近鉄電車の話
大阪、京都、奈良、三重、愛知の2府3県に500km以上の路線網を巡らせている日本最大の私鉄、近鉄こと近畿日本鉄道。大阪難波〜名古屋の名阪特急を軸に、奈良、京都、吉野、伊勢志摩など広範囲に特急を走らせていて、車種も豊富です。また、奈良線では阪神電車との直通運転も行い、神戸市内と奈良を乗り換えなしで結んでいます。
そんな近鉄沿線に住むようになって早5年目の僕。大学時代はバイトの通勤で非常にお世話になっていました。そんな近鉄はエピソードを豊富に取り揃えています。
近鉄とは
近鉄は大阪線、奈良線、京都線、橿原線、名古屋線、南大阪線、吉野線の主要路線を筆頭に、数多くの支線を持っている。過去に合併を繰り返したこともあって、線路幅や電気方式が異なる路線も多い。それでも、このネットワーク力を持ち味に、大阪線と名古屋線では新幹線に対抗する「アーバンライナー」と「ひのとり」が、伊勢志摩へは「しまかぜ」と「伊勢志摩ライナー」が大阪阿部野橋から吉野へは「さくらライナー」と「青の交響曲(シンフォニー)」といった主力特急の他、奈良、京都、橿原方面や先の特急達のサポート役として「汎用特急」と呼ばれるものもある。これらは需要に応じて連結や2方面への運転もでき、オールマイティーさが高い。
これらも含め、通勤電車も2両から10両まで柔軟に組み合わせることが可能で、2両×5編成を組むトリッキーな組み合わせもある。
その他にも、団体専用の「あおぞらII」「楽」、旅行大手クラブツーリズム専用の「かぎろひ」、朝一番の伊勢志摩で獲れた新鮮な魚介を大阪に運ぶ「鮮魚行商専用車両」、近鉄版ドクターイエロー「はかるくん」など変わり種車両も多い。さらに、車両も新幹線などと同じ1435mm規格とJRと同じ1067mm規格、けいはんな線は乗り入れ先の大阪メトロに合わせて第三軌条規格を採用している。まさに「ダイバーシティ」とも呼べるぐらいバラエティ豊かな鉄道だ。
ガチャっぽい
高度成長期から走る車両や2000年代生まれの新しめの車両まで通勤向け、特急向け問わず多種多様な車両が在籍している近鉄。それらは連結も日常で、「ブレーキ読み替え装置」のおかげもあって、年の差があろうと、性能の差があろうといろんな組み合わせバリエーションが可能だ。どんな列車がどんな組み合わせで来るかは基本分からないため、来る瞬間はソーシャルゲームのガチャを回すときのような感覚になる。ただ、京都市営地下鉄直通列車や「しまかぜ」「アーバンライナー」など車種がほぼ固定されているものもある。さらに色が違う列車や前後ろで形が全く違う車両が連結されているのも珍しくなく、それもまた面白さに深みが出る。
リッチな修学旅行
↑2階建て特急「ビスタEX」。
近鉄に乗ると度々、「貸切」という表示を目にする機会が多々ある。その乗客を見ると、小学生、中学生、高校生の修学旅行であることが多い。それを見ている僕は羨ましくなる。僕が行った修学旅行は多くがバス移動だった。たまに列車移動もあるが、1編成を丸ごとチャーターして移動するのはある意味別次元の世界のように感じる。特急向けの他、団体専用列車も使われる。そのうち、2階建車両を連結した「ビスタEX(エックス)」と「楽」が使用されているのを見ると、「この学校、あんなリッチな電車で修学旅行するんかぁ。」と僕は羨望MAXで見ている。「ビスタEX」は個室付きの特急用で「楽」はフリースペース付きで団体専用の貴重な車両。鉄道好きには最上級の修学旅行になるに違いないほど。永遠の憧れだ。
近鉄meets Snow
↑雪煙を上げて駆け抜ける8810系大和西大寺行き各駅停車
2019-2020シーズンは記録的暖冬で、京都府南部は一度たりとも雪が降ることが無かった。それでも、ここを含む「近畿中部」は雪が年に1度降るぐらい。なかなか珍しい。3年前の冬は住んでるアパートの近辺でも数㎝の雪が積もった。銀世界の光景を見て、僕はスマホ片手に家を飛び出た。銀世界を走る近鉄と烏丸線を撮影したかったからだ。新雪を吹っ飛ばして、雪煙を上げてひた走る近鉄と地下鉄車。非常に絵になる光景で滅多に見られない貴重なシーンを収められた。あれからしばらくは銀世界の近鉄は撮れていないが、今年は例年並みあるいはそれ以上が降るという予報が出ているから、期待ができる。もし降れば、ビデオカメラ片手で激撮したい。
平成最後のお召し列車
↑「平成最後のお召し列車」に起用された「しまかぜ」
天皇皇后両陛下を始め、皇族方がご乗車される特別列車のことを「お召し列車」といい、公務や国事行為に伴うご移動の際に仕立てられる。
