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おけいはんの話
京都と大阪を結び、3つの支線を持つ京阪本線系統とびわ湖浜大津駅を中心に大津市と京都市山科区に路線を展開する大津線系統から成る京阪電車。今年で創業110周年を迎えました。JR、阪急などと比べスピード面で劣るものの、車内のグレード高さでいい勝負しているのが特徴的。鉄道以外でも関西や徳島などで放送されている「おけいはんシリーズ(※)」のCMは知名度の高さを誇り、京阪電車直営の「ひらかたパーク(ひらパー)」はUSJに負けず劣らずの人気があります。そんな京阪電車にまつわる僕のエピソードをご紹介します。
※「おけいはん」という女性が主人公で京阪沿線の名所を巡り、京阪の利用促進に繋げようというCM。コント仕立てで非常にユーモアがあり、関西の名物CMの1つとして紹介されることも。ちなみに主人公の名前は「〇〇けい子」(〇〇→京阪の駅名)と名付けられている。
京阪電車とは?
↑関西初の新製冷房車2400系
大阪の淀屋橋を起点に京都の三条に至る京阪本線と1989年の七条〜三条間地下化に合わせて開通した三条〜出町柳の鴨東線を軸に、枚方市〜私市(きさいち)の交野線(かたのせん)と中書島〜宇治の宇治線、天満橋〜中之島の中之島線の3つの支線を持つ。これらは「京阪線系統」と呼ばれる。
一方で、石山寺〜びわ湖浜大津〜坂本比叡山口の大津市内を走る石山坂本線とびわ湖浜大津から京都市山科区の御陵(みささぎ)に至る京津線(けいしんせん)の「大津線系統」、これら2つがある。2つは直接接続していないものの、京津線が御陵から京都市営地下鉄東西線に乗り入れ、三条京阪駅で両線の乗り換えが可能。
淀屋橋〜出町柳は並行しているJR、阪急と競合している。しかし、所要時間はそれらより長く、スピード面は劣る。それを補う部分として、車内のグレードが高い。例えば、現代では当たり前の車内冷房。それを通勤電車で搭載したのは1969年デビューの2400系電車が関西で最初だったり、特急向け電車では日本初の転換式2人がけ座席を設置した「ロマンスカー(※)」やテレビカー、2階建て車両などがあり、いずれも特急料金が要らない普通車だ。この斬新なスタイルは京阪の大きな特徴で他社を圧倒する。
※「ロマンスカー」と言えば、新宿、千代田線から箱根、江ノ島、御殿場などを結ぶ小田急の特急電車の愛称であるが、元々は京阪電車が元祖。映画館の「ロマンスシート」に因んでいる。
はじめての京阪
↑「赤の特急」こと8000系エレガントサルーン
僕が滋賀在住時代は京都、大阪方面の移動は専ら新快速か新幹線でほぼ乗る機会が無く、石山坂本線、京津線に乗ったことはあるものの京阪本線系統はほぼ皆無だった。
大学入学後に京都に移住してからは、大阪方面へは京阪が非常に安く頻繁に乗るようになった。カーブが多い分ブレーキの頻度も多いものの、「赤の特急」8000系の車内は赤と黒を基調とした車内で車両端のベンチタイプの座席は通常の物より、背もたれが高く、座高90cmほどの僕でもすっぽり収まるほどだ。これを京阪は「日本一豪華なロングシート」と称している。名に恥じない座り心地だった。
↑「青の特急」こと3000系コンフォートサルーン(ドラクエコラボ)
他の日には3000系という「青の特急」に乗ったのだが、比較的新しくモダンな雰囲気で車内は不思議と静か。さらに座席は「エクセーヌ」という「日産エルグランド」「トヨタクラウン」など高級車で使用される生地が採用されていて、座り心地、肌触りが良い。空間は「関空・紀州路快速」と同様の2+1列座席で広々で、3ヶ所ドアも相まって乗り降りもスムーズになっている。
プレミアムカーとライナー
↑京阪8000系プレミアムカー
2017年から京阪8000系の6号車に「プレミアムカー」が導入された。着席需要に応えようと始めたもので、京阪史上初の有料座席車両だ。見た目は赤が濃く、扉は金色、半月型の扉窓は非常に目立つ。車内は漆黒の座席と枯山水をイメージしたカーペットの極上空間、黒の衣装に身を包んだアテンダントも乗務している。アテンダントは全日空の子会社所属でCAの技術が叩き込まれているからか、丁寧で接客が行き届いている。特にお辞儀は一流ホテルに引けを取らない風格を感じる。
ただ、1つ気になるのが窓枠と座席ピッチの違和感。改造車のため座席によっては窓の配置と座席の位置が合わず、違和感のある位置に窓枠があることがある。それでも、2021年1月改正から開始する3000系「プレミアムカー」は新造車のため、この課題は解決される。
