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カンボジアの地平線

過去に一度カンボジア旅行に行った話を書いたが、そこで偶然撮れた一枚の写真の話をしたい。

カンボジアのバッタンバンという街には、「バンブー・トレイン」という、簡易トロッコの様な物に乗って一本道の線路を凄まじい勢いで走る、かつての貨物用トロッコをアトラクションに転用したスポットがある。(もちろん有料)

基本的に”見て学ぶ”観光地の多いカンボジアでは、こういった”遊んで楽しむ”ことのできる場所は新鮮だ。

一本道なので、対向車が来ると乗っているトロッコを一度線路から外して道を譲らないといけない。勿論観光客が手伝えるものではないので、エンジンを操作するおじちゃんが作業しているのを、ただただ待つというシュールな時間が生まれる。

↑実際の作業風景

僕が乗車している時も対向車が来たので、トロッコから降りて作業が終わるのを待つことになった。

線路の脇でぼけーっと立っていると、そのすぐ近くで、水遊びをしている子供たちがいた。僕に気が付いた子供達は、楽しそうに手を振ってくれた。それがあまりにも可愛いもんだから、どれ、一枚遊んでる写真でも撮ってやろうと、なんとなくスマホのカメラを向けた。

ホント〜になんとなく撮ったものだが、この写真が、旅行中最も印象深い一枚になった。

カンボジアの平均年齢は25歳前後と言われている。
それは単に子供の数が多いのではなく、ベトナム戦争やカンボジア内戦、またポル・ポト支配下の国内で、今のおじいさんやおばあさんに当たる年代の方々の多くが亡くなってしまったからだ。

今やアンコールワット遺跡群などで賑わいを見せるカンボジアも、ほんの数十年前には、目を背けたくなるほど凄惨で恐ろしい現実があった。

カンボジアの観光地といえば、誰でも一度は聞いたことのある、かの有名な「アンコール・ワット」が思い浮かぶだろう。

ところがカンボジアは、アンコールワットを含めた遺跡群以外にも、いわゆる「負の遺産」が非常に多い国である。というかむしろ、それを避けることはできないんじゃないかというぐらい、街の到る所に溢れている。

少しずつ時代が移りゆく中で、未だ癒えることのない傷を抱えるカンボジア。

その未来を担うこの少年の後ろ姿が、なんとも逞しく、力強く思えた。

「バンブー・トレイン」から見える景色は、地平線の果てまで続く草原で、山も家も何もない。

これから先、例えば100年後には、ビルが立ち並ぶような場所になっているのだろうか。

それは彼らカンボジア人にとっては良いことのような、でも自分勝手な僕には、少し寂しいような気がした。

僕の訪れた2019年のカンボジアは、まだまだ発展途上国だった。

でも、これから彼らが築いていく新しいカンボジアの街並みを、またこの目で見に来たいなと、そう思わせてくれる一枚になった。

おわり

*この記事は、過去に別のサイトで載せていたものに加筆修正を加えたものです。

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