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中学受験を終えた受験生へ~贈る言葉

中学受験を終え、これから中学生になる受験生に、私なりに伝えておきたいことを4点書きました。心に響くところがあれば、そこだけでも切り取って、覚えておいてください。

1.君たちはまだ「スタートライン」に立ったに過ぎない。

燃え尽き症候群にならないために。第一志望とする学校に入った人にとっては、入試日を迎えたその日から、君はその中学校の一員となり、そしてその初日に、スタートダッシュテストを受けたにすぎない。残念ながら第一志望の学校に入ることができなかった人にとっても、それは同じこと。入試を終えてしまえば、そのスタートラインには「良いスタートライン」も「悪いスタートライン」もない。大事なことは、その先。つまり、入学した学校、置かれた環境下で何をするか、ということ。

入試、受験をゲーム感覚のようにとらえてしまうと、ここが一番乗り越えるのが難しい壁となる。ゲームはクリアすればそれで終わり。その先を考えることはない、または続編のゲームが出てきたらまたそのゲームをやるかもしれないが、誰かがそのゲームを作ってくれなければ歩むべき道は見つけられないということになる。アオハル的な言い方をすれば、誰かがレールを敷いてくれなければ前に進むことができない、誰かが敷いてくれたレールの上しか進めないなんて、無限の可能性を自ら閉じているようで大変残念な気持ちになる。だからこそ、志望校に入ったその先に自分は何をしたいのか、「社会に出て自分はどう貢献できるか」を考えるくらいにできるだけ先を見通して、モチベーションを深く掘り起こしておくことが受験勉強の一番大事な事だと思う。

2.「かまわれる」ことに慣れるな、周りを「かまう」人間になれ。

中学受験自体は、特に経済面で親が大いに支援してきてくれたはず。レールは親が敷いてきてくれた側面が大きい。しかしその中で、親が世話を焼いてくれるのが当たり前、自分のことをかまってくれて当たり前、という環境に慣れ過ぎて、他人に興味関心を向ける、という経験が君たちは圧倒的に不足している。世の中で何かに貢献をしようと思ったら、自分の中の世界だけでその役割を果たすということはできない。

世の中にはどういう人たちがいるのか、あるいはもっと狭い世界で、自分の周りにはどういう友達がいるのか。類は友を呼ぶ、というが、自分はそもそもどういう「類」なのだろうか。友人関係が充実するのはもちろん、世の中の人たちはどういうことで困っているのかも見えてくると思う。難病で困っている人が見えたのなら医者や新薬研究の道へ、経済的に困っている人が見えたのなら政治、あるいはより多くの雇用を生み出せる会社を起こす道へ、など、将来のビジョン、モチベーションもより深く掘り起こしていくことができるのではないだろうか。

そういう意味では、中学・高校では特に「社会科」系統の勉強は怠らずに勤しんでほしい。暗記をして用語をたくさん覚えることには意味がない。今の社会はどうなっているのか、なぜこうなっているのか、これをしっかり学ぶ機会としてほしい。関西の最難関中や、関東の2科受験できる学校では、社会なしで受験できてしまうため、中学入学後にいかに見識を広げることができるかが、非常に重要と考えている。

3.自らの成長を阻む最大の敵は「自分」である。

中学受験勉強を進めるにあたっても、壁にあたってしまうことはあったと思う。もし今後も常に成長したいと思って行動していけば、必ず成長を阻む壁にあたることになる。その壁は越えたいと思えば越えたいと思うほど、より高い壁となって君の前に立ちはだかることになる。どういうマインドで壁と対峙すればよいのか。それは、

「謙虚な気持ちを持つこと」

壁を乗り越えられない状態下では、ストレス、フラストレーションがかなり蓄積されていくことになる。しかしその不満やイライラが発生するのはすべて「自分のせい」だと思えるかどうか。常に自分はチャレンジャーだという気持ちでその壁と対峙できているかどうか。

壁を乗り越えることを、ゲームをクリアするのと同じ感覚でとらえてしまうと、「勝利」そのものに価値を見出しがちだが、現実はそうではない。勝利に向かって努力することがすべてなのだ、という気持ちで壁と対峙したい。何度も言うが、ゲーム感覚で人生を歩むことは後々燃え尽き症候群になってしまうことを意味する。

4.他人と比べるな。君の人生は君のもの。

入試は獲得点数を他の受験生と比べて合否が決まる、という世界ではあるが、これは入試だけの話。君たちが壁を乗り越えようとするときには、他の人と比較しないこと。いつでも、自分が今より強くなることだけをひたむきに考えてほしい。強くなれない、壁を乗り越えられない、と弱気になりそうなときは、桜の気持ちになって。何も咲かない寒い日には、桜の皆さんは下へ下へと根を伸ばす。だからこそやがて大きな花をたくさん、一斉に咲かせてくれる。

君たちのこれから先の人生が順風満帆であってほしい、輝かしい人生であってほしいと願ってはいるが、それは上記のような「壁をのりこえる」ことも含めてのこと。その中で「逃げる」という選択があってもいい。謙虚な気持ちになって、様々な経験から自分は何を学び取ることができるだろうか。これを常に考えていけば道を誤ることはない。自信をもって、歩み出してください。へこたれそうなときはまた、遠慮せず顔を見せに来てください。

今回は以上です。毎年、受験生を送り出しては思います。この子たちにとって、「良い受験」になっただろうか、と。良い受験――それは、これから歩み出す中高6年間を充実したものにしてもらえるような受験、であると考えています。目標にしていた学校に合格したらそれで勉強をやめてしまった、有名な学校で合格はできたが中身は全然自分に合わなかった…これでは私自身が役割を果たしたとは言えません。「良い受験」をしてもらえるよう、新しい受験生をお迎えしたいと思います。
お読みいただきましてありがとうございました。

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