『夢華録』 中国ドラマ 鑑賞記録
中国で配信時から観たかったドラマです。そのころ手一杯だったので、これはきっと上陸する!という謎の確信のもと、日本語字幕を待つことに。
最近は中国ドラマが日本に入ってくるタイミングがとても早くなり、本作も本国に遅れること7か月の今年1月に無事 WOWOWで放送開始となりました。
噂に違わず素晴らしい主題のよい脚本、演者は最高、セットや風景も美しく、充実の視聴体験でした。
あらまし
時代は北宋。所は東京。銭塘で茶舗を営む 赵盼儿(刘亦菲)は元賤民。役人だった父親が冤罪に問われ一家が没落したため楽妓に身を落とした経験のある苦労人。
一緒に茶舗を切り盛りしている料理上手な 孫三娘(柳岩)、妹分の官妓 宋引章(林允)と共に東京に出てきて茶房や高級料亭を経営するようになる。
皇城司の副指揮官である顧千帆(陈晓)は高級官吏 萧钦言の長男であるが訳あって母方の姓を名乗っている。朝廷の権力闘争の鍵となる「夜宴図」を探索する過程で 赵盼儿と出会って恋に落ちる。
主人公二人とも出自が複雑。一方は 元賤民、一方は権力闘争のど真ん中で翻弄される難しい立ち位置。それらを乗り越えながら、自分たちの理想や愛を成就させていく感動作だ。
個性豊かな登場人物たち
赵盼儿は芯が一本通っていて相手が誰であろうと言うべきことはしっかり言う。志が高く非常に我慢強い。賢くて気配りも抜かりない。その上美しく面倒見がいいので何時でも何処でも何をやっても、大抵は周りを味方にすることができる素晴らしい女性。
身分や家柄、女性であることで辛酸を嘗めた経験を、社会のために昇華させていく。
そんな彼女に強く惹かれ愛し守り抜くために行動する 顾千帆。仕事が忙しかったので女性経験はないらしいく、無骨ながらも優しさを隠さない。文武両道でめっぽう頼りになるのにそんなギャップがとても魅力的な役柄を、陳暁が好演している。
大人な恋が魅力な二人だ。
赵盼儿の同志ともいえる 孫三娘は離婚歴があり、元夫側についた子供がいる。孫三娘を好きになるのが 张晓谦演じる 杜长风、科挙を通った進士だ。
近眼なことをからかわれたり、ユーモラスだが率直で心優しい 杜长风と 孫三娘は微笑ましいお似合いのカップル。
もう一人の仲間、宋引章は琵琶の名手の官妓。賤民であることに引け目と自尊心との間で揺れ動く。美しいので悪い男に騙されがちだが、赵盼儿らの支えもあり徐々に自立心を養って成長していく。
その他、皇帝や皇后、朝廷で権謀術数をめぐらす悪徳官吏たち、市井の文人など彩り豊かな人物が顔を揃える。
中でも特に推したい名演(怪演?w)だったのは 池蟠を演じた代旭 だ。池蟠は東京の名家の生まれで、複数の商業組合を束ねる立場。お金持ちのお坊ちゃまだ。
これまでにわたしが見たことのある硬めで表情の乏しい役柄とはとは打って変わって、おバカ全開! 体当たりのはっちゃけ演技が滅茶苦茶かわいかった。おそらく彼のファンは多かったのではないだろうか。
もう一人本作に登場する個人的注目俳優は孙祖君。宋引章を陥れる沈如琢 役だ。
しかし。何故にこの人はこの様な下衆な役柄が多いのだろうか、、三国機密ではあんなに一途で素敵だったのに。今回またしても超手癖の悪い男役(泣)。 顔値高いのになぁ。いい加減、気の毒になってくる。 いつかまたナイスな役柄でお会いしたいものだ。
ダイバーシティー
嫌味なく、肩に力が入り過ぎることなく、淡々と、どの時代どんな地域にも通用する普遍的な価値観が描かれる。女性であることや生まれ育ちに左右されず、自らの意思と努力によって道を切り開いていくことが可能な社会。
そんな社会を理想とする気高い女性たちと、彼女らを誠心誠意サポートする熱い男性たちの物語だ。
最後のシーンで皇帝へ願いを語る 赵盼儿の視野はとても広く、スケールの大きさが気持ちよかった。彼女の視点は自分や身の回りに留まることなく、長いスパンで幅広く社会を見据えていたのが感動的だった。自分自身を社会に役立てたいという想いがあまりにも崇高で、周りの男たちが小さく見えるほどだった。
この辺りも制作側の狙いだったのかもしれない。
セットもロケ地の風景も美しく、人物を引き立てていた。
陈晓(陳暁)という俳優
陈晓は同じ古装劇ジャンルでも作品によって違う一面を表現するし、古装ものと現代ものとでは、もうほとんど別人のような印象を与えてくれる。
前回の記事『云襄传』は本作と同様に古装劇で、ある意味似通った設定ではあるが、こちらの 顾千帆は 云襄に比べるとやや無骨、純朴さの漂う人物造形で違う一面をみせてくれている。
一概にはいえないけれど、陈晓は既婚でお子さんもおられ(奥様は女優の陈妍希)私生活が安定していそうなところが余裕と自信につながっている気がする。
現在36歳。演じられる幅が広くて、アウトローっぽい役も、甘さのある古装の貴公子もムリなくハマる。演技力を伴って役柄に説得力を吹き込める強み。特に今年はジャンルの違う主演作でそれぞれヒットを飛ばしており作品選びが上手いという評価もある。
これから年齢を重ねてもその時ならではの味を出せそうな、唯一無二な無敵感を漂わせる俳優さん。これからもいい作品でお会いしたいものだ。
というわけで、大変見応えある秀作であった。
流石 2022年の大ヒットドラマといわれるだけのことはある。
視聴後に満足感を感じる作品を鑑賞できて幸せです。
そんな作品に何本も出演している 陳暁!素晴らしいなー。
大人の落ち着きが素敵な 刘亦菲にも魅せられました。
2回連続の 陳暁作品レビューにお付き合いいただき、ありがとうございました!