「プレミアムカー」と同時に「ライナー」という種別も登場した。「ライナー」は普通車も含め全席指定※。2020年12月現在朝ラッシュ3本、夜ラッシュ2本が運転され、特急とほぼ同じ駅に停まる。朝は出町柳、樟葉、枚方市から淀屋橋行きが、夜は淀屋橋発出町柳行きが2本運転される。
ラッシュの特急は京橋〜枚方市を中心に非常に混み合う。始発である淀屋橋からでないと基本は座れないこともほとんど。僕は時々ライブ終わりに「ライナー」の時間に出くわすことがあり、その時は乗ることもある。8000系のみが使用されていて、出入り口では「プレミアムカー」のアテンダントが出迎える。特急発車の数分差で発車するからか、車内は少し空きもある。それでも、「密」を避けられる落ち着いた環境で仮眠には打って付けな雰囲気だ。
※「ライナー」のうち、淀屋橋行きの京橋→淀屋橋、出町柳行きの七条→出町柳はライナー券無しで乗車が可能で、プレミアムカー以外のどの座席も座れる。
緑の特急
↑「緑の特急」の1つ6000系
京阪の特急は8000系と3000系が主に使用されるが、朝晩ラッシュ時間帯や所謂「代打」として、緑色の通勤向けの車両が登板することも多い。オールロングシート、車内も素朴な「各駅停車感」漂う車内。先の2種類に比べると快適さは少し劣る。故に「ハズレ」なんて揶揄されるなんてこともある。昼間は全て2種類で賄えているが、予備がいないため、検査で足りなくなった際にはたまに登板している。僕も夜の時間帯、ライブ帰りに場合によっては出くわすこともある。「ハズレ」なんて呼ばれてても、特急は始発の淀屋橋以外だと座れないことが多く、枚方過ぎて、座れただけでも僕にとっては「大当たり」だ。スピードも遜色ない速さで、一部のリニューアルを行った編成、最新型は車内の木目の壁が綺麗だ。プラス、僕は通勤電車のロングシートが好みということもあるが…
それでも、個人的な意見ではあるが、ロングシートの特急もええもんだと思う。
京阪と好きなバンド
ここで少し音楽と京阪を絡めた話を。2018年のお正月に放映されたauのCMソングに起用されたことで知られるロックバンド「yonige」。京阪沿線の寝屋川市出身で、時々ジャケットやPV、曲中で京阪電車が登場している。「Neyagawa City Pop」というEPのジャケットは駅のホームでしゃがんでいるyonigeの2人と見慣れた色の京阪電車が写っている。僕が動画撮影に行ったときのこと。このジャケットを見たことときから、撮影地を大まかに推定していた。そして、おそらくここだろうという場所を見つけて激写、プラス動画も撮影した。
また、このEPのリード曲「さよならプリズナー」のPVの中でも、萱島駅付近の留置線で待機中の折り返し電車の横を駆け抜ける京阪電車が曲の終盤で映り込んでいたり、2人が京阪に乗車しているものや、寝屋川市と香里園の駅前で撮影したカットなど数回映り込んでいる。さらにこのEPには「各駅停車」という曲もあり、「 yonige'sホームタウン寝屋川」を感じさせながら京阪電車も地元の象徴として多数登場する。
以前「タバコが似合いすぎるアーティスト」としてyonigeを取り上げたが、個人的には「京阪電車も似合いすぎるアーティスト」だと感じてしまう。EPの歌詞カードの写真やPVには寝屋川市内の公園、川や yonigeの原点と言えるライブハウス「寝屋川VINTAGE」で撮影したものもあって、 yonigeの地元愛を垣間見えるEPであるが、鉄道好きの僕には京阪電車がたくさん出てくるのが気になってしまう。人それぞれの見方はあるが…
↑京阪5000系「5扉モード」
今回は京阪電車に纏わるエピソードや「京阪電車が似合いすぎるアーティスト」のお話を綴りました。 yonigeの話はあくまで個人の見解ではありますが、そういう部分もPVで垣間見えると思います。
2021年1月には京阪線系統でダイヤ改正が実施され、3000系にプレミアムカーが導入、キャッシュレスが使えるプレミアムカー券、ライナー券の券売機を設置するなど、サービスが大きく拡充する影で「ラッシュの切り札」として1両に片側5ヶ所に扉を設けた5000系電車の5扉運用廃止、終電繰り上げなど「光と影」が見え隠れしています。個人的には3000系のプレミアムカーに乗って8000系のものと比較してみたいと思います。
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