母からの言葉の呪縛
「あんたがハタチになったら私もう面倒みないからね」
母に昔から口酸っぱく言われていた。
小学生くらいの頃はニートだとか引きこもりだとかが話題に上がり始めていた時期でもあり、ニュースでそれらが特集されるたびに。
そのおかげか、高校を卒業して就職してからは金銭的な援助を受けていない。
正直、前の会社を辞めたいと思ったことは何度もあった。
根も歯もない噂が急にはびこったり、上司がパワハラまがいのことをしているのを見せられたり、実際にされたり。
それでもやっぱり辞めるという選択肢をとらなかったのは、母の教えが大きいと感じている。
それに両親は私が小学5年生の時に離婚し、母が一生懸命一人で働いて私と弟を育ててくれたこと。
父は離婚して早々に再婚し子供も産まれ、新たな家庭を築いたこと。
そういうこともありいざとなったら両親に頼ろうという選択肢がなかったのも理由の一つかもしれない。
会社の寮に住んでいたので、会社を辞めると家もなくなる。
すぐに仕事を探して一人暮らしできる余裕が生まれるのか分からなかった不安もあった。
そういった経験もあり、必要以上に他人相手でもなにかをもらったりやってもらうことが苦手だ。
ご飯をご馳走してもらったり、祝い金を受け取ったりするのは純粋に嬉しく思う。
でも、それが頻繁にあったり相場以上だったりするとどうしても気になる。
仕事などでも自分の至らなさのせいで手伝ってもらったりすることも多いが、良い歳した大人なのに全部やってもらってしまっているという罪悪感を覚える。
さらには、私は何にもできない人間なんだと酷く落ち込むこともある。
今もパートタイムで働いていて、正社員の時ほど稼いではいない。
夫から仕事の愚痴を聞くたびにチクチクと針のようにこれらの考え方が心に突き刺さり辛い。
幼い頃からの母の言葉の呪縛かもしれない。
人は1人では生きられないと分かっていながらも、人と共生するのが苦手な面倒なやつなのだ。