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振り子特急って良いのか悪いのか

JRやJRに乗り入れる他社の特急の一部では台車と車体の間に「振り子」の仕組みを取り入れて所要時間短縮に力を入れている。車体を傾けることで、遠心力を打ち消し、制限速度より速い速度でカーブを通過できる。

↑381系特急「やくも」(左の電車)
振り子特急の始まりは1973年。その年デビューした381系電車の「自然振り子」を採用したのが始まり。「しなの(大阪、名古屋〜長野など)」「やくも(岡山〜出雲市)」「くろしお(京都、新大阪〜和歌山各地)」などカーブが多い区間の電車特急に投入され、所要時間短縮に効果を発揮した。しかし、カーブ前後の独特の振動で乗り物酔いをする人が続出するほど乗り心地が悪かった。今に至るまで活躍はしているが、採用はこれっきりとなってしまった。 

↑JR四国2000系
 試作車「TSE」(上)と同量産車(下)

時が流れて、JRになった後の1989年。JR四国2000系ディーゼル車では新たに「制御式振り子」が採用された。コンピュータでカーブの情報を計算して車体を振り子で傾ける方式でこれによって、所要時間を短縮する上、独特の揺れを軽減、さらに高速バスなどのライバルを追随することにもなった。

それでも酔ってしまった。

↑383系「しなの」(上)E351系「スーパーあずさ」(VICOM商品画像より引用 下)
改善されたとは言え、乗り心地が悪いと言う声はまだ聞く。2007年春頃、両親、僕、妹の4人で長野と山梨を旅した時のことだった。途中「しなの」と「スーパーあずさ※」という2つの制御振り子の特急に乗った。しかし、妹は乗り慣れない振り子の傾きに体調を崩し、振り子酔いをしてしまった。

※東京、新宿と松本などを結んだ特急。当時乗ったのはE351系(2018年引退)は制御振り子を採用していた。現在は空気バネで車体傾斜させる方式を採用したE353系に置き換わった。

さらにもう1人、中学の女友達がツイッターで高知に行った思い出をツイートしてたときのこと。それを見ていると、先の2000系を使用した特急「南風(岡山〜高知など)」に乗ったときに気分が悪くなり、後免駅(高知県南国市)でトイレに駆け込んだという。当時乗っていたのは、「アンパンマン列車」だったそうだが、乗れて良いのやら、悪いのやら…

振り子に耐えられる僕。

過去に先の「しなの」「スーパーあずさ」「スーパーはくと(京都〜鳥取、倉吉)」「しおかぜ(岡山〜松山)」「宇和海(松山〜宇和島)」「ソニック(博多〜大分など)」「やくも」の7つの振り子特急に乗った僕だが、一度も酔ったことが無かった。

↑8000系「しおかぜ」
ただ、1人旅でしおかぜに乗って香川県内、愛媛県内に入った際、瀬戸内の海沿いの単線を新快速並の最高速で駆け抜けていたのが怖いぐらいに速かった感覚がある。あの新快速にお世話になりまくっている僕でさえ、スピードのスリルがあった。それでも、「SILENT SIREN(サイサイ)」の「ビーサン」などを最高速で聴きながら乗っているのは泣けて楽しかったし、乗り慣れてきた今治から松山までは5時起きした疲れで眠れたほどだったが笑

乗り心地向上

↑空気バネの車体傾斜を搭載したN700系(上)と名鉄「ミュースカイ」(下)
制御振り子でマシにはなったとはいえ、妹や女友達のように慣れない傾きで酔う人はいるそうだ。現在では新幹線のN700系列、名鉄の特急列車「ミュースカイ」などが空気バネで車体傾斜させる方式を導入、「くろしお」では全車モーター付きで低重心の安定感ある電車を導入するなど振り子に頼らない形で乗り心地向上し、振り子同等の時短や安全向上を図っている。一方、四国でも車体傾斜方式の新型を導入し、試験をしたが、徳島や高知の山奥の区間の多いカーブに適さず、結局これまで通りの振り子仕様となった。

今回は振り子特急の良し悪しを周りの体験談を交えて解説してきました。鉄道ファン以外では言葉でピンと来ないでしょうが、もし鉄道で酔ったことがあるという方、もしかしたらこれが原因なのかもしれません。
振り子にはメリットデメリットありますが、列車の進化や鉄道の優位性には少なからず良い効果をもたらしたのは確かです。ここから空気バネの車体傾斜技術、それをN700系列に搭載しての東海道新幹線285㎞/hのスピードアップと時短実現に繋がっているわけですから、侮れないところがあります。
鉄道とライバルの熾烈な競争の中で生まれた努力の賜物とも言えるのが「振り子の力」なのかもしれません。

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Yuki(ゆうき)
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