終わるのか、あるいはどのように次の音につながるのかに意識を傾け、無造作に音が終わってしまわないようにするのです。
特にフレーズの終わり、楽曲の終わりなどは、音を発する時点からすでに終わりのコントロールは始まります。


3. まとめ

以上、今回記したことは、全部の音の始まりと終わりに、意識を集中させる緊張状態を維持せよと言っているのではありません。
以前の記事にこう記しております。

意識の二つの状態
1.意識が無自覚な状態で働いている。いわゆる自動制御運転状態。
  (自転車や自動車運転時の意識状態)
2.意識を自覚的に用いる。意識を傾ける。
この二つの状態は優劣ではありません。必要に応じて常にその状態は切り替わります。

4.意識の神秘よりhttps://note.com/yk_cahier/n/n3468a5b2a791

プランティングや音の終え方、切り上げ方への意識の用い方は、はじめは緊張をはらんだ意識の拡張トレーニングが必要です。
しかしそれが次第に落ち着いて緊張が解けてくると、その多くが自動制御運転状態に移行するようです。
ただそうは言っても、無意識というのではなく、緊張せずに意識を傾けることが習慣化するというべきかもしれません。

最後に今回の記事をまとめてみると、
意識が主体性をもって「音楽空間」を歩めるよう、
全ての音を意識によってコントロールする。
つまり意識を通して音を発し、響かせ、終わらせられるようにする。
ということです。

次回はさらに大きなテーマへ入ってゆきます。
「『音楽空間』に息を吹き込む」です。




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