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認知症?! 父と向き合う①

「うるせえな馬鹿野郎!!!」

それはある日、突然はじまった。夫婦の部屋にこもっていた父の怒鳴り声がしたかと思うと「ドン!!」と部屋の扉を殴るような音が響いたのです。

台所にいた母、自室にいた私は、何事かと思い、顔を見合わせました。父はそれだけでは収まらず、1分も経たないうちに、再び「バカン!!」と、次はタンスを殴るような音が聞こえ、続けて、

「うるせえな馬鹿野郎!!!」

という怒号が聞こえてきたのです。さらに今度は無言のまま、「ドン!」と部屋の扉を殴るような、蹴とばすような音。そして、

「うるせえな馬鹿野郎!!!」

という声が響き、そのたびに殴られる、タンスと扉。私は危険を感じましたが、見かねた母が部屋に入って声を掛けると、何を言っても壊れたように、

「うるせえな馬鹿野郎!!!」
「関係ねえよ、馬鹿野郎!!!!」

を繰り返す父。青ざめた表情で部屋を出て扉を閉めると、追いかけるように蹴とばされる扉。その激しい音に怯える母の代わりに、私が入ると、夕方に電気もつけず、真っ暗な中で、股引一枚を履いてウロウロとする父の姿。

近づいて「どうしたの父さん」「大丈夫」「心配なんだよ」など、さまざま声をかけても、すべて、

「うるせえな馬鹿野郎!!!」

との一辺倒。コミュニケーションにならずに扉を閉めると、ひとりで怒鳴りドアを蹴とばすという状態。挙句にドアの枠組みが壊れ、中途半端に開けておくと、蹴っ飛ばして閉まるので、余計に轟音。

古いマンションに住んでいるため、おそらく下の階の人には、夕食どきに、何度も頭上から「ドカン!!」「バカン!!」と振動音が響いていたはずで誠に申し訳ない状況でした。

これが、私と母との、軽度の認知症になった父と向き合う、まさに「はじめの一歩」でした。

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