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ミーターの大冒険 第五部 オーロラ 第9話 回想 アルティメット宇宙空港の怪

133第9話
ミーターの大冒険 
第五部 
オーロラ 
第9話

回想 アルティメット宇宙空港の怪

あらすじ

ミーターとイルミナを乗せたファー・スター2世号は、ガイアの軌道上で長老ドムとの交信で、二人が求めている故郷の星の正確な名前が「地球」であることを知る。

人類の歴史消滅がこの時点で歴史復活のフェーズに転換した、瞬間でもあった。
 
 ガイアの誘導で、ファー・スター2世号はオーロラの恒星系に無事にたどり着く。
 
 二人の目の前には、オーロラの揺らめく極光が怪しく波打っていた。

イルミナは、膨大なデータを何億回も検索して、様々な手法を試し、ミーターとの会話からもヒントを得て、手がかりを抽出する。それが、アンテンニン庭園であった。

話はドースの出身星のシンナに及び、アンテンニン庭園ともうひとつの絵画、パウロ・ヴェロネーゼの『カナの婚礼』もシンナ大学の講堂に掲げてあったという。そのアンテンニンとカナとの繋がりは何であったのであろうか?

ミーターは、オーロラ地表に降り立ち、アンテンニン庭園を探し当てた。そこには洞窟があって、横穴がずっと奥まで続いていた。洞窟のホールの入り口には鳥居があって、3行文らしい文言が記されてあったが、軌道上にいるファー・スター2世号にいるイルミナにその文言の解読を頼んだ。その文言は、銀河聖語による「ロボット三原則」であった。ミーターはなにやら気がづいて、第1日目の探索を中止した。

ミーターの推測は、『児童のための手引き書』にある不死の従僕の先輩ロボット、ジスカルド・レヴェントロフのことであった。

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ミーター 今から考えると、ちょっと気になることがあった。アルカディアと俺がホバーおじさんの航宙船に密航しようとした時だった。
 忘れものを届けに来た、と言ったら、アルティメット宇宙空港のその警備員は親指を上にしてニヤッとして無言で入らせてくれたんだ。

そのとき、アルカディアのバッグの中にいた俺は、その警備員の親指から妙なエネルギーを感じたんだ。
 そのときの警備員とは、もしや、不死の従僕?

イルミナ ミーターさん、不死の従僕さんは神出鬼没。銀河中、何処にでも必要な時、出没するんだわ。逆に考えれば、その瞬間って、銀河史の中でも極めて重要な瞬間なんだわ。
 このオーロラにも、わたしたちを出迎えてくださるために待機しておられるっていうことはないですよねぇ?

ミーター イルミナ、そんな都合がいいんだったら、今までの俺らの苦労なんて、なんだったんだか、わからなくなっちゃうんじゃないか!
 待てよ。不死の従僕さんはいなくても、その代わり、それ以上の収穫があるかもしれないな。

俺の予感では、機能停止しているGR(ジスカルド・レヴェントロフ)が安置されていると思う。
 彼自身、ヒューマンタイプロボットではなかったが、彼から、今に繋がる第零法則のヒューマンタイプロボットが生まれた。
 ちょっと彼に敬意を払ってもう一回、言っておきたいことがある。

ついこの前までは、銀河全域では、ロボットの存在は隠れた秘密として人々の記憶から消されていた。

ハーラ・ブラノ市長がわざわざアルカディア館に来て、俺をまじまじと観察したことがあった。彼女はその後アルカディアに似せたチクタク(自動ロボット)を2万体もつくらせてターミナス全域に行進させ、彼女の党、ターミナス第一党を9割に躍進させた。それ以来、表面的にはロボットの存在は合法化されたように見えたが、その内実は、ますます社会統制を強めて、従来の自由なターミナスは変貌していった。

アルカディアは、そういうターミナスの政治には内心忸怩たる気持ちを抱いていたものの、表面は穏やかに繕っていたと思うよ。

イルミナ、ジスカルドの面前では、お前も連れていかなくては、と考えた。どうにか、同伴できる工夫はないものだろうか?

イルミナ そんなもの簡単よ。被電ピン一本あればいいわよ。

ミーターさんも立派な彼らの一員なんですね。そりゃ、襟を正してジスカルドさんの体を拝まないといけませんね。我らが地球到着を祈願して!

ミーター うん。まさに!

Photo 陽電子を光らせるジスカルド・レヴェントロフ


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