見出し画像

いまざとライナーレビュー

大阪市の東部、東成区今里(いまざと)から生野区、東住吉区を経て、「ハルカス」のお膝元、あべの橋、あるいは陸上競技場やサッカースタジアムなどがある「スポーツタウン」長居を結ぶオレンジ色のバスがある。その名は「いまざとライナー」。所謂「BRT(バス・ラピッド・トランジット)」のバスだ。しかし、他の「BRT」とは異なって、専用レーンや専用設備は無く、全区間一般道を走る。とはいえ、通常よりバス停間隔が長かったり、地下鉄などと連携していたり、様々な経緯で、一応「BRT」という扱いになっている。
昨日の「バースデーぶらり旅」で「いまざとライナー」に乗ってきたので、そのレビューを綴る。

いまざとライナーとは?

この「いまざとライナー」というのは「地下鉄の代わり」として走っている。走行区間の一部は大阪メトロ今里筋線の延伸予定区間にあたる。延伸の是非は議論されてきたものの採算面で凍結されてきた。そんな中で、延伸賛成派がBRTを延伸の是非を問うための社会実験ということで走らせることを提案し、2019年に「いまざとライナー」が誕生した。
「あべの橋ルート」と「長居ルート」の2つの系統があり、前者は神路(かみじ)公園バス停から延伸部に沿った後東住吉区杭全(くまた)交差点で西に90°進路を変え、そのまま、あべの橋バス停に至る。後者は杭全まで前者と同じルートで、そこから延伸部の終点湯里(ゆざと)六丁目まで南下し、西に進路を変え、地下鉄長居を経て長居西2丁目バス停に至る。中心部や御堂筋線とのアクセスを容易にしたルートになっている。
車体は地下鉄と同じオレンジ色を纏い、今里筋線との乗り換え時間を短くし、バス停間隔も地下鉄に合わせている。また、あくまで社会実験のため、他で見られる専用レーンや運行システムは無い。それでも、「鉄路の代わり」という点や連携の面でBRTと位置付けられている。

地下鉄のエキスたっぷり

大阪メトロ今里駅を降り、駅出口まで階段を登ると目の前にはオレンジ色のバスが既に停車していた。「いまざとライナー」のバスだ。乗り換えてまもなくバスは発車する。地下鉄との連携は非常にバッチリだ。いろんなところで「地下鉄のエキス」を感じられるこのバス。車内放送も英語担当は地下鉄でお馴染みのウェグミュラーあけみさんが務めている。ここまで地下鉄に寄せてくるとは…

攻めた内装と先進設備


↑僕が乗った「いまざとライナー」内装
「いまざとライナー」の専用バスは全部で14台。段差のないノンステップバス。外装は全て同じだが、内装は14台全て異なるデザインになっている。僕が乗車したバスはパステルカラーの紫とピンクでレース生地とハートの模様があしらわれている「キュート」というデザイン。なかなか通勤通学、日常生活で使うバスとは思えないほど、ラブリーなデザイン。ここ最近の大阪メトロの車内デザインが凝っていて楽しくなっているのを目にしていて、ここでもそれが息づいている。「ここまでやるか!?」と思わせるほど攻めているが、「日常の良いプラス」となっていて楽しい。
「いまざとライナー」共通の設備として、デジタルサイネージが2つ設置、片方は広告用で大阪メトロ、大阪シティバスの広告や沿線オススメ情報、各鉄道でも見ることができるNHKの映像ニュースなどが流れる。もう片方は次のバス停を案内する他、鉄道路線に隣接するバス停では現在時刻に近い列車の案内がされる。運営元の大阪メトロの路線のほか、JR阪和線長居駅、杭全バス停に近いJR大和路線東部市場前駅の列車時刻も表示する。バスに乗る機会はそれほど多くはないが、先進な設備で非常に利便性が図られているように感じる。

乗ってみて

バスは「コリアンタウン」生野区や東住吉区といった「ザ・大阪の下町」を駆け抜け、JR大和路線の高架を抜けたすぐ先の「杭全」の交差点で西に進路を変更。そのまま大和路線に沿って走る。そして、バスは約25分であべの橋に到着。
緑色の大阪シティバスを追い越していく姿は速達性の良さを感じた一方で、専用レーンが無く、度々信号待ちも食らったため、少しそれが劣る面もある。

感想と今後

一応、「地下鉄の代わり」という扱いで、この実験を踏まえて、今里筋線の延伸やBRTの継続についての今後が決まる。平日昼間はこんなもんやろという感じでまばらというほどでもなく、市民の足として活躍している姿を見てとれる。果たして、地下鉄としてやっていけるかは分からないが、BRTとしてはまずまずといったところではないだろうか。しかも、天王寺、あべの橋エリアに直接行けて、スポーツ観戦で長居に行くにも利便性はかなり大きいことでしょうし、鉄道との連携も良好。これなら「続けていってもいいのでは?」と思うほど。2019年から5年間の運行実績で延伸の是非を判断するとのこと。今後の行く末を見守りたい。

ストリートミュージシャンの投げ銭のような感覚でお気軽にどうぞ。