『開端』 中国ドラマ 鑑賞記録
2023年、最初の完走ドラマは『開端』です。本国配信時に話題だったので観たかったのですがずっとタイミングが合わず、新年早々に念願が叶いました。
タイトルの「开端」は「初め」「スタート」「起点」などの意。なるほど現地配信も昨年の1月早々でした。
お正月、縁起のいい作品で開始! よい年明けです。
テーマはタイムスリップのサスペンス。主軸のプロットにヒューマンな側面が絶妙に織りなされた、とても面白い作品でした。
中国語字幕での鑑賞だったので、タイムパラドックスなど混乱しないか心配でしたが、特に問題なくスムーズに理解できました。
非常によく練られた秀逸なプロットのお陰だと思います!
ネタバレに繋がるフレーズがあるかもしれないので、未視聴の方はご注意くださいね。
それではどうぞお付き合いくださいませ!
サイクルにはまる二人
キーワードは「循环」サイクル。
とある街の45号線バスでうたた寝をしていた李詩情は、乗っていたバスが爆発する夢を見て起きる。
目覚めた自分は同じバスの中にいて、時間は少しに戻っている。
隣に座っているのは肖鶴雲。彼女の異変に気付いてティッシュペーパーを渡そうとするが、うっかり胸にタッチしてしまう。怒った詩情はこの人チカンです!と彼を突き出そうとするが、またバスは爆発してしまう。
爆発の状況や戻る時間は毎回少しずつ違うものの、そんなサイクルが延々と続くのだ。
途中から鶴雲もサイクルの仲間となり、二人で一緒に謎を解き明かしていく。
頭を打って入院した彼女の元へ刑事たち、刘奕君演じる張成とその部下が事情聴取に訪れる。
2度目以降の顔合わせでは、詩情は既に名前を聞いて知っているが、初対面の彼らは何故知られているのか分からない。
刑事たちから見れば、妙に現場や自分たちについて詳しい詩情と鶴雲。すっかり容疑者扱いされてしまう。
そんな状況を回避し、バスの爆発を阻止するために知恵を絞る二人。
一回毎に検討し、行動し、ケガをしたり、尋問されたり、大変な目にあいながらも諦めず頑張る彼らを応援せずにはいられない。
トライアンドエラーを繰り返しつつも、次第に事件の焦点が絞られていくのだった…
誰が何のために爆発させているのか
だんだんと明確になってきたのは、爆発は5月13日午後1時45分に起こるということ。しかし何故?
その謎を解明し、乗り合わせた乗客全員を助け出すべく、二人は乗客一人一人を洗い出していく。
その過程で乗客たちの過去や、その訳あり人生が語られるのだが、それがこのドラマに別のベクトルで厚みを与えている。これがなければ只のタイムスリップサスペンスなのだが、人間味ある彼らの描き方がしみじみと、とても温かい。
一見怪しそうに見える乗客たち。
例えば丸い爆弾状に見えたものは実はスイカ。車内でみんなと分け合って美味しそうに食べるシーンが微笑ましい。
帽子にマスクの怪しい卢笛も、見かけ倒しの心優しい猫好きオタク。一瞬、李肖と協力体制に入るかと思われたが、そうはならず。鶴雲も自分と彼女の間に割って入られたくなさそうなそぶり。
そう、助け合っているうち二人の間に恋が芽生えていたのだ。
本作が、素敵なラブストーリーの側面も持っているのは、スリリングな展開の中で一種の息抜きにもなっていて、大層ロマンチックでもあった。
徐々に容疑者として追い詰められていく二人。サイクルを繰り返していくうちに、鶴雲の身体はダメージを受け始める。
次の目覚めはないかも?というシーン。
「君が寝てから自首する」と眠りについた彼女を、鍛え上げた上腕筋をフルに活かして危な気ないお姫様抱っこをする鶴雲、というか白敬亭にはクラクラだ。
ここでついでに。彼が中盤で見せるコメディータッチの演技や、ケガを負ったり苦悩する場面ではイケメンオーラを完全に消し去る迫真のお芝居。本当に素敵だ。好き!
『天盛长歌』の顾南衣 や『卿卿日常』の尹峥役で演技力や魅力は十分認識していたが、本作ではその幅が広がったという感じ。いい俳優さんに出会えてシアワセなのである。
その他 魅力ある俳優さんたち
李詩情役の赵今麦。可愛らしい顔立ちの大きな目。この目で真っ直ぐに見つめて話す抜群の説得力で、相手は大抵の秘密はしゃべってしまうのだ。
全身から発する「善」のオーラが凄くて、ひたすらに人を信じようとする姿勢も胸を打つ。
そして脇を固める張副部長役 刘奕君の、悪い人なの?裏があるの?と思わせるような目。いつもこの目に惑わされてしまうが、今回もやっぱり素晴らしかった!
ただ杜局役の刘涛は演技云々ではなく、役柄上に背負わされているものがなくて、ちょっともったいない気がした。もう少し人物像が掘り下げられているキャラならよかったかも。
范帅琦はベリーショートがめっちゃ可愛くて、こんな美人警官がいたら現場は大変だなーと思いながら観た(笑)
がやはり杜局同様、脚本上でキャラの厚みがない分、演技力を発揮できる場がなかったかもしれない。
バスの乗客たちはとても魅力的だった。役柄ももちろん、演じる俳優さんたちの力量が光っていた。馬蘭 演じる薬おばさんなどリアリティが最高だったし、いつも圧力鍋を両足でガッチリ挟んで押さえてる 陶映红役 刘丹の迫力もすごかったな。
結末気になる!
いったいどういうオチになるのか??!!
と最近のドラマの中では断トツのドキドキ度。
だって、事件が全て解決すると二人の記憶は消えてしまうかもしれないのだ。
弱ってきた身体を自覚し、もう一人でもできるよね?と聞く鶴雲。
ここ、とっても素敵なシーンだったー!
事件の結末と二人のその後…
中身の濃い最終話で、映画にも匹敵するようなしっかりとした見応え。
脚本と演出、俳優の演技が見事に調和した素晴らしい作品だった。
さて、本筋とは関係がないが、面白いなと思ったのは名前の漢字の説明箇所。中国語は同じ音の漢字が沢山あるので、どの漢字を充てるかをどうやって人に伝えるのかなとずっと知りたいと思っていた。
答えは、日本のやり方と同じ。○○の○、と説明する。当たり前か(笑)
作中、李詩情は張刑事に「木子の李、詩歌の詩、感情の情」と言っていたし、肖鶴雲は詩情に「晴空一鹤排云上の鹤云」と教えていた。
因みに鶴雲のこの一句は、唐代の詩人 刘禹锡 の『秋词二首』の部分。
調べて面白かったのは、その次の句が「便引诗情到碧霄」だったこと!
ちゃんと「詩情」と関連させていたのね! という脚本の素敵発見であった。
そして忘れてはいけない、エンディング曲、周深の歌う『My Only』は絶品!
というわけで、とても楽しくていい作品に出合えて、沼入り寸前の白敬亭の雄姿も堪能でき、幸先よく2023年中国ドラマライフを開始しました。
本年もお付き合いいただければ嬉しいです!