捻挫で必ず評価するべき部位 前下脛腓靭帯損傷を見逃すな! ~不安定性や変形リスクの増大~
1.AITFLの解剖と機能
足関節捻挫は最も多い外傷のうちの1つになります。その中でも、約20%はSyndesmotic靱帯の損傷が生じると報告されています。Syndesmoticは遠位脛腓関節を指しますが、Syndesmotic損傷はSyndesmotic靱帯損傷を示すことが多いです。
まずは遠位脛腓関節とSyndesmotic靱帯について簡単に説明します。遠位脛腓関節は脛骨遠位凹面と腓骨遠位凸面の間の線維性関節になります。この関節面を安定化させるために、Syndesmotic ligamentが存在しています。
Syndesmotic靱帯には前下脛腓靱帯(AITFL)、骨間靱帯、後下脛腓靱帯があります。今回の記事では、AITFLにポイントをおいて記載していきます。AITFLは遠位脛骨から遠位腓骨まで、斜め遠位方向に走行している靱帯になります。
AITFLの解剖学的な特徴として、Syndesmotic靱帯の中で最も弱いと考えられており、損傷が生じやすい靱帯と考えられています。特に、上部線維は短くて薄い構造を呈しているため、損傷が生じやすいです。
AITFLの主な役割は遠位脛腓関節の安定化になります。遠位脛腓関節はあまり可動域は無い関節になりますが、足関節の天井を構成する関節であるため、AITFLの安定性の役割はかなり重要になります。
足部の安定性と言っても、いろいろな要素があります。AITFLは足部の外旋に対して主要な静的な安定化組織になります。足部外旋のイメージは、距骨からつま先が外に向いていくイメージになります。
AITFL個別で見た報告では、AITFLは腓骨の横方向への移動を防ぎ、足関節外旋の約24%を制御すると報告されています。もちろん、AITFL以外の後下脛腓靭帯、骨間靭帯も足関節外旋の制御に寄与しています。
また、足関節背屈時の腓骨の動きも制動し、足関節の安定化に寄与しています。足関節背屈時、腓骨は外側移動し、外旋が生じます。この腓骨の動きをAITFLが制動することで、脛腓関節が安定した、足関節背屈運動を行うことができます。
AITFLが損傷すると、脛腓関節が不安定となり、足関節の安定性が低下したり、距骨の動きの増大、距骨と天蓋の接触表面積が減少してしまうため、様々な問題が出現することがあります。
もし、AITFL損傷を見逃すと足関節慢性不安定症や変形性足関節症、残存する痛みなど長期的な合併症に繋がる可能性があります。
じゃあ、合併症を予防するために「しっかりとAITFLの評価をしたらよいのでは?」と思われるかもしれませんが…。実際、最初の評価で49±22%で脛腓靱帯損傷が見逃されていると述べられています。
そのため、まず評価で大切なことは”捻挫でAITFLが損傷している可能性を常に頭の中に入れておくこと”が大切になります。そして、AITFL損傷に伴う、遠位脛腓関節の安定・不安定損傷の評価を行うことも重要になります。
2.AITFLの理学療法評価
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