青のプレミアムカー
2021年1月31日、「おけいはん」こと京阪電車の有料座席指定車両「プレミアムカー」が大幅増発、これまでの8000系のプレミアムカーに加えて、新たに3000系がプレミアムカーを連結して仲間入りした。8000系の外装デザインや車内配置などを踏襲しつつも、新機軸をたくさん盛り込んでいて、おけいはんの気合いを感じられる。これまでの実家に帰省する道中で京阪の「3000系プレミアムカー」に乗車してきたのでレビューする。
ちょっとケチって
今回は丹波橋から天満橋までの道中のうち、枚方市から天満橋まで乗った。プレミアムカー券は区間によって400円と500円のいずれかになるのだが、少しケチって400円区間で乗ることにした。後続が丁度3000系だったのでそれに合わせて、1本前の特急の普通車に乗り込み、枚方市まで乗車した。
キャッシュレス券売機であたふた
無印良品プロデュースの枚方市駅構内を見回った後、3000系のプレミアムカー登場に合わせて設置されたプレミアムカー券とライナー券の「キャッシュレス券売機」でプレミアムカー券を購入する。名の通り、クレジットカード、交通系IC、楽天Edy、WAON、nanaco、一部のQR決済といったキャッシュレス専用の券売機。言わずもがな現金は不可だ。
乗る列車の時刻、座席を選び、そして、QRで決済。ところが、エラーが出てしまい、購入失敗。なんとか、インターホン越しで係員さんが対応してくれて、指示に沿って、隣の同じ券売機で改めて購入。しかし、またエラーが出た。一体どういうことだろうと、対応QR決済の一覧を見て僕はハッとした。使おうとした「楽天ペイ」が対象外という凡ミスを犯していた。気がついた僕はクレジットカードを取り出し、三度目の正直でようやく購入、到着放送が鳴る中、ギリギリで購入し、念願の乗車ができた。こういうところはちゃんと確認しないと…
車内のプチ変化
いざ3000系プレミアムカーに乗り込む。扉前には男性のプレミアムカーアテンダントが丁寧にお出迎え。券面を見て予約した座席に腰掛ける。車内、座席の色合いは8000系とさほど変わらず、黒と白を基調にした高級車のような座席にテーブルとリクライニングが付いている。また、通路上数ヶ所には停車駅を案内する液晶ディスプレイが取り付けてある。床の枯山水模様も同様。
それでも、8000系からフィードバックや新機軸もある。
1つ目が窓枠。8000系は窓枠が種車の座席間隔のまんま、そして片側2ヶ所あったドアの1つを埋め、座席にしたこともあって、プレミアムカーではそれらが一致しない場所があり、景色を見る際に少し難があった。それを3000系は改造ではなく1から製造したことで景色を存分に楽しめるようになった。
2つ目、扉から出町柳側の4席にはヒーターが設置された。扉の目の前で開く方向によっては風が吹き込みやすい環境にあるこの部分にのみ座席を温めるヒーターを設置した。僕は今回この席を取ったのだが、そこまで冷えはなかったので使うことはなかった。しかし、冷え込みが厳しい日など、折り返し待ちなどの長時間停車では重宝することでしょう。
3つ目は座席の間隔。1020mmだった8000系から20mm拡張。8000系のときを覚えていたのか、気持ち少し広々している感覚があった。
行き先表示も
車内に限らず外の行き先表示にも新機軸がある。車両横の行き先表示にはガラスメーカー「AGC(旧旭硝子)」が開発したデジタルサイネージ「infoverre(インフォベール)」を鉄道車両として世界で初めて導入した。従来のLEDの行き先表示だと分厚い筐体を設置する必要があり場所を取る。さらに複層ガラスの内側だと日光の反射などで見えにくくなることがある。一方で「infoverre」は筐体が薄く、それを独自の技術で複層ガラスの層にはめ込むことで反射の見えにくさを抑えることに成功、駅のホームドアの情報案内装置や発車標などで採用されてきた。
これまでのLEDの少々粗い表示からは劇的に滑らかな画面で、見えやすさも向上している。こういう類では、過去に名鉄の空港連絡特急「ミュースカイ」を始め、一部車両で三菱電機の「オーロラビジョン」が採用されたことがあったが、見えにくさの不評でわずかに留まり、その後はLEDが採用されたということがあった。ただ、「infoverre」はそれらよりも非常に見やすく、今後鉄道車両の採用が増えそうな気がする。
おけいはんの気合いと社風の強さ
8000系プレミアムカーの好調から、3000系ではフィードバックに限らず、新機軸を次々と導入した。ここまでやっているのを見るとプレミアムカーに懸ける気合いと元からある社風を感じられる。
元々、京阪は冷房車を関西で初めて導入したり、テレビカーや2回建て車両、5扉車など新機軸を積極的に導入し、中には先駆けや初物が多くあったりする。3000系プレミアムカーでも行き先表示が鉄道車両初でったり、座面ヒーターなどの新機軸を導入したりして、これらを感じられる。
おけいはんの「魂」がこもってると言っても過言ではない。そんなプレミアムカーに乗る機会があったら是非体感して欲しい。