ミーターの大冒険 第七部 太陽系 第8話 墾化
170第8話墾化
ミーターの大冒険
第七部
太陽系
第8話
墾化
あらすじ
ファウンデーション暦492年(西暦25059年)末、いよいよミーターとイルミナを載せたファー・スター2世号はアルファ星から出発して太陽系に入った。
人類の故郷の星系。懐かしい星、地球。
かつて、カビレ星系と言われていた太陽系。かつてアタカナと言われていた地球。
R・ミーター・マロウの主人アルカディアの志しを携えて、アルカディアや同士ジスカルド・ハニスらのなし得なかった志しの実現の領域に確実に入ろうとしていた。
はたして地球の放射能汚染を駆除することができるのか?
そしていよいよ太陽系外縁部のオールトの雲を抜けて待望した太陽系に突入して行く。
鋭さを増したミーターの推理力は予測通りに土星に遭遇させ、地球のかたわれともいわれる月に不死の従僕の気配を感じさせる。
そしてついに不死の従僕が太陽系第3惑星地球の大きな衛星、その名も月(Luna )にいることを確信する。
新たな天体物理学者のミーターは、不死の従僕が月にいる理由を全て「宇宙潮流」理論で纏めあげる。
そしてミーターは人類と「宇宙潮流」との関わりについて惑星環境の土壌「墾化」現象に言及する。
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ミーター まさに宇宙彷徨(さまよい)だ。宇宙ヒッチハイカー。別な言い方だと、宇宙ノマドだ。
イルミナ そうなんですね!シンナックス人の生き様の「新しさ」、「移動」こそ、根本、ということですね。
ミーター ところで、お前に、問いたいことがある。ちょっとした演算をしてもらいたい。「宇宙潮流」の波の周期についてだ。
イルミナ 今度はなんでしょう、ボス?
ミーター うん、「宇宙潮流」の短い波長は500年だよな?それではその上の大きい周期は何年になる?
イルミナ ええと、12500年でしょうか?
500年に25を掛けるということですね。
ミーター うむ! 12500年か!
ヤッパリ、そう来たか。
イルミナ どういうことですか、宇宙史の先生?
ミーター そうだな、イルミナの方が俺よりよく知ってるはずだが、12500年前に何があったか、ざっと言ってみれば、分かるってもんだ。
イルミナ まず、セッツラーがこの銀河の隅々までくまなく住居可能な惑星に住むのが、ほぼ完成した頃ね。
それから、5個の惑星連合が統合して、トランター共和国が生まれ、それが、ほどなくして、トランター帝国となり、全銀河の統治して銀河帝国が成立するわ。
ミーター もう少し詳しく訊く。そのトランター共和国がトランター帝国になる発端になった出来事とは何だった?
イルミナ ある星系のフロリナという星の消滅に纏わる事件です。その星でしか産出しない超高価な繊維であるカートを独占していたその星系の覇権惑星サークにトランター共和国が政治的介入を図り、フロリナの独立に加担し、成功させたという出来事のようです。
ミーター 流石、銀河の博覧強記!
それで、そのフロリナのカートが産出しなくなり、挙げ句にはその星が消滅する羽目になった理由は、何だったと思う?
イルミナ 先生、待って下さい。
ですね、そうだわ、宇宙潮流の波の移動ですね!
ミーター ピンポーン!
じゃあ、お前、そのほかの一つのこと、忘れてないか?
イルミナ ええっと!何だったかしら?
ええっと、そうね、ボス、分かったわ。
ダニール・オリヴォーによる「銀河歴史消滅」ですわ!
ボス、それらが全部、符合するのね!
またまた、ビックリだわ!
ミーター そこでだ、宇宙潮流がちょっとずれただけで、惑星の環境が以前とは極変してしまうもんだ。それでは、今度は、その惑星環境の変化について少し深堀しようじゃないか。
イルミナ 惑星環境の変化ですか?
ちょっと待って下さい。
ボス、ターミナスにも関係がありますでしょう?
ミーター 当然ある。
イルミナ その変化は、植物相についてですか?鉱物相についてですか?
ミーター それも含むし、それ以上だ。例えば、急激な大気の構成にも、惑星内部の構成にも多大な影響を及ぼす。
驚くべきことは、この宇宙潮流に沿って人類の移動と惑星定住化が可能となったということなんだ!
イルミナ ボス、あなたはいつ、どういうことから、そういう結論を導き出させたんですか?全くの驚きです。
ボス、そういう人類の住居可能に導いた惑星環境の劇的変化のことを何と呼べばいいのですか?
ミーター いいかい、イルミナ、宇宙潮流が人類に与えた素晴らしい恩恵の最たるもの。
それは惑星土壌の「墾化」だ!
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