見出し画像

【展覧会レポート】大地に耳をすます、気配と手ざわり

全体的に自然と人間の関係性を探求するアート展だなと感じた。様々な技法や媒体を用いて、現代社会における自然の意味を問いかけているのが特徴的だ。

展覧会の最初にこちらの作品。エスカレーターの先には鹿のシルエットが描かれた大きな作品が置かれている。都市と自然の対比を連想させる。

写真作品を三層構造で展示することで、新たな鑑賞体験を提供している。

キャンプで使用するツールを用いて展示しているのが印象的だ。

日没時のシルエット写真のシリーズだ。人物の輪郭が強調され、人間と自然の境界線を探っているように見える。

土と藍を用いた版画作品では、文字という文明の象徴と自然の要素を融合させ、独自の表現を生み出している。

今回の展覧会の会場構成はミロコマチコ特有の幻想的かつ生命力溢れる世界観を見事に表現してると感じた。

抽象的な要素と具象的な要素が融合した複雑な構図だがそれらがうまく組み合わさっている。左右に2匹の白い山羊が向かい合っている。だがそれらは山羊だが精霊のような存在を想起させる。背景には激しいタッチで塗られた様々な色彩が混ざり合い、まるで原初の混沌とした世界を表現しているかのよう。全体的に金色や茶色、紫などの暖色系の色調が支配的で、生命の温もりや躍動感を感じさせる。

展示会場の中心にはミロコマチコの見えない竜を主人公とした絵本の一コマが並んでいる。竜が様々な場所を訪れることで様々な色を獲得していくストーリーだ。この1枚では海の生き物たちが躍動感あふれる色彩で描かれている。

ポジティブな儀式性やボヘミアンな雰囲気が感じられた。

このサーカスみたいな雰囲気、独特。不思議。

金色の背景に白と青で描かれた大規模な壁画のように見える。抽象的な形と有機的な線が組み合わさり、自然界の流れや循環を想起させる。

中心には踊っている人形たち。不気味だがなぜか可愛い。

多くの色彩を用いているのにも関わらず均衡が取れている。

中央に大きなムササビ?の姿が描かれており、その翼は細密な模様で彩られている。背景には点描のような技法が用いられ、ムササビが発する光や宇宙のような広がりを表現しているようだ。色彩は青や緑、黄色などが使われており、神秘的な雰囲気を醸し出している。

展示会場の一角にはミロコマチコの制作過程を紹介していた。森の中に設置されたキャンバスに向かうミロコマチコ。その自分の身体を思いっきり使って描く姿は目が釘付けになる。

ミロコマチコの作品に共通するのは、生命の躍動感と神秘性だと感じる。ミロコマチコは、現実世界と幻想世界の境界を曖昧にし、観る者を独特の世界観に引き込む。

キャンバスの側面まで利用した作品や、アルミパネルを厚い水に見立てた作品など、平面にとどまらない立体的な表現が見られた。

本展覧会は、ミロコマチコをはじめとする作家の創造性溢れる世界観を立体的に体験できる構成となっている。東京都美術館の1階と2階を使用し、2階から全体を見渡せる空間設計により、作品群を俯瞰的に鑑賞することができる。

暖色の照明のスポットライトを使うことで、まるでサーカスのような独特の雰囲気を醸し出している。

この展覧会は、ミロコマチコを中心とした作家の多様な表現技法と豊かな想像力を総合的に体験できる機会となっている。自然と文明、現実と幻想が交錯する独自の世界観が、会場全体を通じて体感できる構成となっている。観る者を魅了し、想像力を刺激する展示内容は、現代アートの新たな可能性を示唆しているといえる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?