JR、新幹線がほとんどであるが、伊勢志摩や奈良県内のご移動は専ら近鉄が指名される。大手私鉄では最多の運転実績を誇っている。
平成から令和に変わろうとする3月下旬、当時の天皇皇后両陛下(上皇ご夫妻)は奈良県橿原市にある神武天皇陵にご参拝し、退位することをご報告されるため、京都から橿原神宮前までご乗車された。豪華観光特急「しまかぜ」が起用され任務に当たった。
これを知った僕は沿線の混雑を避け、自転車で数分の比較的空いていた田んぼ道に三脚を立てた。
待っていると1人の女性が「何か来るんですか?」と僕に尋ねた。かくかくしかじか話すと、やっぱり天皇皇后両陛下が近所をお通りになることもあってか、女性は大喜び。一緒に通過を待つことにした。待つこと数十分、天皇皇后両陛下を乗せたと思われる「しまかぜ」がやってきた。JRでのお召し列車では日本国旗が車両先頭に掲揚されるのだが、掛ける場所が無いのか、無掲揚。また、車内を見ても、天皇皇后両陛下が手を振る姿も見られなかった。ただ一つ、皇族方がお召しになる淡い色のドレスを身に纏った方々の姿があり、一目で「お召し列車」と分かった。女性も大喜びで満足そうだった。
3200系と3220系
↑3200系
↑3220系(左)と京都市交通局10系(右)
上記の通り、近鉄は連結バリエーションが幅広い。そんな中で2つ異彩を放つ車両がいる。
まず、3200系は地下鉄烏丸線への乗り入れ用兼旧型車の置き換え用として製作された車両。赤っぽいマルーンと白のツートンという近鉄の通勤電車お馴染みのカラーを纏いながらも、左右非対称、6両固定、さらに登場当時は他がマルーン一色だったこともあり、より異彩を放つ見た目だった。
その後、弟分として3220系が2000年にデビューした。「シリーズ21」の1つで、車椅子スペースなどのバリアフリー設計、1人分ずつくぼんだ座席、複層ガラスの採用などで快適さを高めた車両だ。また、それと同じく左右非対称となっている。
両者は「ブレーキ読み替え装置」がないため、通常時他形式との連結はできない。また、地下鉄烏丸線への直通列車は規格をクリアしたこれらが京都市交通局の車両とともに専用で担っている。
京都線と地下鉄烏丸線をホームグラウンドとして、橿原線や天理線の急行、奈良線では大阪難波発着の普通、区間準急で活躍している。ちなみに、検査を五位堂検修車庫で行う関係上、大阪線で試運転や回送されることもある。
僕にとっては、引っ越す以前から烏丸線内で頻繁に乗ることがあって、最も乗車回数が多い車両。唯一無二の面構えも相まって非常に愛着のある車両だ。
奈良の県民的ポイント
近鉄電車では「KIPS」というポイントサービスを展開している。近鉄の駅ナカや近鉄系スーパー「近商ストア」などでポイントを貯めたり、使うことができる。さらに、近鉄の定期券購入でもポイントを貯められる。形態はポイントカードやクレジットカードの他、ICOCAに搭載された「KIPS ICOCA」というもある。
特に「KIPS ICOCA」は列車通学や通勤で持っている人が多数で、母校の大学でも奈良方面の通いの人は多数持っている。改札でもよく見ると緑色のICOCAをタッチしている人が多数いる。
キャッシュレスの本を購入し、読んでいると「KIPS」の記事が載っていた。それによると、成人の奈良県民の40%が保有しているとのこと。それぐらい奈良では「県民的ポイントサービス」なのだ。僕の故郷でも「HOPカード※」という「県民的ポイントカード」があり、1000ポイントで同額の現金が還元される魅力があるのだが、定期券でポイントが貯まる点では正直、一歩及ばないと思ってしまう。おそらく、日本最強クラスのポイントサービスだと感じられる。
※滋賀を中心に京阪神、北陸、東海地方で展開するスーパー「平和堂」のポイントカード。滋賀県民にとっては持ってて当たり前というあるあるネタがあり、バラエティ番組でたまに紹介される。さらに「HOPカードの女」という歌まであるほど。
というわけで、近鉄電車の思い出などを綴りました。いかがでしたでしょうか。
かつてはそこまで乗る機会が少なかったものの、沿線に住んでからは近鉄の良さや近鉄あるあるの実情を知れるようになりました。車種の豊富さで見てて飽きないですし、変わり種も多くて、楽しい鉄道やなぁと思います。今後個人的には新型名阪特急「ひのとり」に乗りたいですし、コーヒー好きでもある僕にとっては「ひのとり」オリジナルの挽きたてコーヒーを飲んでみたいですね😊
ストリートミュージシャンの投げ銭のような感覚でお気軽にどうぞ。