『宮廷恋仕官』 中国ドラマ 鑑賞記録
低予算ながら秀作として評価の高かった作品。配信当初から気になってたのですが上陸してからも視聴はズルズル遅れに遅れ、更に途中で2-3か月間が空いた挙句、この度ようやく完走できました。
唐時代設定の陰謀を追うサスペンスの筋書きはかなり本格的。原題の直訳は「宮廷検視娘」みたいな感じかと思うのですが、邦題は全面的にラブに寄せた軽めふわキラ系(笑)。国内版の桃色ポスター(ここには貼りません)と共に中国ドラマファンには散々のいわれようでしたw
この note のタイトルも邦題を使いたくなかったけど、上陸済み作品は基本邦題表記を優先してるので止む無く。
作品自体は、ホントよくできてて面白かったです!
では早速。
主役二人のラブストーリー
楚楚 は "あどけない" という形容が浮かぶほど初々しい。しかし検視人の家系で養われ、検視人としての腕は抜群だ。苏晓彤 が好演している。
安郡王 こと 萧瑾瑜は西平公主の次男で頭脳明晰。三法司の長として司法を任されている貴公子だ。王子奇 演じておりこちらもハマっている。
推理力抜群だが(設定では)偏屈で恋に疎い彼と、家業のせいで世間から疎まれて育った純真無垢な 楚楚との純愛が一つのテーマ。
全く環境が違うように見えるこの二人だが、実は親の代からの縁で結ばれている。
萧瑾瑜 の父 萧恒 は世間で亡くなったと思われているが、その死には裏があると読む 萧瑾瑜 は密に行方を追っている。そのヒントとなるものを 楚楚 が持っていたのだ。
萧瑾瑜は三法司の立場と推理力、楚楚は検視というお互いの得意分野で協力し合い、周りに助けられながら謎を解明していく。
脇役たちと陰謀
このドラマが人気だった理由の一つは、一見ほのぼのラブストーリーに見えながら背景のミステリーはかなりしっかり語られる点かもしれない。
時代背景も史実に基づいているらしくかなり詳細に描かれており、複雑。正直なところ不勉強なわたしには理解が不十分な点も多々であった(涙)
解釈を間違ってもいけないのでここでは難しいところはザックリ飛ばそうと思う。
唐代後期、皇帝宣宗の時代は皇帝直属軍の実権は宦官に握られていたらしく、宦官勢力の権力掌握が生んだ政治のゆがみの煽りを受けた形で主人公らの肉親は逆賊の汚名を着せられている。
その宦官のトップに君臨しているのが3代の皇帝に仕えたという 秦栾だ。
この人(演者は 穆怀虎)の演技は印象深かった。何しろ悪そうな風貌だ。
皇帝の側近く仕え情報を一手に握れる立場を悪用し、皇帝をも小ばかにし数々の悪行を働いているのだが、一方では "髭" に固執しているのが憐れである。宦官ゆえの髭に対する憧れ…。最後は「素直に白状すれば髭を付けて埋葬してやる」とまで言われる始末。
ここまで憎々しく演じられた俳優さん、本当に素晴らしい!(拍手)
もう一人、陰謀を企てる人物がいるけれど、ここではネタバレを避けるために割愛する。
主人公らと悪に立ち向かう仲間は、萧瑾瑜 の兄 萧瑾璃、黔中道節度使 冷沛山の孫娘で家系に反発して女侠となっている 冷月、大理寺少卿で 萧瑾瑜の友人でもある 景翊。
冷月と 景翊の恋もストーリーに花を添える。
レトロな味わい
何だか演歌を思わせるようなエンディングテーマ。OSTや衣装が少し前(2000年代あたり?)のドラマを彷彿とさせる。ちょっと懐かしさを感じさせるテイストなのは低予算ゆえか、それとも狙ってるのか?!よくわからないが(笑)
画質が粗いのはカメラや照明に予算感が出ている為と思われる。
そんな中で脚本のよさとキャスティングの妙が光っているドラマ。俳優はこういっては語弊があるかもしれないが「美」だけに捕らわれていないリアリティがすごくよかった。
特に萧瑾瑜 の母 西平公主を演じた 史兰芽は中国時代劇としてはやや異色な印象。2代に渡る疑惑のキーパーソンともいえる人物を演じるこの方。とても笑顔が素敵で、亡き夫 萧恒や息子たちを想う気持ち、その経緯(ここにも秘密が)に説得力が感じられてとても上手いと思った。わたしはお初であったが金鷹賞に2度ノミネートされているので実力は確かな女優さんのようだ。
当たり前のことではあるが現代ものでは普通に一つの職業として描かれる検視官も、科学が未発達だった古い時代には疎まれた存在だろうことがよく分かる楚楚の台詞。例えば、忌み嫌われる職業であったがため祝い事には行けず花嫁衣裳を見たことがない、いじめられて友達がいなかった、等々。
でもこの物語の楚楚の活躍と苏晓彤の演技で過去の仵作の人達の名誉が少し回復したのかもしれないな。
ドラマの終わりに、そんなことを思った。
ふたりの可愛らしい恋に癒されつつミステリーとしても楽しめる、素敵なドラマでした。
もうちょっと画質がよければなおヨシでしたが(笑)
今回も拙い文章をお読み頂きありがとうございました!